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2014年6月29日日曜日

レヴィ=ストロースの 『悲しき熱帯』(川田順造訳、中央公論社、1977)-原著が書かれてから60年、購入してから30年以上の時を経てはじめて読んでみた


フランスを代表する人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908~2009)が、みずからが行った1930年代のブラジル調査旅行を、約20年のちの1954年から翌年にかけて一気呵成に執筆し、出版したものだ。いまからすでに60年前に出版された記録文学である。

「フランスを代表する人類学者」と書いたが、現代の西欧を代表する知識人であるといったほうがより正確だろう。レヴィ=ストロースが100歳(!)で逝ったのはいまから5年前のことだ。日本でも現代思想を代表する一人として圧倒的な影響を与えてきた存在である。「構造主義」という四文字熟語によって。

1934年に受け取った一本の電話から始まった民族学者クロード・レヴィ=ストロースのブラジル調査旅行。20年の時を経て一冊の本として執筆が始まったのが1954年、愛弟子の日本人人類学者・川田順造氏が12年間を費やして日本語訳を刊行したのが1977年、わたしがこの本を単行本で購入したのが1983年。

それは大学時代のことだ。「ニューアカデミズム」ブームで「構造主義」が流行っていた(?)1980年代前半のことである。なぜか読むことなく33年の歳月が流れ、書棚のなかでほこりをかぶりつづけ、シミを発生させてきた・・・。

(1977年版の単行本の帯)

もうこの機会を逃したら読む機会はないかもしれないという思いから読み出したのが、2014年のFIFAワールドカップ・ブラジル大会の開催直前。2016年にオリンピックがブラジルで開催されるとはいえ、2年先だって先のことはわからないからだ。

とにかく、なぜか時間を要求する本のようだ。読み始めたら意外に読み進めてしまう内容の本なのだが・・・。

訳者の川田氏が書いているように、『悲しき熱帯』は「芳醇な馥郁たる香りのする、しかし時に苦渋にも満ちた「大人の読み物」、なのである。33年前、20歳にもならない若造が読んだとて、いったいどこまで理解できただろうかと思う。時間と空間が重層的に交差する世界。ある程度の人生経験を積んでいれば、意外なことにおのずから素直に納得のいく考察の数々。

年を取ることはけっして悪いことではない。若者が背伸びして読んだところで理解には限界がある本なのだ。

この本は、ときおり哲学的な考察や学問的な話もでてくるが、基本的には回想録であり、紀行文学として読んでも、いっこうにかまわないと思う。わたしもすべてが理解できたわけではないと正直に書いておく。翻訳もののにつきまとう晦渋さもあるためだが。

(写真集『ブラジルへの郷愁(サウダージ)』英語版の表紙)

本書には、「二項対立」(バイナリー)な存在として、歴史学と民族学、時間と空間、未開と文明、西洋と東洋、記憶と想起などがテーマとして浮かび上がってくる。未開社会もまた人間社会という点において文明社会と変わりがないことが示される。ある種の文化相対主義というべきであろう。

読んでいてひじょうにうれしく思ったのは、知的自伝を語りながら、レヴィストロースの少年時代からの、地質学と考古学への深い関心が歴史学的思考の基礎にあることを知ったことだ。この歴史学認識は、わたしも共有しているものであり、地層に歴史を読む込む発想をもっていたことにあらためて驚きと感嘆を感じるのである。

時間と空間にかんする認識こそが、歴史学と民族学(=文化人類学)の融合を実り豊かなものとする。直接レヴィ=ストロースとは関係ないが、わたしも大学時代目指していた歴史人類学は、その一つの融合の試みである。

いっけんブラジルのアマゾンのジャングルとは関係ない考察もまた、60年前のものとは思えないアクチュアルな意味をもっている。末尾に近い章で展開される議論が、とりわけ東洋世界の住人である日本人にとっては意味をもつ。

中洋のイスラーム世界をはさんで存在する西洋のキリスト教世界と東洋の仏教世界。現在のパキスタンの地で実現した古代ギリシアと仏教の出会いが、その後の歴史に持ち得たかもしれない可能性について夢想してみること。この考察は西欧知識人からするものだが、おなじく東洋世界の日本人にとっても意味なきものではない。

西欧文明のまっただなかで知的訓練を受けた一人のユダヤ系のフランス知識人が、西欧による植民地支配と植民地主義が終わろうとしていたまさにその時期、西欧文明への深刻な反省を抱えながら、失われる寸前の「未開社会」をフィールドワークしながら認識を深めていくある種の知的自伝でもある。強靱で骨太の知性をそこに感じるのはそのためだ。

ただし、ブラジルはフランスの植民地ではなかった。周知のとおりポルトガルの植民地であったが、独立後のブラジル共和国の理念はフランス由来のものである。フランスとブラジルの関係は、もっぱら知的交流が主であったことはアタマに入れておく必要があろう。

すでに構造主義も、人類学も、かつてそれらがもっていたような輝きも消え、いまでは「既成の知」の一つとしてアカデミズムの世界のなかに確固たる位置を占めるに至っているが、「構造主義の原典」などという堅苦しい観点からではなく、虚心坦懐に読んでみたらいいのではないか。「教典」ではないのだから。

過度に持ち上げる必要もないし、けなす必要もない。すぐれた文学作品だからこそ長い生命力をもつのであろう。

(『悲しき熱帯』のフィールドワーク中の若き日のレヴィ=ストロース ひげ面!)





