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2013年8月16日金曜日

書評『ナショナリズム ー 名著でたどる日本思想入門』(浅羽通明、ちくま文庫、2013 新書版初版 2004)ー バランスのとれた「日本ナショナリズム」入門


バランスのとれた「日本ナショナリズム」入門である。「入門書」として最初から最後まで通読すれば、著者の「思想」がまたきわめて健全であることを納得するであろう。

賛同するにせよ反対するにせよ、「ナショナリズム」に無縁で生きることのできる人間など、「近代」を通過した日本人にはまったく存在しない。これが著者の立場である。

ネトウヨ(=ネット右翼)やヘイト・スピーチという「偏狭なナショナリズム」には嫌悪感や難色を示す人も、「健全なナショナリズム」に忌避感を示す人は少ないだろう。たとえ「ナショナリズム」というコトバも、その意味することを詳しく知らない一般大衆でも、ナショナリズムを実践しているのである。

著者の浅羽通明氏は1959年生まれ。「見えない大学本舗」の主催者で、大学知識人ではない在野の思想家。思想家というよりも英語の thinker といったほうが実態に近いだろう。自分で考えて、自分で行動できる人である。そういう人が、自分でものを考えたい人に向けて書いた本だ。

著者の「教養論」もまた大学知識人による浮世離れしたものではなく、あくまでも生きるためには食っていかねばならない一般国民と同じ立ち位置にある。ただし、ネットには背を向けているので、21世紀型一般人とは言い難いのだが・・・。

この「ナショナリズム入門」は、著者が選定した日本ナショナリズム関連書10冊の解説と関連書の読書案内をつうじて、ナショナリズムという「近代思想」が日本に定着していくプロセスをたどったものである。

「近代」、「伝統」、「郷土」、「国土」、「文化」、「革命」、「男気」といった概念が検討される。本書で紹介されているナショナリズム関連書の大半は、わたしはすでに目をとおしているが、じつによくできた読書リストであると思う。

黒船による「開国」によって目覚めたナショナリズム前夜から、徴兵制によって故郷(くに)から国家(くに)への意識転換がすすみ、日清戦争と日露戦争という自存自衛の戦いを遂行するなかで防衛型ナショナリズムが定着し「日本国民」が成立する。その後の領土拡張過程のなかで異民族を抱え込んだだめに逆に希薄化したナショナリズムが、敗戦後は左翼による民族独立という反米ナショナリズムを経て、高度成長のなかで経済ナショナリズムとして定着。冷戦終了後のアイデンティティ模索状況をへて現在は「収斂型ナショナリズム」として成熟し、定着していった。本書でこの推移を追体験することになる。

左右両方への目配りもよく行き届いたナショナリズム論は、まさに入門書としてふさわしい。しかも、著者の態度はきわめてバランスのとれたもので、特定の政治的主張の護教論ではない。

読者は最初のページから最後のページまで通読することによって、ナショナリズムという日本国民にひろく浸透している「思想」が、けっして否定すべきものでも過度に礼讃すべきものでもないことを知ることになることだろう。

とくに戦後の高度成長時代にマジョリティとなったビジネスマン(・・ここではあえてビジネス「マン」としておく)の「経済ナショナリズム」を支えた司馬遼太郎「史観」の限界について書いているのは、ビジネスパーソンにとっては興味深い。『坂の上の雲』(1968~1972)に代表される司馬史観は、わたしなりに表現すれば、後発国がキャッチアップのために選択した西欧近代モデルのナショナリズムである、と。

また、『文明としてのイエ社会』(村上泰亮・公文俊平・佐藤誠三郎、中央公論社、1980)も日本的経営の説明として一世を風靡した作品であり、本書で本格的に取り上げて解説していることはビジネスパーソンの立場からみてたいへん喜ばしい。

ナショナリズムというテーマで「日本近代」を考えるためには、まずは本書の内容を理解することで必要にして十分であろう。索引も完備していることもありがたい。

すでに先進国としてのポジションを確立し、「近代」というキャッチアップの時代が終わった日本においては、かつてのような対外拡張的なナショナリズムはあり得ないだろう。だが、近隣諸国に近代化過程の国々がある以上、防衛型のナショナリズムが消えることはあるまい。

ナショナリズムについて考えることは、この国の将来について考えるうえで、きわめて重要な思考の「道具」(ツール)となる。この文庫版は初版出版から9年後の改訂版だが、5年に1回程度は「最新改訂版」を出せるよう、出版社には大いに期待したい。


