2009年10月18日日曜日

秋空の下、BBQを楽しむ joie de vivre(生きる喜び)




 昨日の土曜日、快晴とまではいかないが、薄日のさす秋の一日をBBQ(=Barbecue:バーベキュー)パーティで楽しんだ。

 同時期に求職中であった同世代のビジネスマンの友人S氏から、今後の生き方の方向性も決まったので会わないかという話があり、私は"毎日が日曜日ですよ"と答えたところ、急遽BBQへの参加の誘いをうけたという次第。

 S氏とはハノイで知り合った仲である。それまでベトナムには行ったことがなかったので、何かいいミッションでもないかとインターネットで探して見つけて飛び込みで参加した。S氏は証券業界の出身で、同じく広い意味の金融界出身という共通点から親しみを感じてきたが、今回のリーマンショックによる大不況で、何かしら同志のような気持ちを抱いたのは正直なところだ。

 さすがにこの年齢では再就職は難しいので求職活動はスッパリやめてしまい、人材派遣業を始めたという。面接で50人ほど会ったが、ある面接の場において、こんなオッサンの下で働くのはバカバカしい、と思った瞬間から再就職という幻想がすーっと消えていったという。これには私もまったく同感だ。日本のサラリーマンには、つまらない人間が多いのは否定できないから(・・まあどこの国でもつまらんヤツはつまらんのであるが)。つまらんヤツの下で働くのは、まことにもってつまらんものだ。人生のムダである。

 職業としてフリーの立場になれば、精神もフリーになるということだろう。私も、一昨日久々に会って飲食をともにしたTV業界の友人から、"以前より軽やかになったのが印象的だ"、というコメントをもらったばかりだが、組織を離れてフリーになると、変な気負いがなくなって精神も軽くなるというわけだな。金銭的には決してラクなわけではないのだが。
 
 私にとってはBBQは、昨年秋にバンコクでの遊び仲間たちと、タイのリゾート・アイランドであるサメット島で行ったBBQ以来である。

 BBQは炭火で焼くだけという実に簡単な調理法なのだが、この炭火で焼くというのが、素材そのものの味を引き出す上で絶妙の調理法なのだ。サメット島でのBBQは島の魚屋で仕入れたイカが実に美味かった。

 タイではBBQは非常に人気があり、ムーガタという業態が流行っている。火鉢に入れた炭火でひたすら魚介類や肉を焼いて食うのだが、ビール代は別にして食べ放題一人B99(≒300円)なんて店はファミリーやカップルで連日賑わっている。なんせエビ、カニが食べ放題というのはすごいのだ。
 
 実をいうと私は日本でBBQに参加するのは初めてである・・なんてハズはないのだが、久々の参加のような気がする。社員旅行では行ったような気もするが・・・

 米国にいたときはよくBBQパーティに参加したが、米国ではひたすらソーセージを焼いてホットドッグにして食べるか、ハンバーガーを焼いてバンに挟んで食べるか、あまり選択肢がない。見るからに"味めくら"な米国人たちの、きわめて米国的な存在として記憶に残っている。つまり、あまりいい印象をもっていないのだ。

 先にタイ人の話をしたが、BBQといったら何といっても韓国人であろう。米国でも韓流焼き肉店は Korean BBQ の看板で大いに繁盛しているだけでなく、韓国人留学生たちがアパートの玄関前で車座になって酒飲みながら焼き肉パーティをしている光景には唖然とした記憶があるのだ。日本人からみれば顰蹙(ひんしゅく)ものだといっても言い過ぎではない。酔っぱらうとすぐに踊り出す者もいる。公共感覚に乏しいのではないかね?

