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2016年1月21日木曜日

『サル学の現在 上下』(立花隆、文春文庫、1996)は、20年後の現時点で読んでもじつに面白い-「個体識別」によるフィールドワークから始まった日本発の「サル学」の全体像


『サル学の現在』(立花隆、文春文庫、1996)を年明けから読みはじめたのだがじつに面白い。

この本はジャーナリストの立花隆氏が、日本の現役のサル学研究者たちに突っ込んだインタビューを行ったものだ。単行本初版は1991年である。

日本のサル学の生みの親である今西錦司氏から始まり、草創期のサル学を確立した一人である伊谷純一郎氏で終える構成。その間にはさまれた、世代の異なる日本のサル学の研究者たちへのインタビュー。上下二冊の文庫本は、かなりのボリュームがある。

帯には、「サル学とは、人間学である 人間というものに興味がある知的人間であれば、サル学に興味を持たないはずがない(著者まえがきより)」とある。まさに、その通りだと思う。

サルについて考えることはじつに知的好奇心を刺激されるのである。読み始めながらそう思ったし、上下二冊を読み終えたいまも、さらにその想いを強くしている。人間を深く知るには、サル、とくに類人猿の研究は絶対不可欠なのだ、と。

そもそも「サル学」は日本で本格的に始まった学問だ。なぜなら、そこにサルがいるから。ニホンザルという野生のサルが、南は九州から北は下北半島にまで生息するのである。先進国でこれほど野生のサルが生息している国はほかにはない

そして、今西錦司氏が編み出したのが「個体識別」という方法。サル一匹一匹をそれぞれ異なる個体として識別し、その生態をフィールドで徹底的に観察するという方法である。サルに対する意識の垣根の低さが生んだ日本オリジナルの方法である。それはじつに画期的な観察方法であったのだ。

この成果として一般人にもよく知られているのが、伊谷純一郎氏による『高崎山のサル』であった。わたしもその本は、いまから30数年前に読んでおおいに好奇心をかき立てられたものだ。読後は動物園にいってサル山ばかり見ていたほどである。サルがイモを海水で洗って、塩気のついたイモを食べること集団全体に拡がった話は、日本人ならほぼ誰でも知っているのではないだろうか。

だが、『サル学の現在』をいまになってから読んで、日本のサル学は、1991年時点ですら、もはやその段階ではまったくないことを知ることになった。

さらにいえば、すでに「現在」とは言い難い2016年時点においても、意外なことサル学について基礎的なことを知らないことにも気がつかされる。とくに、チンパンジーの子殺しとカニバリズムの話は、現時点でもかなり衝撃的である。研究者が語る淡々とした描写がよけいそう感じさせるのかもしれない。

現在ではトンデモ発言へのバッシングを含め、毀誉褒貶相半ばする存在となってしまった感のある立花隆氏だが、『サル学の現在』においては、立花氏はあくまでもインタビュアーという立ち位置なので、自説の主張よりも研究者の発言を引き出すことに専念している。

現時点では訂正された仮説も少なくないと思うが、それにかんしては個別の研究分野の成果をあたるしかあるまい。ただし、サル学を専門としない一般読者にとっては、それは荷の重い話である。

おそらく、この本に匹敵する2016年版の『サル学の現在』を製作することは、今西錦司氏などの創始者たちが物故しているいま、もはや叶わぬことであろう。著者もまた、この本の「最新版」をつくる情熱も気力も、さすがにもたないだろう。

断片的なエピーソードなどは、さまざまな科学番組やポピュラー・サイエンスものをつうじて知ることはできるとはいえ、草創期からのサル学のすべてを通観できるような本は他にない。その意味では、日本ではあまり多くない本格的なポピュラーサイエンスものとしての価値は現在でも十分にあるのではないか、と思うのである。

サル学に関心があるから新刊の文庫本として購入してから、なんと20年(!)、積ん読のまま年月があっという間に過ぎていたが、ことし2016年が「サル年」なのでついに読み出すことにした次第。
 




