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2016年1月27日水曜日

映画 『猿の惑星』の原作は、波乱万丈の前半生を東南アジアで送ったフランスの作家が1963年に発表したSFである


『猿の惑星』という本を読んだ。言うまでもなくハリウッド映画『猿の惑星』の原作である。

じつは2016年のサル年になるまで知らなかったのだが、原作はアメリカではなく、フランスの作家ピエール・ブールのSF作品だったのだ。創元SF文庫から1968年に日本語訳が出版されている。映画の公開にあわせての出版であろう。

映画の詳しい内容は忘れてしまったので、原作との違いはよくわからないが、1963年という時点で、こういう作品を書いた著者の着眼点にはおおいに感心する。

ここでいうサルとは、ゴリラとチンパンジーを中心とし、さらにオランウータンを加えた「類人猿」である。進化論の観点からいって、ヒトときわめて近い関係にあるサルだ。ちなみに映画版のタイトルは Planet of the Apes であり、類人猿(ape)と明記されているのはそのためだ。

(映画版ポスター)

人間が動物の社会に放り込まれるというシチュエーションは、すでに18世紀の英国の作家ジョナサン・スウィフトが 『ガリバー旅行記』で作り出している。日本ではあまり知られていないが、ガリバーは第4回目の航海で「馬の国」にいくことになっているのだ。

そう考えると、サルが支配する「猿の惑星」に人間が巻き込まれるという発想は、かならずしも目新しいものではないかもしれない。

だが、サルと人間が逆転しているという設定が人間をいたく刺激するのである。しかも、「猿の惑星」においては、人類の文明が衰退して滅亡し、そのあとにサルが支配者となって人類同様の文明社会を築き上げているというのだ。

「類人猿」は、進化論の観点からいって、ヒトときわめて近い関係にある。そう、この原作は、進化論や脳科学といった21世紀現在ではさらに関心が強くなる傾向にあるテーマが一貫しているのだ。進化論に対する抵抗感がまったくない日本人には想像しにくいが、西欧人にとってはかならずしもそうではなかったのである。

 (フランス語原作のカバー)

ピエール・ブール(1912~1994)というフランス人作家についてもまったく知らなかったが、なんとクワイ河マーチで有名な映画『戦場にかける橋』の原作者でもあるらしい。

もともとはエンジニアで、1936年から1939年まで当時は大英帝国領であったマレー半島でゴム園の監督者として勤務したが、第二次大戦中はフランス本国がドイツ支配下に入ったため、東南アジア現地でレジスタンス活動に従事。日本軍に捕まったあと仏印植民地軍に引き渡されて、戦争終了前に脱走となかなか波乱万丈な人生を送っている。

東南アジアだけでなく、アフリカも含めて植民地で前半生を過ごした人である。戦前の植民帝国時代のフランス人である。マレー人や華僑を中心としたアジア人労働者と日常的に接し、間近で観察してきただけでなく、欧州にはいないサルも観察することが容易な環境にいたわけだ。

『猿の惑星』の発想がどこから湧いてきたのかは、著者自身はなにも書いていないのでよくわからないが(・・すくなくとも日本語訳には記述はまったくない)、サルは日本人を含めたアジア人の比喩であるという説をどこかで読んだ記憶がある。

『猿の惑星』をみた日本人は、まさかそんなことだとは考えもしないだろうが、アジア人に対する視線が無意識のうちに著者の思考に影響を与えている可能性はある。

だが、一読してみた印象としては、『猿の惑星』イコール日本人支配という説はどうでもいいような気がする。発想の原点がどこにあるかはさておき、先にも書いたように、作品そのもののテーマはそこにはないからだ。

すでに50年以上前に発表されたSF作品だが、読んでみるとなかなか面白い。興味があるヒトは読んでみるといいと思う。





<ブログ内関連記事>

『ガリバー旅行記』は『猿の惑星』の先行者か?-第4回目の航海でガリバーは「馬の国」を体験する

映画 『アバター』(AVATAR)は、技術面のアカデミー賞3部門受賞だけでいいのだろうか?
・・舞台は地球からかなり遠くにある「惑星パンドラ」であり、そこには「先住民ナヴィ」(Navi)が住んでいる

書評 『神父と頭蓋骨-北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展-』(アミール・アクゼル、林 大訳、早川書房、2010)-科学と信仰の両立をを生涯かけて追求した、科学者でかつイエズス会士の生涯
・・北京原人の発見者のひとりでったイエズス会司祭

『サル学の現在 上下』(立花隆、文春文庫、1996)は、20年後の現時点で読んでもじつに面白い-「個体識別」によるフィールドワークから始まった日本発の「サル学」の全体像
・・ゴリラ、チンパンジーの生態について詳しく書かれている


映画 『レイルウェイ 運命の旅路』(オ-ストラリア・英国、2013)をみてきた-「泰緬鉄道」をめぐる元捕虜の英国将校と日本人通訳との「和解」を描いたヒューマンドラマは日本人必見!