 米国から帰国してからは、ひたすらアジアを回る旅を続けてきたが、韓国では韓国人はハイキングにいっては紅葉の下でBBQをやっているのを目撃することとなった。

 日本人にとってのお花見やピクニックは、韓国人にとってはずばりBBQなのだろう。野遊びが変貌してBBQになっているわけだ。近代社会以前の優雅さのかけらもないが。しかし最近10年間の状況にについては知らない。


 今回のBBQの会場は、東京都と埼玉県の県境にある、埼玉県側のみさと公園(三郷市)である。いままでまったく知らなかったのだが、有料のBBQ専用スペースがあり、クルマでBBQ道具を持ち込んだ家族や仲間たちが一単位になってBBQを楽しんでいる。時間帯は9時から16時まで。いまの季節は日が暮れるのも早いから、終わる時間としてはちょうどいいのだろう。

 さて、BBQにおいては炭火をおこすのがまず最大の仕事である。炭が真っ赤になったら、あとはひたすら野菜を切って焼き、肉を焼くのみだ。牛肉はスライスしてかるから焼きやすいが、鶏肉は焼きにくい。しかし炭火でやいた鶏肉は地鶏ではなくても実に美味いものだ。タイの焼き鳥ガイヤーンを思い出す。岩牡蠣(いわがき)も焼くと海水を吸い込んでいるので調味料なしでもいい味を出している。野菜ではカボチャがうまい。ホクホク感がなんともいえない。


 焼き物もうまいが、BBQの楽しみは結局、青空の下で昼から酒を飲む、というこの一点に尽きるといってもいい過ぎではないだろう。われわれも、一人を除いて全員がまず何をさておきまずビールで乾杯、そこから先は怒濤のごとくひたすら飲み続けた。ビールに、紫蘇(しそ)焼酎、芋焼酎・・・・BBQ会場では4時間以上にわたって飲んでいたことになる。どれだけの量を飲んだのかよくわからない。肉を焼いているのだから赤ワインがほしかったな・・なんて無い物ねだりの贅沢な一言も。

 ギネス級の長寿番組「笑っていいとも」のタモリではないが、"友達の友達はみな友達だ"、というわけだ。飲めば自然に心が開く。あっというまに遊び仲間になってしまうのも、アルコールのもつ偉大なチカラである。

 S氏の友人たちも、独立して開業している人たちとその配偶者たちが中心で、空間プロデューサーのS氏、IT関連のK氏、デザイン会社のN氏もみな独立してやっている人たちだ。私はまだ開業はしていないが(・・そう遠くないうちに実行予定のハズ)、現在は"天下の浪人"、よくいえばフリーな立場なので、話が合うということもあるのだろう。もっともここ数年、とくに同世代のサラリーマンたちとは微妙に話が合わなくなっていたので、当たり前といえば当たり前だが。

 独立前はみなサラリーマンだったが、独立してからは、それぞれ自分が自分のボスになる。悪い意味のストレスがないわけだ。職業人としてのあるべき姿である。


 飲み始めたのが12時前から、BBQは閉園時間の16時過ぎには撤収、しかしこれで終わらないのが・・・というものだ。所用で帰宅したデザイナーの二人を除いて当然のように二次会となる。ここでも何杯ビールを飲んだか不明。そしてまたデザイン会社の社長N氏とは深夜の12時まで三次会で飲んでしまったのであった。なんとか武蔵野線の終電には間にあったが、そこから先は間に合わずタクシーで帰宅した。

 タクシーで帰宅なんて、会社やめてからは初めてだ。

 つまるところ半日以上飲み続けていたことになる。こんなに長時間飲み続けるのは、結婚式に招待された時くらいだろう。結婚式場で飲み始めると結局二次会、三次会で深夜まで飲み続けることになりがちだ。

 泥酔したわけではないのだが、本日はなんとかアタマは目覚めたものの、カラダが動かずに半分死んでいたようなものであった。ウコンを事前に飲むのをすっかり忘れてしまっていたのだ。本日になってからウコン錠剤を飲んだが、事後的にも効果がないわけではない。しかし何といっても予防医学が肝心だな、とつくづく思うのだった。

 本日は誰から何といわれようが休肝日、これだけは意志のチカラでやり抜かねば! 体内アルコール濃度を下げないと。

 晩酌でちびちびというのも悪くはないが、ときには豪快にガンガン飲むのもよい。なんといっても自然のなかで飲むのは最高だ。Yes, we really had a good time, didn't we ?
 
 こういうことをさして、フランス人は joie de vivre(=ジョワ・ドゥ・ヴィーヴル:生きる喜び)と表現する。今後も大いに人生を楽しんでゆきたいものだ。