(タイを代表する銘柄モンスーン・バレーの赤と白)
え、あの灼熱のタイで、と思われるだろう。しかも、あの低緯度で、と。
一般的に、ワイン作りに適した地理的条件は北緯(ないしは南緯)30から50度という定説があるが、タイのワイナリーは北緯15度前後に位置する。灌漑設備や冷却技術などの進歩や、ワインメーカーの努力によって、従来は常識と思われてきた限界が覆されてきたためといわれている。
タイのワインは、New Latitude Wine(新しい緯度におけるワイン)の一つとして注目され始めているとのことだ。
私は、タイでワインが作られているなんて全く知らなかったので、大いに驚き、また非常に興味を感じた。
タイワインの代表的な銘柄としては Monsoon Valley(モンスーン・バレー)、PB がもっとも知られているものである。バンコク市内のワインショップには必ず置いてある銘柄だ。
赤も白もある。ブドウの種類としては、土質の面から Malaga Blac、Colombard、Brunello、Black Muscat、Pokdum、Shiraz など。
タイワインは単独で飲むには少し味がきついかな、という気もするが、タイ料理などスパイシーで濃厚な料理と一緒に飲むと、十分いける味だとわかった。
なるほど、まさにタイのワインなのである。
タイ国内にはいくつかワイナリーがあるが、もっとも有名なのは観光パンフレットにもなっている、バンコクから南に1時間ほどにあるサムット・サコーンの水上ワイナリー(Floating Winery)であろう。畝と畝の間の水路を小舟で移動しながら剪定作業やピッキング作業を行う光景は、タイならではのものであるが、残念ながらそこには行く機会がなかったのだが・・・
ほかにはバンコクから北方面にあるカオヤイ、ローイなどにもあるが、こちらもいく機会がなかったのは残念なことだ。
国王陛下の離宮もあるタイ中部のビーチリゾート地ホアヒン(Hua Hin)に泊まりがけで遊びに行った際、ついでにホアヒン・ワイナリーを訪ねてみた。サムット・サコーンの水上ワイナリーと同じく、Monsoon Valley(モンスーン・バレー)のワイナリーである。
タイ湾に面したホアヒン市内からやや内陸部に入ったところにあるワイナリーは、ルート・ファインディングが思ったより大変で、たどりつくまでがなかなか大変だった。
やっとのことでたどり着いたワイナリーは、なんだか山梨県の甲府のようで、風光明媚な景色に、しゃれたレストランまで併設されたロッジ風の建物であった。昨年夏前に私たちがいったときはまだレストランは開店準備中だったのが残念だが、タイワインに合う料理はどんなものか想像してみるのも楽しいものである。
機会があればぜひ訪ねてみるのがいいだろう。数年以内にはホアヒン観光の目玉の一つとなっているはずだ。
タイワインは、日本のタイ料理店でも置いている店もあるので、試してみるとよいと思う。また、ネットのワインショップでも扱っているところが少なからずあるので、タイワインで検索して探してみたらいいだろう。2000円前後で買える。
なんと、驚くことに、タイワインはなんとタイ国内よりも、物流コストも加算されているはずの日本で買った方が安いのである!これは、ワインに対する"懲罰的"としかいいようのない酒税のためである。
タイでは、いまや庶民の酒となったビールだけは酒税がかなり低く抑えられているがが、日本酒や焼酎などの輸入酒、そして輸入品ではなく国産であってもワインに対する酒税は非常に高い。
そもそも仏教では酒を慎むべきなのであり、そしてまた実際問題としては、ビール業界に比べると市場規模が小さく、かつ奢侈品とみなされがちなワイン業界には、ビール業界ほどの"政治力"がないということなのだろう。
バンコクの金持ちは、オリエンタル・ホテルなどにある高級フランス料理店では、惜しげもなく高級輸入ワインを抜いている。まさしく庶民とはほど遠い世界の、タイ人にとっては西洋文明の象徴である奢侈品そのものなのである。20年以上前の、バブル期に入る以前の日本みたいなものなのだろうか。
タイにもワインがあるという事実、私自身もつい2~3年前まで知らなかった。案外と知られていない、タイの一面として紹介することとした次第。
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