書評 『東京裁判 フランス人判事の無罪論』(大岡優一郎、文春新書、2012)-パル判事の陰に隠れて忘れられていたアンリ・ベルナール判事とカトリック自然法を背景にした大陸法と英米法との闘い
・・アンリ・ベルナール判事は、「植民地帝国フランス」の海外植民地アフリカの司法官僚としてキャリアのほぼすべてを過ごした人であった

書評 『驕れる白人と闘うための日本近代史』(松原久子、田中敏訳、文春文庫、2008 単行本初版 2005)-ドイツ人読者にむけて書かれた日本近代史は日本人にとっても有益な内容

書評 『「肌色」の憂鬱-近代日本の人種体験-』(眞嶋亜有、中公叢書、2014)-「近代日本」のエリート男性たちが隠してきた「人種の壁」にまつわる心情とは

(2016年2月8日、6月10日 情報追加)


 
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2016年1月23日土曜日

「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展」(パナソニック汐留ミュージアム(2016年1月22日)ー 現在の英国を英国たらしめている植物愛を体現している植物園とその世界を紹介した展示会


「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展」(パナソニック汐留ミュージアム)にいってきた(2016年1月22日)。美しいボタニカルアート(=植物画)を中心とした展示である。

キュー王立植物館(The Royal Botanical Gardens, Kew)はロンドン郊外にある植物園である。残念ながら、わたしはまだ訪れたことがないのだが、2003年にはユネスコ世界遺産にも登録されているのだそうだ。

大英帝国の最盛期に、海外植民地からプラントハンターたちによってもたらされたゴムなどの貴重な植物種がここで栽培され、改良され、ふたたび植民地に戻されていった。英国の産業政策において戦略的な意味をもった植物園であり、植物の研究機関であったわけだ。たとえば、現在では当たり前のように栽培されているゼラニウムだが、なんと南アフリカ出身であることは今回はじめて知った。

もちろん英国のことであるから、そこはいわゆる「イングリッシュ・ガーデン」となる。幾何学的なフランス式庭園や奇想に満ち満ちたイタリア式庭園とは違って、自然そのものを活かしたのが英国式庭園だ。ガーデニングといえば英国をモデルにしているのは、もともとの日本人の好みにフィットしているからであろう。日本は、江戸時代以来の園芸大国である。幕末から明治時代前半に来日した外国人はみな絶賛しているとおりだ。

今回の展示の中心は、初期近代の17世紀から19世紀に製作されたボタニカルアートにある。美しくかつ精密に描かれた植物画は、それじたいが美術作品として鑑賞できるものだ。植物の特徴を正確に表現できるのが写真との違いである。だから、キュー植物園では、現在でも植物画の製作は推奨しているのである。21世紀以降の新作も展示されていて興味深い。

ボタニカルアート以外では、プラントハンターで植物学の発展に大きな貢献のあったジョセフ・バンクスや進化論のチャールズ・ダーウィンらの研究者とのかかわり、植物をモチーフにしたデザインで有名なウィリアム・モリスなどのデザイナーの作品も展示されている。

現在の英国を英国たらしめている要素のひとつである植物愛を体現している植物園とその世界を紹介した展示会といえるだろう。

ボタニカルアートのファン、ガーデニングを趣味とする人は、ぜひ足を運んでほしい展示会だ。




<関連サイト>

「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展(公式サイト)

キュー王立植物館(The Royal Botanical Gardens, Kew) (公式サイト 英語)


PS この記事で1700本目の投稿となったことに気がついた(2016年1月25日)


<ブログ内関連記事>

「今和次郎 採集講義展」(パナソニック電工 汐留ミュージアム)にいってきた-「路上観察」の原型としての「考現学」誕生プロセスを知る (2012年2月4日)

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家” ヴォーリズ
・・松下電工ミュージアム(現在のパナソニック汐留ミュージアム)で開催された展覧会を機に書いた記事

「石に描かれた鳥たち-ジョン・グールドの鳥類図譜-」(玉川大学教育博物館)にいってきた(2013年1月26日)-19世紀大英帝国という博物学全盛時代のボタニカルアート

書評 『紅茶スパイ-英国人プラントハンター中国をゆく-』(サラ・ローズ、築地誠子訳、原書房、2011)-お茶の原木を探し求めた英国人の執念のアドベンチャー
・・お茶の木もまたプラントハンターによって中国から英国に持ち出された

書評 『「イギリス社会」入門 -日本人に伝えたい本当の英国-』(コリン・ジョイス、森田浩之訳、NHK出版新書、2011)
・・お茶を飲む習慣は19世紀になってから

書評 『チューリップ・バブル-人間を狂わせた花の物語』(マイク・ダッシュ、明石三世訳、文春文庫、2000)-バブルは過ぎ去った過去の物語ではない!

「東京大学総合研究博物館小石川分館」と「小石川植物園」を散策(2009年7月12日)

千葉大学園芸学部にはイタリア式庭園とフランス式庭園がある-千葉大松戸キャンパスをはじめて訪問(2014年11月9日)
・・残念ながらイングリッシュガーデンは撤去されてしまった

「植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)を国立科学博物館」(東京・上野)にいってきた

"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-

「コンパニオン・プランツ」のすすめ-『Soil Mates』 という家庭園芸書の絵本を紹介

「夢の島」にはじめて上陸(2014年11月15日)-東京都江東区の「夢の島」に日本戦後史の縮図をみる
・・夢の島に熱帯植物園がある


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2016年1月21日木曜日

『サル学の現在 上下』(立花隆、文春文庫、1996)は、20年後の現時点で読んでもじつに面白い-「個体識別」によるフィールドワークから始まった日本発の「サル学」の全体像


『サル学の現在』(立花隆、文春文庫、1996)を年明けから読みはじめたのだがじつに面白い。

この本はジャーナリストの立花隆氏が、日本の現役のサル学研究者たちに突っ込んだインタビューを行ったものだ。単行本初版は1991年である。

日本のサル学の生みの親である今西錦司氏から始まり、草創期のサル学を確立した一人である伊谷純一郎氏で終える構成。その間にはさまれた、世代の異なる日本のサル学の研究者たちへのインタビュー。上下二冊の文庫本は、かなりのボリュームがある。

帯には、「サル学とは、人間学である 人間というものに興味がある知的人間であれば、サル学に興味を持たないはずがない(著者まえがきより)」とある。まさに、その通りだと思う。

