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2011年8月26日金曜日

書評 『歴史に消えた参謀-吉田茂の軍事顧問 辰巳栄一-』(湯浅 博、産経新聞出版、2011)-吉田茂にとってロンドン人脈の一人であった「影の参謀」=辰巳栄一陸軍中将の生涯


吉田茂にとってロンドン人脈の一人であった「影の参謀」=辰巳栄一陸軍中将の生涯

 知られざる英米派の陸軍参謀・辰巳栄一の生涯が、はじめて一冊の本として本書にまとめられた。

 みずからを「敗軍の将」としてオモテに出ることを潔よしとせず、きわめて大きな役割を戦中戦後に果たしながらも、みずからの意思で歴史のなかへ姿を消していった陸軍情報将校

 同じ英米派で先輩にあたる本間雅春中将がノンフィクション作家の角田房子によって取り上げられ、『いっさい夢にござ候』という名評伝が書かれているのは、フィリピンで戦犯として処刑されたという悲劇的な死を迎えただろう。これに対し、みずからの意思で歴史から姿を消し、最終的に天寿をまっとうした辰巳中将は、伝記が書かれたことはこれまでなかった。

 著者の表現を借りれば、「情報力の有無とそれを使いこなす政治指導者の重要性に着目していた」(P.9)辰巳中将は、もっと世に知られてしかるべき情報将校の一人だろう。最後まで読んでみて、強くそう思った。

 敗戦後の日本の保守政治のレールを引いたのはワンマン宰相とよばれた吉田茂である。吉田茂には二人の有力な「ロンドン人脈」があった。

 一人は、GHQによる日本占領下、主権と独立を回復するために、吉田茂の右腕となって活躍した白洲次郎。そしてもう一人は、吉田茂の軍事顧問として活躍した本書の主人公・辰巳栄一であった。

 通産省(現在の経産省)をつくり、電力自由化などの経済政策に大きく関与した白洲次郎が吉田茂のオモテの右腕であったとすれば、敗軍の将としてウラに徹した辰巳栄一は吉田茂の私的な軍事顧問であった。

 著者の表現を借りれば、白洲次郎は「経済の密使」で辰巳栄一は「影の参謀」の役目を演じきったといえよう。辰巳栄一は日本の再軍備においてきわめて大きな役割を果たすことになる影の功労者である。

 なんといっても、本書で読者の関心がいちばん深いのは、副題にもなっている「吉田茂の軍事顧問」としての後半生であろう。この時代の情報は、米国立公文書館の「タツミ・ファイル」によるものだという。

 米軍による占領下の日本でインテリジェンス活動を行っていた対敵諜報部隊(CIC)が収集した情報である。自衛隊の前身である警察予備隊創設も、辰巳栄一の存在なくしてあり得なかったことがよくわかる。その間に展開された種々の暗闘も。

 残念ながら本書は、新聞連載の文章をもとにしたためであろう、単行本においてもやたら「である」という現在形を多用する新聞文体のままであり、けっして読みやすくない。

 連載中の「産経新聞」の読者にとっては意味があるだろう各種の文言も、単行本の読者にとっては正直なところ冗長であり、大幅に再編集してから出版していただくべきであった。

 また、知られざる人物の本格的な紹介でありながら、資料としての年譜もたった1ページと不十分であるのは読者にとっては、はなはだ不親切である。

 とはいえ、本書は先駆的な仕事としては意味あるものといっていい。本書を踏み台にして、吉田茂のロンドン人脈、そして「情報」という観点によるすぐれた評伝やドラマが、これから書かれることになるのであれば、本書の存在意義があったということになろう。



<初出情報>

■bk1書評「吉田茂にとってロンドン人脈の一人であった「影の参謀」=辰巳栄一陸軍中将の生涯」投稿掲載(2011年8月21日)
■amazon書評「吉田茂にとってロンドン人脈の一人であった「影の参謀」=辰巳栄一陸軍中将の生涯」投稿掲載(2011年8月21日)

