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2017年8月12日土曜日

書評 『日米同盟のリアリズム』(小川和久、文春新書、2017)-軍事のリアリズムを中心に政治経済まで視野に入れて分析した「戦争力」


米国と北朝鮮のチキンレースが続いている毎日ですが、そんな状況だからこそ妙に浮き足だったり、あるいは逆に、どうせ関係ないよとばかりに不感症にならないようにつとめなけなりませんね。

そこでぜひ読むことを薦めたいのが、『日米同盟のリアリズム』(小川和久、文春新書、2017)。7月の新刊ですが、すでにベストセラーになっているようです。

 「日米同盟のリアリズム」とは、強固な日米軍事同盟があるがゆえに、近隣の中国も北朝鮮も手を出せないというのが現実の状況のこと。日本に手を出せば、ただちに米国から手痛いしっぺ返しをくらうから。ちょっかいを出してきても「寸止め」にとどめるしかないわけです。

その昔の冷戦時代、「日本列島は不沈空母だ」といった首相がいましたが、米国にとって日本の存在は、その世界戦略にとってなくてはならない不可欠の存在絶対に手放せるわけがないのです。たとえ日本が「離脱」しようとしても、そうはできない仕組みと仕掛けがすでに「埋め込まれているのが実態なのです。
   
現在のような状況を「属国」だという政治的な主張をする人たちもいますが、そういう主張と、自分とその家族や友人の「生命財産」とどっちが大事か考えるまでもありませんね。

「属国」とまでは言わなくても、「半独立」状態であることまでは、わたくしも否定しません。すくなくともこの事実だけはアタマのなかに入れておいて、あとはリアリズムに徹して行動するしかないのです。

この本でとくに面白いのは、北朝鮮にかんする分析です。北朝鮮の究極の狙いは、米国に対する「核抑止力」を確立することで、コストのかかる通常兵力を削減し、予算の多くを経済発展に回したいという「インドモデル」(・・これは「中国モデル」でもある)があるのではないか、という見解が紹介されています。

なるほど!な見解です。目が開かれるような思いがしますね。となると、北朝鮮による ICBM発射実験は交渉戦術の一環と考えた方が理にかなっているわけです。

とはいえ、北朝鮮にとっての「核抑止力」の確立とは、北朝鮮の核が今後も消えることがないことを意味することになるわけですが、日米同盟が存在する限り、日本の安全は保障されるというのが著者のロジックとなるのでしょうか? 

この見解が正しいかどうかはさておき、読者にとっての「考える材料」として提供してくれるのは、軍事のリアリズムと同時に、政治経済も分析できる軍事アナリストしかいないでしょう。
  
もちろん、世の中には絶対に安全ということはありえません。「備えあれば憂いなし」。そして「人事を尽くして天命を待つ」。日本と日本人の安全を守るのは自分たちだという覚悟は不可欠。

そういったことを十分に承知したうえで、浮き足立つことなく、逆に不感症になることなく、冷静に考えることが必要。そための参考資料として、読む価値の高い一冊です。





目 次

はじめに 日本を守る最善の選択はなにか?
 日知米同盟が北朝鮮と中国を抑止する
第1部 世界最強の日米同盟
 米国は日米同盟を手放せない
 自主防衛は幻想である
第2部 北朝鮮vs.日米同盟
 1994年北朝鮮核危機の真相
 北朝鮮の軍事力の実像
 日・米・韓の「戦争力」と金正恩斬首作戦
 米朝チキンゲーム
 北朝鮮はインド、中国型経済成長を目指す
第3部 中国vs.日米同盟
 東シナ海で中国を抑え込む日米同盟
 南シナ海での米中衝突はあるか?
 中国の戦略は「三戦」と「A2/AD」



著者プロフィール

小川和久(おがわ・かずひさ)

軍事アナリスト。1945年、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕恵三内閣では野中広務官房長官とドクター・ヘリを実現させた。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

<関連本の紹介>

本書で言及されている『在日米軍-軍事占領40年目の戦慄-』(小川和久、講談社、1985)は、発売当時に読んで、それ以後の思考に大きな影響を受けた本だ。米軍の許可を受けて行った実態調査をまとめたリポートである。いま手元にはないが、重要な事項はアタマのなかに刻み込まれている。

また、本書の中国にかんする分析は、くわしくは中国の軍事力-台頭する新たな海洋覇権の実態-』(小川 和久・西 恭之、中央公論新社、2014)を参照。日米中の戦力を冷静に比較検討したリポートで、中国の「三戦」(=輿論戦・心理戦・法律戦)おなじく中国の「A2/AD」(=接近阻止・領域拒否 Anti-Access/Area Denial)について、より詳しい説明がある。





<関連サイト>

映画『ザ・デイ・アフター』(The Day After  1983年)( YouTube)
・・核ミサイルの落下と核爆発、わきあがるキノコ雲と爆風。パニックに陥る群衆。この映画が製作公開されたのは、いまだ米ソ冷戦時代のまっただなかであった。ことさら終末(ドゥームズデイ)意識の強いキリスト教保守派の多い米国人のイマジネーションの中にある核戦争はこういうものか? 

・・韓国が東京に向けて核ミサイルを発射するという、とんでもない映画。南北統一によって北朝鮮の核を手に入れたいという韓国人の密かな(?)欲望の現れか? 途中でまったく迎撃されないという設定が理解不能だが


<ブログ内関連記事>

書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している
・・日本防衛のための駐留が第一目的ではないとしても、米軍にとって日本列島がロジスティクス上の重要な位置づけである点は否定しようがない事実だ。大平洋からインド洋に欠けて展開する米軍にとって、日本に基地がなければ支障を来す

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

書評 『2020年日本から米軍はいなくなる』(飯柴智亮、聞き手・小峰隆生、講談社+α新書、2014)-在日米軍縮小という外部環境変化を前提に考えなくてはならない
・・シナリオとしてありえないわけではない

書評 『ビジネスパーソンのための世界情勢を読み解く10の視点-ベルリンの壁からメキシコの壁へ-』(森千春、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)-「冷戦後」の世界情勢を「現場」で読み抜いてきた国際報道記者の視点
・・朝鮮半島問題もテーマとしてかかわってきた国際報道記者による解説書

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・
・・「戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。」

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・この記事に掲載した各種資料を参照

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く
・・「中華秩序」を破壊したのが近代日本であったという事実。これはしっかりとアタマのなかに入れておかねばならない。琉球処分と日清戦争における日本の勝利によって、「中華秩序」は破壊された。だからこそ、中国の指導者は絶対に日本を許せないのである。」

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂聰、新潮社、2009)-「平成の林子平」による警世の書
・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・海は日本の生命線!




(2017年5月18日発売の新著です)


(2012年7月3日発売の拙著です)







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