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2014年12月13日土曜日

書評 『渋沢栄一-日本を創った実業人-』 (東京商工会議所=編、講談社+α文庫、2008)-日本の「近代化」をビジネス面で支えた財界リーダーとしての渋沢栄一と東京商工会議所について知る


「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。日本の近代化をビジネス面から支えた最大の功労者である渋沢栄一がいなかったら、現在の日本がなかったといって過言ではないだろう。

本書はもともと、東京商工会議所の設立130年を記念して1980年に限定出版された『実業人の舞台-ルーツ東商一〇〇年』をベースに再構成された文庫版だという。

そう、渋沢栄一は東商(=東京商工会議所)の基礎をつくった人であり、27年間の長期にわたって会頭をつとめた渋沢栄一の存在抜きに東京商工会議所も、東商を核にした日本商工会議所もありえなかったわけである。内容に即していえば、『渋沢栄一と東京商工会議所』としたほうがより正確であろう。

東京商工会議所が1878年(明治11年)に設立されたのは、不平等条約改正のための世論形成の場をつくることが大きな目的の一つであったことは本書ではじめて知った。

幕末に締結してしまった不平等条約のなかでも、最大の問題は関税自主権と領事裁判権が日本側にないということであった。ともに商工業者にとっては海外貿易を行う上では最大のネックである。殖産興業、貿易振興は当時の日本にとっては急務の課題であったのだ。

そこで時の政府高官から渋沢栄一らに団体結成を命じたのが、欧米先進国に存在する商工会議所(Chamber of Commerce)であった。この命令は渋沢栄一にとっても、まさに渡りに船であった。民間の実業家という「民」のチカラを結集する場としての機能を制度化することができたからだ。商工会議所もまた、欧米先進国にならってつくられた近代の制度である。

内容はじつ読みやすく面白い。とかく政治中心にかたられがちな幕末から明治維新を経て明治時代にいたる日本近代史が、経済と経営、それも民間人としての実業家の立場から語られているからだ。

中心となるのは、東京商工会議所が設立される前後から、渋沢栄一が会頭を退いてから亡くなるまでの時期であるが、通史ではなくテーマ中心の叙述が読み物としても面白い。

とくに面白いのが、「第2章 不平等条約」と「第3章 横浜生糸貿易紛争」だ。富岡製糸場の開設にもかかわっていた渋沢栄一だが、こういったビジネスに直結したテーマ以外にも、渋沢栄一と東京商工会議所が一丸となって取り組んだのが、「第4章 文物創造」で取り上げられた商法講習所(・・現在の一橋大学)の設立と支援であることも、しっかりと書き込まれている。

また、「第5章 日米摩擦の回避へ」と「第6章 わが国初の渡米実業団」で語られるビジネスをつうじての日米関係強化など、興味深く読める内容となっている。

歴史の教科書は、いまだに政治史が中心の記述になっているが、不平等条約撤廃にむけての努力やさまざまな近代化への取り組みが、政治家だけでなく、実業家という民間人たちのチカラによって成し遂げられたことを知らなくてはならないのである。これが日本近代史なのである。

そのためにも、近代日本の建設者としての渋沢栄一と、彼が現在風にいえば「財界リーダー」として27年間にわたって会頭をつとめた東京商工会議所の歴史を知る意味があるのである。




目 次

まえがき
序章 東京商法会議所の発祥
第1章 グラント将軍
第2章 不平等条約
第3章 横浜生糸貿易紛争
第4章 文物創造
第5章 日米摩擦の回避へ
第6章 わが国初の渡米実業団
第7章 明治神宮奉建運動
第8章「渋沢栄一」を探る
あとがきに代えて
本書の参考とした主な文献


著者プロフィール

東京商工会議所
主に東京都内に事業所をおく企業・団体で運営されている商工会議所。 会頭は日本商工会議所会頭も兼任する。現在、東京23区に支部を設けている。1878年(明治11年)3月に東京商法会議所として設立。初代会頭は渋沢栄一。1891年(明治24年)7月、東京商業会議所、昭和3年1月より東京商工会議所となる。(wikipedia より)


<関連サイト>

公益財団法人 渋沢栄一記念財団 (公式サイト)

渋沢栄一ミュージアム (深谷市 公式サイト)



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日印交流事業:公開シンポジウム(1)「アジア・ルネサンス-渋沢栄一、J.N. タタ、岡倉天心、タゴールに学ぶ」 に参加してきた

書評 『渋沢栄一-社会企業家の先駆者-』(島田昌和、岩波新書、2011)-事業創出のメカニズムとサステイナブルな社会事業への取り組みから "日本資本主義の父"・渋沢栄一の全体像を描く

『雨夜譚(あまよがたり)-渋沢栄一自伝-』(長幸男校注、岩波文庫、1984)を購入してから30年目に読んでみた-"日本資本主義の父" ・渋沢栄一は現実主義者でありながら本質的に「革命家」であった

『論語と算盤』(渋沢栄一、角川ソフィア文庫、2008 初版単行本 1916)は、タイトルに引きずられずに虚心坦懐に読んでみよう!

書評 『渋沢家三代』(佐野眞一、文春新書、1998)-始まりから完成までの「日本近代化」の歴史を渋沢栄一に始まる三代で描く


日米関係

書評 『アメリカ「知日派」の起源-明治の留学生交流譚-』(塩崎智、平凡社選書、2001)-幕末・明治・アメリカと「三生」を経た日本人アメリカ留学生たちとボストン上流階級との交流

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書評 『有法子(ユーファーズ)-十河信二自伝-』(十河信二、ウェッジ文庫、2010 単行本初版 1959)-「新幹線の父」と呼ばれる前の満洲時代を中心とした貴重な証言
・・「一年間の米国留学を体験して悟ったのは、日米関係においてきわめて重要なのが中国問題。この思いから満洲に深くコミットし、満鉄総裁の松岡洋右というくせ者政治家や関東軍との激しいやりとりなども体験しながら、天津の電力問題を解決し、興中公司社長などを歴任しながら日中の経済関係強化に貢献する」

「日米親善ベース歴史ツアー」に参加して米海軍横須賀基地内を見学してきた(2014年6月21日)-旧帝国海軍の「近代化遺産」と「日本におけるアメリカ」をさぐる
・・見学コースの第一は「ドライドック」(船渠)。ドライドックは慶応3年(1867年)に建造が始まったらしい。完成は1871年(明治4年)というわけか。米海軍と海上自衛隊が現在でも共同使用している。(1871年完成のドライドックはいまでも現役!)これはまさに「歴史的建造物」であり、近代日本の産業化をささえた「近代化遺産」でもある。しかも、現役で使用されているからこそ、すみずみまで手入れが行き届いているのであろう。フランス技術による石造建築物の耐久性には驚くべきである。関与したのは小栗上野介。フランスの技師ヴェルニー。勝海舟はドックの建設には反対であったらしい。幕府崩壊後もヴェルニーは日本に残り、ドックのほかさまざまな構造物の技術指導を行ったという。」


明治神宮

「聖徳記念絵画館」(東京・神宮外苑)にはじめていってみた(2013年9月12日) ・・渋沢栄一と東京商工会議所は、明治神宮奉建運動にかかわっていた

(2014年12月20日、23日、2015年6月28日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)












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