サルについて考えることはじつに知的好奇心を刺激されるのである。読み始めながらそう思ったし、上下二冊を読み終えたいまも、さらにその想いを強くしている。人間を深く知るには、サル、とくに類人猿の研究は絶対不可欠なのだ、と。

そもそも「サル学」は日本で本格的に始まった学問だ。なぜなら、そこにサルがいるから。ニホンザルという野生のサルが、南は九州から北は下北半島にまで生息するのである。先進国でこれほど野生のサルが生息している国はほかにはない

そして、今西錦司氏が編み出したのが「個体識別」という方法。サル一匹一匹をそれぞれ異なる個体として識別し、その生態をフィールドで徹底的に観察するという方法である。サルに対する意識の垣根の低さが生んだ日本オリジナルの方法である。それはじつに画期的な観察方法であったのだ。

この成果として一般人にもよく知られているのが、伊谷純一郎氏による『高崎山のサル』であった。わたしもその本は、いまから30数年前に読んでおおいに好奇心をかき立てられたものだ。読後は動物園にいってサル山ばかり見ていたほどである。サルがイモを海水で洗って、塩気のついたイモを食べること集団全体に拡がった話は、日本人ならほぼ誰でも知っているのではないだろうか。

だが、『サル学の現在』をいまになってから読んで、日本のサル学は、1991年時点ですら、もはやその段階ではまったくないことを知ることになった。

さらにいえば、すでに「現在」とは言い難い2016年時点においても、意外なことサル学について基礎的なことを知らないことにも気がつかされる。とくに、チンパンジーの子殺しとカニバリズムの話は、現時点でもかなり衝撃的である。研究者が語る淡々とした描写がよけいそう感じさせるのかもしれない。

現在ではトンデモ発言へのバッシングを含め、毀誉褒貶相半ばする存在となってしまった感のある立花隆氏だが、『サル学の現在』においては、立花氏はあくまでもインタビュアーという立ち位置なので、自説の主張よりも研究者の発言を引き出すことに専念している。

現時点では訂正された仮説も少なくないと思うが、それにかんしては個別の研究分野の成果をあたるしかあるまい。ただし、サル学を専門としない一般読者にとっては、それは荷の重い話である。

おそらく、この本に匹敵する2016年版の『サル学の現在』を製作することは、今西錦司氏などの創始者たちが物故しているいま、もはや叶わぬことであろう。著者もまた、この本の「最新版」をつくる情熱も気力も、さすがにもたないだろう。

断片的なエピーソードなどは、さまざまな科学番組やポピュラー・サイエンスものをつうじて知ることはできるとはいえ、草創期からのサル学のすべてを通観できるような本は他にない。その意味では、日本ではあまり多くない本格的なポピュラーサイエンスものとしての価値は現在でも十分にあるのではないか、と思うのである。

サル学に関心があるから新刊の文庫本として購入してから、なんと20年(!)、積ん読のまま年月があっという間に過ぎていたが、ことし2016年が「サル年」なのでついに読み出すことにした次第。
 




目 次

序章 ヒトとサル 今西錦司
Ⅰ フィールドの発見
 第1章 サル学者の誕生 岡安直比
 第2章 セックスを回避する親和関係 高畑由紀夫
 第3章 ボスザルは存在しない 伊沢紘生
Ⅱ  ヒトにせまる
 第1章 チンパンジーにおける社会構造の発見 西田利貞
 第2章 言葉を覚えたチンパンジー 室伏靖子
 第3章 サルの脳でヒトを知る 久保田競
Ⅲ 知られざる社会生態
 第1章 ハーレムと同性愛・ゴリラ 山極寿一
 第2章 全員参加の乱交パーティー社会・ピグチン 加納隆至
 第3章 孤独な<森の哲人>オランウータン 鈴木晃
Ⅳ なぜ子殺しか
 第1章 子殺しで発情する・ハヌマンラングール 杉山幸丸
 第2章 カニバリズムがうむ集団興奮・チンパンジー 鈴木晃・高畑由紀夫・川中健二
 第3章 群れの解体をうながす子殺し・ゴリラ  山極寿一
Ⅴ ヒトはどこから来たか
 第1章 ヴェールをぬいだ新世界ザル 伊沢紘生・渡辺毅
 第2章 化石で探る人類の起源 江原昭善
 第3章 謎のサンブル・ホミノイド 石田英実
Ⅵ 分子から見た霊長類進化
 第1章 フィールドに出た生化学者 竹中修
 第2章 遺伝距離が明かす系統進化の道筋 野澤謙
 第3章 偽遺伝子は進化の分子時計 尾本恵市
 第4章 DNAがあばいた父子関係 井上美穂
終章 サルからヒトへの社会進化 伊谷純一郎
参考文献
図版出典
写真クレジット
用語解説索引


著者プロフィール   

立花 隆(たちばな・たかし)
1940年長崎県生まれ。64年東京大学仏文科卒業。同年、文藝春秋入社。66年退社し、67年に東大哲学科に学士入学。在学中から評論活動に入る。徹底した取材と卓抜した分析力による文筆活動で菊池寛賞、司馬遼太郎賞を受賞。




<ブログ内関連記事>

梅棹忠夫の幻の名著 『日本探検』(1960年)が、単行本未収録の作品も含めて 2014年9月 ついに文庫化!
・・「高崎山のサル」についての章がある。「サル学は日本独自の「土着科学」である。それは研究対象となるニホンザルが日本国内というフィールドに存在するだけでなく、日本人の自然観が無意識のうちに大いに反映した科学だからでもある。日本文明におけるサルの位置づけは、キリスト教世界とは異なり、親近感に満ちたものである。人間のつぎにサルがあるという自然序列観は日本人には不思議でもなんでもない。「河童駒引」や柳田國男の『孤猿随筆』などへの言及もあるが、サル学はナチュラル・ヒストリーの復権という意味合いもあることを梅棹忠夫は記している。」