目 次

上巻
22年ののちに-レヴィストロースにきく-(川田順造)
悲しき熱帯
 日本の読者へのメッセージ
第1部 旅の終り
 1. 出発
 2. 船で
 3. アンティール諸島
 4. 力の探求
第2部 旅の断章
 5. 過去への一瞥
 6. どのようにして人は民族学者になるか
 7. 日没
第3部 新世界
 8. 無風帯
 9. グヮナバラ
 10. 南回帰線を越えて
 11. サン・パウロ
第4部 土地と人間
 12. 都市と田舎
 13. 開拓地帯
 14. 空飛ぶ絨毯
 15. 群衆
 16. 市場
第5部 カデュヴェオ族
 17. パラナ
 18. パンタナル
 19. ナリーケ
 20. 原住民社会とその様式
訳注
口絵 カデュヴェオ族

下巻
第6部 ボロロ族
 21. 金とダイヤモンド
 22. 善い野蛮人
 23. 生者と死者
第7部 ナンビクワラ族
 24. 失われた世界
 25. 荒野(セルタウン)で
 26. 電信線に沿って
 27. 家族生活
 28. 文字の教訓
 29. 男、女、首長
第8部 トゥピ=カワイブ族
 30. カヌーで
 31. ロビンソン
 32. 森で
 33. 蟋蟀(こおろぎ)のいる村
 34. ジャピンの笑劇
 35. アマゾニア
 36. セリンガの林
第9部 回帰
 37. 神にされたアウグストゥス
 38. 一杯のラム
 39. タクシーラ
  40. チャウンを訪ねて
訳注
参考文献一覧
訳者あとがき
口絵 ボロロ族、ナンビクワラ族、トゥピ=カワイブ族
地図




著者プロフィール

クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)
1908年~2009年。ベルギーのブリュッセル生まれ。フランスの文化人類学者。パリ大学法学部卒業後、リセ(高等中学校)教員を経てブラジル、アメリカで民族学を研究、1949年帰国し、パリの人類博物館、高等研究院、コレージュ・ド・フランスなどで教育と研究に従事。社会人類学研究所を創設。画期的労作『親族の基本構造』などで文化の厳密な構造分析方法たる構造主義の旗手となる(別の書籍から転記)。 

訳者プロフィール

川田順造(かわだ・じゅんぞう)
1934年(昭和9年)東京生まれ。東京大学教養学部教養学科(文化人類学分科卒)、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。パリ第5大学民族学博士。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授を経て、現在広島市立大学国際学部教授。著書に『無文字社会の歴史』『口頭伝承論』『声』『ブラジルの記憶』他がある。


<ブログ内関連記事>

書評 『「悲しき熱帯」の記憶-レヴィ-ストロースから50年-』(川田順造、中公文庫、2010 単行本初版 1996)-『悲しき熱帯』の日本語訳者によるブラジルを多角的、重層的に見つめる人類学的視点

書評 『現代世界と人類学-第三のユマニスムを求めて-』(レヴィ=ストロース、川田順造・渡辺公三訳、サイマル出版会、1986)-人類学的思考に現代がかかえる問題を解決するヒントを探る


人類学的認識

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!
・・梅棹忠夫が提唱した「中洋」という概念をレヴィ=ストロースは使用していないが、『悲しき熱帯』の末尾の章を読むと近い認識をもっていたことがわかる

いまこそ読まれるべき 『「敗者」の精神史』(山口昌男、岩波書店、1995)-文化人類学者・山口昌男氏の死を悼む
・・山口昌男が目指した「歴史人類学」

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著
・・訳者の人類学者・川田順造氏は、思想史家の良知力氏、歴史学者の阿部謹也氏と二宮宏之氏と『社会史研究』を立ち上げた同志であった


地質学・考古学と歴史

地層は土地の歴史を「見える化」する-現在はつねに直近の過去の上にある ・・褶曲して上下が反転していても基本は変わらない

書評 『神父と頭蓋骨-北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展-』(アミール・アクゼル、林 大訳、早川書房、2010)-科学と信仰の両立をを生涯かけて追求した、科学者でかつイエズス会士の生涯
・・イエズス会士で古生物学者であったフランスの思想家


欧州のユダヤ系知識人にとっての「未開と文明」

『蛇儀礼』 (アビ・ヴァールブルク、三島憲一訳、岩波文庫、2008)-北米大陸の原住民が伝える蛇儀礼に歴史の古層をさぐるヒントをつかむ
・・アビ・ヴァールブルクはドイツのユダヤ系美術史学者。


西洋の植民地支配と南米、移民

映画  『アバター』(AVATAR)は、技術面のアカデミー賞3部門受賞だけでいいのだろうか?

書評『1492 西欧文明の世界支配 』(ジャック・アタリ、斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、2009 原著1991)

「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む
・・ルソーと並ぶ18世紀のフランス啓蒙思想家ヴォルテール

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む
・・1543年鉄砲伝来、1549年キリスト教伝来。ともにその役割を担ったのは「大航海時代」のポルトガル人であった

「リスボン大地震」(1755年11月1日)後のポルトガルのゆるやかな 「衰退」 から何を教訓として学ぶべきか?
・・「未来」の国であるブラジルとは違う、「過去」に生きる本国のポルトガル

(2014年8月12日 情報追加)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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