 
目 次

序章 近代と伝統-日本ナショナリズムとは何か
第1章 この人を見よ!-ナショナリストの肖像 石光真清『城下の人』『曠野の花』『望郷の歌』『誰のために』
第2章 隠岐コミューンに始まる-郷土のナショナリズム 橋川文三『ナショナリズム』
第3章 ここはお国を何百里-友情のナショナリズム 金田一春彦ほか『日本の唱歌』
第4章 ああ、日本のどこかに-国土のナショナリズム 志賀重昂『日本風景論』
第5章 もののふとたおやめのあいだ-文化のナショナリズム 三宅雪嶺・芳賀矢一『日本人論』
第6章 民族独立行動隊、前へ!-革命のナショナリズム 小熊英二『<民主>と<愛国>』
第7章 少年よ、国家を抱け-男気のナショナリズム 本宮ひろ志『男一匹ガキ大将』
第8章 近代というプロジェクトX-歴史のナショナリズム 司馬遼太郎『坂の上の雲』
第9章 カイシャ・アズ・ナンバーワン-社会のナショナリズム 村上泰亮ほか『文明としてのイエ社会』
第10章 普通の国となるとき、それは今?-軍備のナショナリズム 小沢一郎 『日本改造計画』
終章 日本ナショナリズムの現在-『戦争論』(小林よしのり)以後
あとがき-駆使できる思想史の方へ
文庫版あとがき-戦死者のいる未来のために
解説-思想中二病には口当たりの甘い良薬を!(斎藤哲也)
ナショナリズム関連年表
索引

著者プロフィール

浅羽通明(あさば・みちあき)
1959年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学法学部卒業。みえない大学本舗主宰。早稲田大学・法政大学講師。著書に『試験のための政治学』(早稲田経営出版)、『ニセ学生マニュアル』三部作(徳間書店)、『大学で何を学ぶか』『思想家志願』『知のハルマゲドン』(小林よしのり氏との共著)『教養論ノート』(幻冬舎)、『澁澤龍彦の時代』(青弓社)、『野望としての教養』(時事通信社)、『天使の王国』『「携帯電話的人間」とは何か』(宝島社)ほか。


<関連サイト>

「浅羽通明スペシャルインタビュー ナショナリズムとアナ-キズム-その道具としての使用期限を考える (2004年)



<ブログ内関連記事>

「石光真清の手記 四部作」 こそ日本人が読むべき必読書だ-「坂の上の雲」についての所感 (4)

秋山好古と真之の秋山兄弟と広瀬武夫-「坂の上の雲」についての所感 (2)

書評 『秋より高き 晩年の秋山好古と周辺のひとびと』(片上雅仁、アトラス出版、2008)--「坂の上の雲」についての所感 (5)

『大アジア燃ゆるまなざし 頭山満と玄洋社』 (読売新聞西部本社編、海鳥社、2001) で、オルタナティブな日本近現代史を知るべし!

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?

書評 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子、朝日出版社、2009)-「対話型授業」を日本近現代史でやってのけた本書は、「ハーバード白熱授業」よりもはるかに面白い!

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!
・・戦後日本の「健全なナショナリズム」の名著

書評 『ヤシガラ椀の外へ』(ベネディクト・アンダーセン、加藤剛訳、NTT出版、2009)-日本限定の自叙伝で名著 『想像の共同体』が生まれた背景を知る
・・ナショナリズム論の名著といえば『想像の共同体』

書評 『「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす-』(田中克彦、岩波現代全書、2013)-ナショナリズムとパトリオティズムの違いに敏感になることが重要だ

NHK大河ドラマ 『八重の桜』がいよいよ前半のクライマックスに!-日本人の近現代史にかんする認識が改められることを期待したい
・・ナショナリズム前夜におけるパトリオティズムとナショナリズムの違い

『はじめての宗教論 右巻・左巻』(佐藤優、NHK出版、2009・2011)を読む-「見えない世界」をキチンと認識することが絶対に必要
・・ナショナリズムを近代の病理と捉えるプロテスタント神学の見方は一般的ではあるまい

書評 『超マクロ展望-世界経済の真実』(水野和夫・萱野稔人、集英社新書、2010)-「近代資本主義」という既存の枠組みのなかで設計された金融経済政策はもはや思ったようには機能しない

書評 『国力とは何か-経済ナショナリズムの理論と政策-』(中野剛史、講談社現代新書、2011)-理路整然と「経済ナショナリズム」と「国家資本主義」の違いを説いた経済思想書
・・グローバル時代において政策単位となる国家と経済ナショナリズムの重要性について

(2014年7月24日 情報追加)



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