書評 『渋沢家三代』(佐野眞一、文春新書、1998)-始まりから完成までの「日本近代化」の歴史を渋沢栄一に始まる三代で描く
・・「渋沢敬三が私費を投じたパトロネージのおかげで、民俗学者や人類学だけでなく自然科学から社会科学にいたるまで、かならずしも「実学」ではないが、日本にとって重要な学問が保護育成されたのである。」  日本のサル学もまた、渋沢敬三が申年生まれということもあって、その育成には物心両面の支援を行った


野生動物の観察

猛暑の夏の自然観察 (2) ノラネコの生態 (2010年8月の記録)
・・ノラネコは一匹一匹がかなり異なるので「個体識別」はサルよりも容易であろう

猛暑の夏の自然観察 (3) 身近な生物を観察する動物行動学-ユクスキュルの「環世界」(Umwelt)


■人間を考えるために

書評 『ロボットとは何か-人の心を写す鏡-』(石黒浩、講談社現代新書、2009)-「人間とは何か」、「自分とは何か」というロボット工学者の哲学的な問い

書評 『2045年問題-コンピュータが人間を超える日-』(松田卓也、廣済堂新書、2013)-「特異点」を超えるとコンピュータの行く末を人間が予測できなくなる?

書評 『動物に魂はあるのか-生命を見つめる哲学-』(金森修、中公新書、2012)-日本人にとっては自明なこの命題は、西欧人にとってはかならずしもそうではない

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2016年1月15日金曜日

フランスの女優イサベル・アジャーニが歌う「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)-追悼デビッド・ボウイ(1947~2016)


デビッド・ボウイ(David Bowie)が亡くなったというニュースには驚かされた。2016年1月10日に、69歳の誕生日に亡くなった。18ヶ月にわたるガンとの闘病の末だったという。

驚いたのは、ボウイが69歳(!)だったというそのことに対してである。いつまでも老けない美貌の持ち主だと思い込んでいたのは、自分の勝手なイメージだったのだ。たしかに、自分自身も年をとったなあという実感も、このニュースを知って感じたのであった。

特別に熱心なファンだったわけではないので、ボウイについてなにか発言するのはちょっと気が引けるが、ちょっと変わった切り口から書いておきたいと思ったので書いておこう。

フランスの女優イサベル・アジャーニが歌う「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)という曲がある。ここでいうボウイとは、もちろんデビッド・ボウイのことだ。

イサベル・アジャーニといえば現代フランスを代表する女優(・・じつは、わたしの一番の好みの女優)で、いまではカトリーヌ・ドヌーヴなどと並んでフランス映画界における大御所的な存在だが、かつてフランスの女優たちに歌わせる企画のシリーズものCDがあって、カトリーヌにもイサベルにも一枚づつアルバムが割り当てられている。イサベルのアルバム名は Isabelle Adjani, Pull marine, (Philips) である。

かつて1980年代後半によく聴いていたアルバムだが、そのなかに Beau oui comme Bowie という曲があることを思い出したので、ひさびさに引っ張り出してきた。CDには、1983年の発売と書いてある。そう、この1983年とは、ボウイの「レッツ・ダンス」が大ヒットした年でもあった。また、『戦場のメリークリスマス』で英国人将校役として主演した年でもある。

Beau oui comme Bowie は日本語に直訳すれば「美しい、そう、ボウイのように」となるが、フランス語をそのまま音声にしたがって素直に読めば「ボ・ウイ・コム・ボウイ」となる。つまり、「ボウイ」にひっかけたダジャレというわけだ(笑) フランス語でもダジャレがある、ということ。

フレンチ・ポップスの曲なので、もちろんデビッド・ボウイのカバー曲ではない。作詞作曲が才人のセルジュ・ゲンズブールによるものといえば、なんとなくわかるのではないかな? すでに亡くなっているが、いま風にいえば「ちょい悪オヤジ」を絵に描いたような存在であった。

歌詞のなかにオスカー・ワイルドとかドリアン・グレイとかでてくるので、わかる人にはわかるはずだ。Isabelle ADJANI - Beau oui comme Bowie (Serge Gainsbourg) をクリックして聴いてみるといいだろう。

イサベル・アジャーニのCDは、いまからすでに33年前のアルバムである。それにしても、ずいぶん昔のことになっていまっているのだなあと感じるばかりだ。自分のなかで時間は止まってしまっているのか・・・・。しかし、人間は確実に年を取る。

デビッド・ボウイ氏のご冥福を祈ります。合掌。





<関連サイト>

・・イサベル・アジャーニが歌う(フランス語)

[FT]独創貫いたデビッド・ボウイを悼む(社説) 2016/1/12

David Bowie's love affair with Japanese style 12 January 2016 (BBC)
・・山本寛斎との関係について



<ブログ内関連記事>

『戦場のメリークリスマス』(1983年)の原作は 『影の獄にて』(ローレンス・ヴァン・デル・ポスト)という小説-追悼 大島渚監督
・・デビッド・ボウイが主演した映画

映画 『ノーコメント by ゲンスブール』(2011年、フランス)をみてきた-ゲンズブールの一生と全体像をみずからが語った記録映画
・・「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)の作詞作曲した才人ゲンズブール