*再録にあたって一部加筆した。




目 次

序章 首相には「影の参謀」がいた
第1章 葉隠精神と破天荒の時代
第2章 情報戦争の渦の中へ
第3章 吉田茂との運命的な出会い
第4章 英米派の孤独な戦い
第5章 風雲急を告げる日米“一触即発”
第6章 帝都防衛、学童疎開
第7章 敗戦―占領軍がやってきた
第8章 鉄のカーテンが降ろされた
第9章 吉田が目指した日本独立
第10章 「歴史に消えた参謀」
終章 吉田ドクトリンを超えて

辰巳栄一略歴
あとがき
参考文献


著者プロフィール

湯浅 博(ゆあさ・ひろし)


産経新聞特別記者・論説委員。1948年東京都生まれ。中央大学法学部卒、プリンストン大学 Mid-Career Program修了。産経新聞入社後に千葉支局、経済部を経てワシントン特派員、外信部次長、ワシントン支局長、シンガポール支局長を歴任。2002年7月から現職。産経新聞に「世界読解」「東京特派員」などのコラムを執筆中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 先日はじめて読んだ『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹)に、総力戦研究所の設立に大きなチカラのあった辰巳栄一の名前がでていることに気が付いた。

 『大本営参謀の情報戦記』を書いた堀栄三もまた、その著書のなかで、敗戦後は辰巳栄一の引きによって情報担当として自衛隊に入ったと書いている。

 さまざまなところに、ちょっとだけがでてくるが、その全体像がわからなかった辰巳栄一。

 吉田茂を中心とした「ロンドン人脈」。元外交官の政治家と経済人そして元軍人の三人が、戦後日本の方向性を決定づけたといっても言い過ぎではないかもしれない。ちなみにこの三人の年齢は、吉田茂(1878~1967)を筆頭に、辰巳栄一(1895~1983)、白洲次郎(1902~1985)とつづく。それぞれ世代の異なる三人であった。

 著者は、序章で以下のように述べている。

 辰巳栄一元中将はこれらの文書で、合理的な組織がもつ情報の上に、洞察力と決断力のある政治指導者を得ていたか否かが、日英を分けていると記していた。とりわけ元中将は、情報力の有無とそれを使いこなす政治か指導者の重要性に着目していた。
 彼は、昭和40年(1965年)に、齢90でこの世を去ったチャーチルに敬意を抱きながら、痛嘆の思いを込めて語っている。
 「英国にとって、未曾有の危機であったあの大戦間、信念の強い、聡明達識の英雄チャーチルによって戦争を指導されたことは、英国民にとって幸せだったと思う」 (P.9)

 「合理的な組織がもつ情報の上に、洞察力と決断力のある政治指導者を得ていたか否か」、この文言は昭和20年(1945年)の敗戦から66年たった、今回の「第三の敗戦」においてもまた、あまりにも重く響く。

 辰巳栄一は本人の意思にかかわらず、三度のロンドン駐在という異例のキャリアの持ち主である。三度目のロンドンで体験したドイツによる爆撃、いわゆる「バトル・オブ・ブリテン」の経験が、日本帰国後には本土空襲防衛と学童疎開を推進する役割を演じることになる。

 副題から「影の参謀」にどうしても関心が集中してしまうだろうが、学童疎開を推進したことの異議はきわめて大きい。戦後の復興がスムーズにいった理由の一つに、若い人的資源が温存されたこともあげなくはなるまい。


PS 2013年7月に文庫化されて文春文庫から出版されることになった。これによって、辰巳栄一の名前はさらに広く知られることになるであろう。(2013年7月7日 記す)






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書評 『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹、中公文庫、2010、単行本初版 1983)-いまから70年前の1941年8月16日、日本はすでに敗れていた!





(2012年7月3日発売の拙著です)







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