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2014年1月18日土曜日

書評 『地獄へようこそ-タイ刑務所/2700日の恐怖-』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)-無実の罪で投獄された白人ビジネスマンが手記につづるタイの刑務所の恐るべき実態


『地獄へようこそ-タイ刑務所/2700日の恐怖-』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)の原題は Welcome to Hell : One Man's Fight For Life Inside The Bangkok Hilton,  by Colin Martin, 2005.

日本語訳タイトルは原著の直訳であるが、副題は「ある男のバンコク・ヒルトン内部で人生を賭けた闘い」である。まさにそれが「生存をかけ闘い」であることは本書を読むのが一番である。

バンコク・ヒルトン(The Bangkok Hilton)というスラングが英語にはある。もっぱらバンコク在住の「ファラン」たちのあいだで使われている。ファランとはタイ語で白人のことだが、フランス人を意味するフランセが語源だ。

もちろん、「バンコク・ヒルトン」は外資系高級ホテルのヒルトンのことではない。バンコク刑務所のことを指している。そこでは「快適な生活」が保障されるということだ。

著者は無実の罪で逮捕され、バンコクのツーリスト・ポリスで拷問を受け、投獄されたあげく、地獄のような環境のなかで2700日、すなわち約8年(!)の月日を持ちこたえたことを記している。

著者はアイルランド人ビジネスマン。タイのバンコクに本拠を置く詐欺組織に騙され、全財産を失っただけでなく、自力で犯人グループを追うなかで、その一人と取っ組み合いになって殴り殺してしまう。正当防衛ゆえの過失(?)と著者は主張するのだが・・・。

本書の前半は、著者の申告どおり受け取るにはやや疑問がなくはないのだが、白人が白人に騙されるケースもあるのだと知ることは意味のあることだと思う。というのも、バンコクでは日本人が日本人に騙されるケースが後を絶たないからだ。どうしても同じようなバックグラウンドをもっていて同じコトバをしゃべる同朋に安心してしまうのは洋の東西を問わないようだ。

著者を騙してカネを巻き上げた白人男もいくつもの偽名をつかっており、その「不良白人」ぶりには読んでいてあっけにとられる思いをする。

本書の後半は、「バンコク・ヒルトン」の内部での著者の体験を赤裸々に記したものだ。

読んでいて思うのは、これはインサイダーとして体験した者にしか書けないものだなということだ。ディテールの描写がこれでもかこれでもかと続きウンザリしなくもないのだが、タイの監獄の腐敗と不正ぶりにはなんともやってられない気分になる。まるで江戸時代の牢屋のような印象を受ける。

また、おざなりな裁判制度、法治国家ではあるが末端の組織では法律が法律として機能していない。すべてが見て見ぬ振りされているという実態・・・。

とにかくカネがすべてなのである。刑務所向けの予算がついてもすべて獄吏に着服されて受刑者にはいきわたらない現実。なにかあればカネ、カネ。カネさえあれば刑期さえ短くなる可能性もある。「地獄の沙汰もカネ次第」とはまさにこのことだ。

この本に書かれたことがただしいかどうかはわたしには判断しかねるが、もしただしいのであるならば、とにかくタイでは逮捕されないこと、投獄されないこと。犯罪を犯さないことはもちろん、事件に巻き込まれないこともきわめて重要だ。商売敵(がたき)に陥れられるケースは少なくない。

著者も刑務所のなかから裁判を起こしているが、日本よりもスピードがはるかに遅く、かつ真剣さの欠ける法律関係者のため、裁判で勝つのは容易ではない。ましてや外国人であればなおさらであろう。

日本は欧米先進国にくらべて人権後進国だとよく批判されるが、タイの現状はその比ではない。タイ以外の発展途上国もまた似て寄ったりというべきだろう。

読んでいて不快感を覚える描写もなくはないが、こういう本を読んでおくことは、自衛というセキュリティ感覚を向上させるために必要である。「バンコク・ヒルトン」の快適さは、生半可なものではないのだ。




目 次

序章 賄賂と投獄の選択
第1章 生い立ち
第2章 詐欺の全貌
第3章 執念の捜索
第4章 首謀者を追い詰める
第5章 意外な展開-用心棒の死
第6章 恐怖の拷問
第7章 果たして殺人か?
第8章 地獄への一歩
第9章 刑務所-ジャングルの掟
第10章 初公判
第11章 悪の巣窟-暴力・ギャンブル・レイプ
第12章 刑務所からの告発
第13章 判決
第14章 看守の暴力支配
第15章 結核との闘い
第16章 ムエタイとの出会い
第17章 敗北と恩赦
第18章 過去との決別
終章 明日に向かって
謝辞
訳者解説


著者プロフィール  

コリン・マーティン(Colin Martin)
イギリス生まれのアイルランド人。15歳でアイルランドに戻り、その後再びイギリスに渡って溶接工として働く。結婚し、2人の子供を得たのちにオランダで「スペクタック溶接建設」を起こす。1994年にタイに拠点をおく「海外建設サービス(OCS)」と取り引きをするためにタイに渡航。しかし、これは完全な詐欺で、全財産を騙し取られてしまう。以降、犯人グループ、タイ警察・裁判所・監獄システムの腐敗と7年半に渡って戦う (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
翻訳者:一木久生(いちき・ひさお)早稲田大学文学部西洋史学科卒業。出版社勤務を経てフリージャーナリストへ。カンボジア内戦のとき、タイのカンボジア難民キャンプ、ラオス難民キャンプ等を取材。その後、教職を経て再びフリージャーナリストとしてアイルランド各地を回り一年半滞在(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

タイ映画 『わすれな歌』(英語タイトル:Mon-Rak Transistor)に、主人公の田舎のタイ青年が収監されて臭い飯を食うシーンがある



PS タイの監獄に収容されていた日本人元死刑囚の手記が出た

『求刑死刑 タイ・重罪犯専用刑務所から生還した男』(竹澤恒男、彩図社、2017)という本がそれだ。

著者プロフィールには、「栃木県O市でアジア雑貨店を経営。仕入れのために日本とタイを行き来するうちに、ヤーバー(錠剤型覚せい剤)の密輸に手を染めるようになる。2002年12月、バンコクのドンムアン空港で逮捕され、一審で求刑死刑、判決終身刑。二審で懲役30年に減刑され、タイのバンクワン刑務所に服役する。2016年9月、服役14年で、特赦により釈放帰国。」とある。

ぜひ、『地獄へようこそ-タイ刑務所/2700日の恐怖-』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)と内容を読み比べてみたいものだ。(2017年9月14日 記す)






<ブログ内関連記事>

書評 『タイに渡った鑑識捜査官-妻がくれた第二の人生-』(戸島国雄、並木書房、2011)-「鑑識36年」の著者がタイで体験したマッチョで無茶な生き様

タイのあれこれ (23) DVDで視聴可能なタイの映画-① ムエタイもの、② バイオレンス・アクションもの

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い

アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む

タイのあれこれ 総目次 (1)~(26)+番外編




(2012年7月3日発売の拙著です)





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