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む

『恋する理由-私が好きなパリジェンヌの生き方-』(滝川クリステル、講談社、2011)で読むフランス型ライフスタイル

滝川クリステルがフランス語でプレゼンした理由



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2016年1月11日月曜日

映画 『ブリッジ・オブ・スパイ』(米国、2015年)をみてきた(2016年1月10日)-米ソ冷戦時代を背景にしたスリリングで重厚なヒュ-マンドラマの傑作


映画 『ブリッジ・オブ・スパイ』(米国、2015年)をTOHOシネマズでみてきた(2016年1月10日)。

スピルバーグ監督のシリアスものではイスラエル情報機関モサドによるテロリストへの報復を描いた『ミュンヘン』と同様、いやそれ以上に重厚なヒューマンドラマといっていいのではないか。まったくスキのない、練りに練られた構成の142分である。

原題は、Bridge of Spies、つまりスパイは複数形。「スパイたちの橋」。橋は異なる世界を結ぶ存在であり、異なる世界への出入り口でもある。スパイたちとは、米国内で長年活動したのちに拘束されたソ連のスパイと、撃墜された米国の偵察機U2のパイロットである。

1957年から1960年にかけての、冷戦時代の米ソ対立時代の捕虜交換秘話でをベースにしたドラマである。人類が核戦争の危機に直面していた時期であり、東西に分断されたドイツでは「ベルリンの壁」が建設された時期である。



この米ソのスパイ交換に大きな役割を演じたのは、ひとりの米国市民であった。保険専門の弁護士(insurance lawyer)としてキャリアを積んできた主人公の男は、所属する法律事務所が政府から依頼されたソ連のスパイの弁護を国選弁護士として行うことになる。

共産主義の脅威が核戦争の恐怖として声高に語られていた当時の米国においては、「敵国」ソ連の、しかも米国内で活動していたスパイ(!)の弁護を行うことなどは、まさに「非国民」であり、生命の危険さえあったのだ。それは弁護士本人だけでなく、家族にも危険が及ぶことを意味していた。

マッカーシーによる「赤狩り」が猛威を振ったのは1940年代後半、原子爆弾の秘密をもらしたローゼンバーグ夫妻がソ連のスパイとされて処刑されたのは1949年。映画の時代設定は、「赤狩り」の時代から、わずか10年しか立っていないのである。

みずから望んだわけではないものの、ソ連のスパイの弁護を引き受けた主人公であったが、絶対に口を割らないスパイに、みずからが属する国家に忠誠を誓う戦士としての敬意と人間的な親しみを感じるようになり、人道的な観点から被告のスパイを生かしておくべきだという結論をもつに至る。


だが、それは人道的な観点だけでなく、戦略的な意味にもとづくものでもあった。

米国で活動を行うスパイが存在することは、逆に相手の立場に立って考えれば、ソ連で活動する米国のスパイがいることを意味している。だからこそ、米国のスパイがソ連で拘束されることも想定内に入れておくべきなのだ、というロジックだ。手元で拘束しているソ連のスパイは「保険」になるという、交渉の専門家としての法律家として導き出されたロジカル・シンキングである。

そしてついに主人公の想定は現実のものとなる。米国空軍の偵察機U2がトルコとソ連の国境付近で撃墜され、米国人パイロットがソ連で捕虜になるという緊急事態が発生したのだ。CIAは捕虜交換を決意し、民間人の主人公がその大役を担って、米ソ冷戦の最前線で東西の壁が建設されたばかりの東ベルリンに向かうことになる。そして最後の最後までスリリングな内容が続く・・・。

ハリウッド映画なのでハッピーエンドで終わるが、アメリカ人弁護士が主人公なので、ドイツ人が主人公の『シンドラーのリスト』やイスラエル人が主人公の『ミュンヘン』とは違って、この映画にまったく違和感はない。もちろん、トム・ハンクスの演技はすばらしいの一言に尽きる。

映画の冒頭に Inspired by true events. とあるので、歴史上の諸事実をもとにドラマ化したわけだ。Based on a true story. との違いに注意しておくといいのではないかと思うが、エンターテインメントとしては非の打ち所のない、文句なしの傑作といっていい。







<関連サイト>

映画 『ブリッジ・オブ・スパイ』公式サイト (日本版)

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(120秒) (日本語)

Bridge of Spies Official Trailer #1 (2015) - Tom Hanks Cold War Thriller HD (英語)


<ブログ内関連記事>

映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた-海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!
・・トム・ハンクス主演

映画 『完全なるチェックメイト』(2014年、アメリカ)をみてきた(2015年12月27日)-米ソ冷戦時代を背景に世界チャンピオンとなったアメリカ人天才チェスプレイヤーの半生を描いたヒューマンドラマ
・・頂上対決となった1972年の世界チャンピオン決定戦で米ソ双方のチェスチャンピオンがガチンコ対決した

「JFK-その生涯と遺産」展(国立公文書館)に行ってきた(2015年3月25日)-すでに「歴史」となった「熱い時代」を機密解除された公文書などでたどる
・・ケネディが41歳で非業の死を迎える大統領だったのは1960年から1963年まで。まさにこの時期に「ベルリンの壁」が構築され、核戦争一歩手前という「キューバ危機」があった

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋、2008)-第二次大戦後の米国を設計したシンクタンクの実態を余すところなく描き切ったノンフィクション

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2016年1月10日日曜日

「世界の英知」をまとめ読み ー 米国を中心とした世界の英知を 『知の逆転』『知の英断』『知の最先端』『変革の知』に収録されたインタビューで読む


2016年にの新年に「世界の知性」のインタビュー集をまとめよみした。いずれも、英語圏を中心とした米英(とくに米国)の知の巨人たちへのインタビューである。以下の4冊がそのリストである

『知の逆転』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2012)
●『知の英断』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2014)
●『知の最先端』(大野和基=インタビュー・編、、PHP新書、2013)
●『変革の知』(岩井理子訳、角川新書、2015) 