目 次

序章 ヒトとサル 今西錦司
Ⅰ フィールドの発見
 第1章 サル学者の誕生 岡安直比
 第2章 セックスを回避する親和関係 高畑由紀夫
 第3章 ボスザルは存在しない 伊沢紘生
Ⅱ  ヒトにせまる
 第1章 チンパンジーにおける社会構造の発見 西田利貞
 第2章 言葉を覚えたチンパンジー 室伏靖子
 第3章 サルの脳でヒトを知る 久保田競
Ⅲ 知られざる社会生態
 第1章 ハーレムと同性愛・ゴリラ 山極寿一
 第2章 全員参加の乱交パーティー社会・ピグチン 加納隆至
 第3章 孤独な<森の哲人>オランウータン 鈴木晃
Ⅳ なぜ子殺しか
 第1章 子殺しで発情する・ハヌマンラングール 杉山幸丸
 第2章 カニバリズムがうむ集団興奮・チンパンジー 鈴木晃・高畑由紀夫・川中健二
 第3章 群れの解体をうながす子殺し・ゴリラ  山極寿一
Ⅴ ヒトはどこから来たか
 第1章 ヴェールをぬいだ新世界ザル 伊沢紘生・渡辺毅
 第2章 化石で探る人類の起源 江原昭善
 第3章 謎のサンブル・ホミノイド 石田英実
Ⅵ 分子から見た霊長類進化
 第1章 フィールドに出た生化学者 竹中修
 第2章 遺伝距離が明かす系統進化の道筋 野澤謙
 第3章 偽遺伝子は進化の分子時計 尾本恵市
 第4章 DNAがあばいた父子関係 井上美穂
終章 サルからヒトへの社会進化 伊谷純一郎
参考文献
図版出典
写真クレジット
用語解説索引


著者プロフィール   

立花 隆(たちばな・たかし)
1940年長崎県生まれ。64年東京大学仏文科卒業。同年、文藝春秋入社。66年退社し、67年に東大哲学科に学士入学。在学中から評論活動に入る。徹底した取材と卓抜した分析力による文筆活動で菊池寛賞、司馬遼太郎賞を受賞。




<ブログ内関連記事>

梅棹忠夫の幻の名著 『日本探検』(1960年)が、単行本未収録の作品も含めて 2014年9月 ついに文庫化!
・・「高崎山のサル」についての章がある。「サル学は日本独自の「土着科学」である。それは研究対象となるニホンザルが日本国内というフィールドに存在するだけでなく、日本人の自然観が無意識のうちに大いに反映した科学だからでもある。日本文明におけるサルの位置づけは、キリスト教世界とは異なり、親近感に満ちたものである。人間のつぎにサルがあるという自然序列観は日本人には不思議でもなんでもない。「河童駒引」や柳田國男の『孤猿随筆』などへの言及もあるが、サル学はナチュラル・ヒストリーの復権という意味合いもあることを梅棹忠夫は記している。」

書評 『渋沢家三代』(佐野眞一、文春新書、1998)-始まりから完成までの「日本近代化」の歴史を渋沢栄一に始まる三代で描く
・・「渋沢敬三が私費を投じたパトロネージのおかげで、民俗学者や人類学だけでなく自然科学から社会科学にいたるまで、かならずしも「実学」ではないが、日本にとって重要な学問が保護育成されたのである。」  日本のサル学もまた、渋沢敬三が申年生まれということもあって、その育成には物心両面の支援を行った


野生動物の観察

猛暑の夏の自然観察 (2) ノラネコの生態 (2010年8月の記録)
・・ノラネコは一匹一匹がかなり異なるので「個体識別」はサルよりも容易であろう

猛暑の夏の自然観察 (3) 身近な生物を観察する動物行動学-ユクスキュルの「環世界」(Umwelt)


■人間を考えるために

書評 『ロボットとは何か-人の心を写す鏡-』(石黒浩、講談社現代新書、2009)-「人間とは何か」、「自分とは何か」というロボット工学者の哲学的な問い

書評 『2045年問題-コンピュータが人間を超える日-』(松田卓也、廣済堂新書、2013)-「特異点」を超えるとコンピュータの行く末を人間が予測できなくなる?

書評 『動物に魂はあるのか-生命を見つめる哲学-』(金森修、中公新書、2012)-日本人にとっては自明なこの命題は、西欧人にとってはかならずしもそうではない

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