2009年7月21日火曜日

書評  『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(西原理恵子著・装画・挿画、理論社、2008)-カネについて考えることはすごく大事なことだ!




■カネについて考えることはすごく大事なことだ!■

 カネについて考えることはすごく大事なことだ、と私はつねづね思っている。

 しかしそういうことを口に出すと、すべてをカネ、カネで考えるイヤなヤツだという誤解を与えてしまうこともあって残念だ。

 そんな誤解に苦しむ人にも、カネの大事さを身にしみて知り尽くしている漫画家サイバラのこの本を読むことをすすめたい。また読んでからぜひいろんな人にも推薦してほしい。

 カネになる漫画を書くことで、貧乏の「負のループ」から抜け出すことに成功したサイバラは、私なんかよりもはるかにうまく、具体的に説明してくれるはずだから。

 本田健の「小金持ち」とは趣が大きく異なる語り口だが、いわんとすることは同じである。

 カネを稼ぐということは、男女を問わず、人間として自立することだ。

 カネに使われないようカネを使うこと、つまりキチンとした金銭感覚をもつことは、人生そのものなのだ、と。

 サイバラはこの本の最後のほうで、マイクロクレジットによって貧困層の自立を支援している、バングラデシュのグラミン銀行の話を書いている。サイバラがねーというかんじもしたが、いやいやよくぞ触れてくれた、と思いたい。

 ところで、在日バングラデシュ人の起業家ユヌス・ラハマンも 『おカネを取るヒト 取られるヒト』(H&I、2005)という本で、カネの重要性と人間の生き方について書いている。
 これらすべてに共通するのは、人間としての「自立」そして「自律」である。

 「ロスジェネの叫び」が最近かまびすしいが、人間として生きる以上、「食わせろ」と声を大にする前に、道を開いて自分で食っていかねばならないのではないか?

 世界の最貧国出身のバングラデシュ人にできて、なんで日本人にできないというのだ!

 サイバラの漫画は絵がキタナイし、フキダシに手書きで文字がギッシリ書き込まれているから読みにくくてキライだ、という人には、「この本は漫画じゃなくて、活字がキチンと整列した単行本ですよー」と伝えておこう。

 とくに若い人たちに薦めたい本だ。若い人たちからこれ以上泣き言は聞きたくないから。


■bk1書評「カネについて考えることすごく大事なことだ!」(2009年7月21日掲載)

   




<ブログ内関連記事>

内村鑑三の 『後世への最大遺物』(1894年)は、キリスト教の立場に立つが「実学」と「実践」の重要性を説いた講演である
・・「後世へわれわれの遺すもののなかにまず第一番に大切のものがある、何であるかというと金(かね)です。・・(中略)・・金(かね)を遺すものを賤(いやし)めるような人はやはり金(かね)のことに賤しい人であります。吝嗇(けち)な人であります」(内村鑑三)

Bloomberg BusinessWeek-知らないうちに BusinessWeek は Bloomberg の傘下に入っていた・・・
・・西原理恵子の『太腕繁盛記』を取り上げている

シンポジウム:「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携 “Creating a World without Poverty” 」に参加してきた
・・バングラデシュのユヌス博士とグラミン銀行について

「三度目のミャンマー、三度目の正直」 総目次 および ミャンマー関連の参考文献案内
・・『どこへ行っても三歩で忘れる鳥頭紀行-くりくり編-』(西原理恵子/鴨志田譲/ゲッツ板谷、角川書店、2001 現在は文庫化 2004)を参考文献の一冊としてあげておいた


PS その後執筆した西原理恵子関係のブログ記事を「ブログ内関連記事として掲載することとした。 (2013年12月18日)









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