この順番で読んでいったのだが、やはりなんといっても『知の逆転』がダントツに圧倒的だった。本を読んで知的に興奮するということは、そうめったにあることではない。この本は、まさにその「めったにない本」である。

『知の逆転』に収録された賢人たちは、ほはじつにスゴい。いかに列挙してみよう。

ジャレド・ダイアモンド、 ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス 、マービン・ミンスキー 、トム・レイトン 、ジェームズ・ワトソン。いずれもいわゆる理系分野を中心にして、その他の領域にも横断的に語ることのできる「知の巨人」たちである。特定の肩書きでは語ることのできない、横断的知性の体現者たちである。

脳科学の知見のあるインタビューアーならではの「質問力」と「対話力」がフルに発揮されたもので、掲載分量の制約がないので限りなくディープ・インタビューに近い。あらためてこの本の評判がきわめて高いことを確認した次第。遅ればせながら、わたしも「この本は絶対に読むべきだ」、と推奨したい。

『知の英断』は、「エルダーズ」という、カーター元米大統領をはじめとする、一国の首相や大統領を務めた経験の持ち主を中心とした「実践家」たちのグループのメンバーたちへのインタビュー集。ヴァージングループ総帥のリチャード・ブランソンが入っているのは、彼が「エルダーズ」結成の呼びかけ人だからだ。

『知の最先端』のインタビュー対象もまた刺激的だ。心理学者のシーナ・アイエンガー、政治学者のフランシス・フクヤマ、国家の盛衰について研究する経済学者ダロン・アセモグル、テクノロジー評論家のクリス・アンダーソン、経済地理学のリチャード・フロリダ、イノベーション研究者のクレイトン・クリステンセン、作家のカズオ・イシグロだが、一人ひとりの分量が少ないのが残念。例外として、作家のカズオ・イシグロのインタビューは分量も多く読み応えがあった。

 『変革の知』は、韓国を代表するマスコミの「朝鮮日報」に掲載されたもの。同様の趣旨でビジネス思考家を中心とした幅広い人選だが、インタビューを行った人の情報が記載されておらず、しかも一人ひとりの掲載分量が少ないのが残念。ただし、韓国人の目を通したインタビューという点は、日本人によるものとは異なるという点で、「複眼的」になれる点に意味はある。

これらのインタビュー集で取り上げられらた「知の巨人」たちの著書も全部読みたいと思うのだが、なかなかそこまではできないのが残念なところだ。

そう思う人も少ないないと思うが、すぐれたインタビューは著者のホンネが引き出されているので、著書そのものとは違う価値があるかもしれない。


『知の逆転』のなにがスゴいのか

ふたたび『知の逆転』について触れておきたいと思う。この本は、数あるインタビューのなかでもダントツに圧倒的だからだ。インタビュー対象とインタビュアーがマッチングしているからである。

この本でいちばん印象が強いのはチョムスキーである。この本を読むまでじつはチョムスキーはあまり好きではなかった。だがインタビューを読んで、その知的パワーの巨大さには圧倒された。言語学者で政治的発言のきわめて多いチョムスキーだが、インタビューの前半は、なんだかチョムスキーから経済学のレクチャーを受けているような気にさせられた。

インタビュアーの吉成真由美氏は、さすがにノーベル賞学者・利根川博士の伴侶だけに脳科学のベースがある。「門前の小僧」というわけではないが、それが大きな強みになっている。インタビュー対象の人選には MIT人脈も大いに働いているのだろう。インタビューに際しての準備も用意周到に行っていることが推測できる。

 『知の逆転』『知の英断』の両者に共通するのだが、吉成氏のインタビューがすぐれているのは、科学者にも政治家にも、かならず宗教についてたずねていることだ。インタビューの最後に行われているが、これがもしかするとインタビューのキモかもしれない。

宗教や価値観は、個人の内面にかんするものでありながら、じつは生き方にも思考にもおおいに影響を与えているのである。科学者にとっての宗教(の有無)、政治家など実践家にとって、信念の体系である宗教観や価値観は、ある意味ではもっとも重要な要素なのである。

それを聞き出すことができたインタビューだからこそ、じつに印象深いのであろう。



●『知の逆転』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2012)

目 次

第一章 文明の崩壊―ジャレド・ダイアモンド
 『銃・病原菌・鉄』から『文明崩壊』へ
 第三のチンパンジー セックスはなぜ楽しいか?
 宗教について、人生の意味について
 教育の将来
第二章 帝国主義の終わり―ノーム・チョムスキー
 資本主義の将来は?
 権力とプロパガンダ
 インターネットは新しい民主主義を生み出すか
 科学は宗教に代わりうるか
 理想的な教育とは?
 言語が先か音楽が先か
第三章 柔らかな脳―オリバー・サックス
 なぜ「個人物語」が重要なのか
 音楽の力 人間に特有の能力について
 生まれか育ちか?
 遺伝子か教育か?
 宗教と幻覚の関係
 インターネットが脳に与える影響
第四章 なぜ福島にロボットを送れなかったか―マービン・ミンスキー
 人工知能分野の「失われた30年」
 社会は集合知能へと向かうのか
 「エモーション・マシーン」としての人間
第五章 サイバー戦線異状あり―トム・レイトン
 インターネット社会のインフラを支える会社
 サイバーワールドの光と影
 アカマイ設立秘話
 大学の研究と産業との新たな関係
 教育は将来、どう変わっていくのか
第六章 人間はロジックより感情に支配される―ジェームズ・ワトソン
 科学研究の将来
 個人を尊重するということについて
 真実を求めて
 教育の基本は「事実に基づいて考える」ということ
 二重らせん物語
  尊厳死について

著者プロフィール
吉成真由美(よしなり・まゆみ)
サイエンスライター。マサチューセッツ工科大学卒業(脳および認知科学学部)。ハーバード大学大学院修士課程修了(心理学部脳科学専攻)。元NHKディレクターであり、子供番組、教育番組、NHK特集などを担当。コンピューター・グラフィックスの研究開発にも携わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






●『知の英断』(吉成真由美=インタビュー・編、NHK出版新書、2014)

目 次  

第1章 戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領―ジミー・カーター
第2章 50年続いたハイパーインフレを数か月で解消した大統領―フェルナンド・カルドーゾ
第3章 「持続可能な開発」と「少女結婚の終焉」―グロ・ハーレム・ブルントラント
第4章 「人権のチャンピオン」と「世界一の外交官」―メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ
第5章 ビジネスの目的は、世の中に "違い" をもたらすこと―リチャード・ブランソン




●『知の最先端』(大野和基=インタビュー・編、、PHP新書、2013)

目 次

第1章 その「選択」があなたの人生を変える(シーナ・アイエンガー)
第2章 共産中国の正統性が失われる日(フランシス・フクヤマ)
第3章 国家の繁栄は「政治制度」がもたらす(ダロン・アセモグル)
第4章 製造業の常識を破壊する「メイカーズ革命」(クリス・アンダーソン)
第5章 オリンピックで倍増する東京の魅力(リチャード・フロリダ)
第6章 日本は「イノベーションのジレンマ」の最先進国だ(クレイトン・クリステンセン)
第7章 愛はクローン人間の悲しみを救えるか(カズオ・イシグロ)


著者プロフィール
大野和基(おおの・かずもと)
1955年兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。1979年~97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動を開始、国際情勢の裏側、医療問題から経済まで幅広い分野の取材・執筆を行なう。97年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。アメリカの最新事情に精通している。近年はテレビでも活躍。{本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)






●『変革の知』(岩井理子訳、角川新書、2015)

目 次


第1部 世界を見通す賢人たちの基準
 思いやりや与えることが成功の秘訣(アダム・グラント)
 最高の選択をするためには間違った選択を避けること(ロルフ・ドベリ)
 恐れがあればこそ仕事も人生もアートになる(セス・ゴーディン)
 モノより体験を買う時、もっと幸せになれる(マイケル・ノートン)
 スマートフォンではなく顔を見ないと本当の心は見えない(ジャレド・ダイアモンド)
第2部 代わりのきかない「自分」の創り方
 現代人は皆、顧客の心を虜にしなければならないセールスマン(ダニエル・ピンク)
 競争ではなく、ただ製品のためにエネルギーを使う(フィル・リービン)
 私たちは何か素敵なことをするためにこの惑星に来た(カリム・ラシッド)
 消費者の欲望を読み取るために、まず彼らになってみる(ヤン・チップフェイス)
 あらゆる創造には「人間」に対する熱烈な探究心が必要(ケビン・ファイギ)
第3部 危機を乗り越えた生存戦略
 やると言ったことを実践し、なると言った人にならねばならない(ジョン・ライス)
 世代を見通す「職人」資本主義を学ぶべき(ブルクハート・シュベンカー)
 つまらない1000人より確実な1人に集中せよ(アニタ・エルバース)
 世界を救いたいと夢見たことが私を救った(オリビア・ラム)
 真のリーダーは自分を下に置いてビジョンを提示する(趙玉平)
 社員の感情も管理できる企業が成功する(テレサ・アマビール、ボリス・グロイスバーグ)
 成功する企業は一目で分かる(マイケル・モーリッツ)


訳者プロフィール

岩井理子(いわい・のりこ)
神奈川県出身。日本語教師として韓国に滞在し、帰国後に翻訳者を目指す。現在はDVD/CS放送向けのドラマや映画の字幕翻訳・監修を行うかたわらワイズ・インフィニティ字幕翻訳講師を務める。また実務翻訳にも多数携わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)





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書評 『人間にとって科学とはなにか』(湯川秀樹・梅棹忠夫、中公クラシック、2012 初版 1967)-「問い」そのものに意味がある骨太の科学論


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2016年1月5日火曜日

インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場するハヌマーン-2016年の干支はサル ④

インドの絵本に登場する火のついた尻尾でランカーを焼き払うハヌマン)

インド神話に登場するハヌマーンについて知っているだろうか。

数々の動物が神として信仰されているのがインドのヒンドゥー教である。日本でも比較的知られているのがガネーシャだろう。ゾウのアタマをもった商売繁盛の神様である。このほか、ウマのアタマをもったハヤグリーヴァ(=馬頭)については、このブログでもウマ年に取り上げている。

ハヌマーン(Hanuman)はサルである。人間のカラダにゾウのアタマがついているガネーシャとは違って、ハヌマーンはアタマの先から尻尾の先までサルである。ハヌマーンは神様ではないが、インドでは民間信仰の対象として愛されてきた。

ハヌマーンが登場するのは叙事詩の『ラーマーヤナ』。インド文学としては『マハーバーラタ』のほうが世界的に有名だが、インド文明が及んだ地域では、圧倒的に『ラーマーヤナ』の影響がつよい。タイ、ラオス、カンボジア、インドネシアに至るまで及んでいる。

さらにいえば、孫悟空が登場する中国の『西遊記』の源流のひとつはインドの『ラーマーヤナ』であるとされている。インド起源で中国で受容されたのは大乗仏教だけではない。ハヌマーンと孫悟空の関係について考えてみるのも面白い。

『ラーマーヤナ』は、王子ラーマとその后のシータをめぐる物語。ハヌマーンは猿王スグリーヴァの軍師として、魔王に誘拐されたシータの捜索で大活躍する。変幻自在で空を自由に飛び回り、火のついた尾っぽで魔王の宮殿を焼き払う(・・トップの画像)。

(胸を裂いてラーマとシータを示すハヌマーン wikipediaより)

そして、なによりもラーマに対する忠誠心の深さは比類ない。ハヌマーンは、胸を裂いてラーマとシータを示すのである(・・上掲の画像)。こういう感覚は日本人的には、ナマナマしすぎて敬遠したくなうのだが・・・。

ラーマはヴィシュヌ神の化身(=アヴァタール=アバター)とされインド民衆のあいだでは深い信仰の対象となっている。そんなラーマへの忠誠心のあついハヌマーンもまた愛されてきた。


東南アジアのインド文明圏

『ラーマーヤナ』は、インド文明が及んだ地域には大きな影響を与えており、タイの仮面舞踊劇であるコーン、インドネシアの影絵芝居であるワヤンにおいても主要なテーマである。

20年ほど前にはじめてタイやインドネシアを歩き回ったとき、東南アジアには仏教もイスラームも超えた共通性があることに気がつかされた。その代表が神鳥のガルーダであり、ハヌマーンなのである。タイでは王室関連でガルーダの紋章が使用され、インドネシアの国営航空はガルーダである。

タイの歴代の国王がラーマを名乗っていることにも注意しておきたところだ。古くは石碑で有名なラームカムヘン大王、そして現在のラタナコーシン王朝の国王は、初代から現在に至るまでラーマを名乗っている。現在のプミポン国王はラーマ9世である。

(タイの仮面舞踊劇コーンに登場するハヌマーン タイの出版物より)

多様な宗教が混在する東南アジアであるが、基層にあるインド文明、そして『ラーマーヤナ』が重要な要素であることはアタマのなかに入れておいたほうがいい。学術シンポジウムの記録である 『ラーマーヤナの宇宙-伝承と民族造形-(慶応義塾大学地域研究センター叢書)』(金子量重・鈴木正崇・坂田貞二=編、春秋社、1998)がその参考になる。この本では、ビルマ(=ミャンマー)やスリランカ、日本についても取り上げられている。

『ラーマーヤナ』は、日本語訳が平凡社東洋文庫から出版されているが、全7巻とかなり長いのでなかなか躊躇してしまう。

さいわいなことに、子ども向けに童話化したものであるが『ラーマーヤナ(上下)-インド古典物語-』(河田清史、レグルス文庫、1971)として入手可能なので、物語そのものを知るにはたいへん都合がよい。もともと初版は戦時中に出版されたらしい。大東亜戦争が日本とアジアの距離を一気に縮めたのである。

(日本語でかんたんに読める『ラーマーヤナ』 筆者蔵)


東西文明におけるサル

仏教に限らず、アジア文明の源泉がインドにあることは、美術を中心に論じた岡倉天心の『東洋の理想』以来のテーマであるが、擬人化した知恵者のサルが登場する物語もまたインドが起源であることは、先に見てきたとおりだ。

興味深いのは、インドから東に向かってはサルの物語は伝播したが、インドの西には拡がらなかったという事実だ。

これは端的にいって、サルが生態系のなかに存在するかどうかの違いであろう。インドでも東南アジアでも中国でも日本でも、サルは当たり前の存在であるが、インドの西に拡がる砂漠の先にはサルはいない。アジア以外でサルが生息するのはアフリカ大陸である。

どうやら、アフリカへの本格的進出まで、西洋人はサルを見たことがなかったようなのだ。動物園が普及している現在からは考えにくいが、生態系のなかにサルが存在しない以上、当たり前といえば当たり前だろう。あくまでも珍獣という認識だろうか。

そう考えると、西洋人がかつてあからさまに日本人をサル扱いしてきたことや、ヒトとサルが同じ先祖をもつというダーウィン進化論を拒絶するアメリカの福音主義者たちの存在も理解できなくはない。サルには親しみを感じないのが一般的な西洋人なのであろう。

日本人として生まれ育った人間には想像しにくいが、サルに親しみを感じる感性は、どうやら人類共通のものではないようなのだ。

そう考えると、温泉ザルなどのニホンザルを見るために外国人観光客が増大中という近年の動向は、西洋人の認識に変化の現れかもしれないと思ってみたりもするのだが、さてじっさいはどうなのだろうか・・・。




<ブログ内関連記事>

インド神話のハヤグリーヴァ(馬頭) が大乗仏教に取り入れられて馬頭観音となった

タイのあれこれ(17) ヒンドゥー教の神々とタイのインド系市民

「無憂」という事-バンコクの「アソーク」という駅名からインドと仏教を「引き出し」てみる

書評 『世界を動かす聖者たち-グローバル時代のカリスマ-』(井田克征、平凡社新書、2014)-現代インドを中心とする南アジアの「聖者」たちに「宗教復興」の具体的な姿を読み取る


書評 『驕れる白人と闘うための日本近代史』(松原久子、田中敏訳、文春文庫、2008 単行本初版 2005)-ドイツ人読者にむけて書かれた日本近代史は日本人にとっても有益な内容


「サル年」関連

「見ざる、言わざる、聞かざる」(See No Evil, Hear No Evil, Say No Evil)-2016年の干支はサル ①

船橋市本町の猿田彦(サルタヒコ)神社を参拝-2016年の干支はサル ②

華人世界シンガポールの「ハウ・パー・ヴィラ」にも登場する孫悟空-2016年の干支はサル ③

『サル学の現在 上下』(立花隆、文春文庫、1996)は、20年後の現時点で読んでもじつに面白い-「個体識別」によるフィールドワークから始まった日本発の「サル学」の全体像

映画 『猿の惑星』の原作は、波乱万丈の前半生を東南アジアで送ったフランスの作家が1963年に発表したSFである

(2016年2月1日 情報追加)


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