2009年12月23日水曜日

日本人が旧ソ連の宇宙飛行船「ソユーズ」で宇宙ステーションに行く時代




(宇宙飛行士ガガーリン像の前に立つ筆者 極東ロシアにて)

 ここのところ、TVのニュース番組では、ソユーズ、ソユーズと連呼している。宇宙飛行士の野口聡一さんが、今回は米国のスペースシャトルではなく、ロシアの宇宙飛行船「ソユーズ」(!)を使って、国際宇宙ステーションに向かったためだ。

 報道によれば、本日ソユーズは国際宇宙ステーションとのドッキング(・・なつかしい響きだ!スカイラブを思い出す)に成功し、野口さんは国際宇宙ステーションに移動したとのことである。サンタクロース姿の野口さんが地球にメッセージを送っていた。

 まずは目出度いことである。何よりも安全に飛行できたことは目出度いことだ。これから五ヶ月間の宇宙滞在、本人にとってはこのミッションは楽しいかもしれないが、関係者や地球上の家族を含め、ご苦労なことである。

 宇宙空間(・・この「宇宙空間」という漢字熟語はまったくのトートロジー(同語反復)だな、英語だと宇宙も、空間も space だ)での時間感覚は、いったいどのようなものなのだろうか。

 来年以降周航するという、英国のリチャード・ブランソン率いるバージン・グループによる宇宙旅行(Virgin Galactic)、日本人でも金持ちが搭乗するようだが、どのような感想を述べるのか、楽しみである。

 私が宇宙にいくことは、カネのない私には、まず無理だろうから。子供の頃は21世紀になったら自由に宇宙旅行にいけるようになる(!)なんていう未来予測があったのだが、大幅に遅れているなあ。

 日本人が「ソユーズ」という宇宙飛行船、実はロシア語では「サユース」という。サヴィエツカヤ・サユース、これはソ連という意味だが、そのサユースである。ロシア語では Союс、おそらくローマ字で Soyuz と音を転写したので、そのまま文字通りローマ字読みで「ソユーズ」となて今日に至るのだろう。ロシア語では語頭にくる o のは a と発音することが大半だ。

 今回、野口飛行士が「ソユーズ」で行く理由が、米国のスペースシャトルが来年退役という理由のほかに、「ソユーズ」がこの38年間無事故だから今回搭乗した、というのも驚きだ。

 なぜかといって、ほぼすべてが理科少年であった、われわれの小学生時代、「実はソユーズでひとが死んでるんだぜ!」というウワサが広がっていたからだ。ソ連時代のことゆえ情報開示はなく、真相は不明のままだった。現在では死亡事故の存在は明らかになっている。
 こういう不幸な事故から得た教訓で、以後38年間(!)「ソユーズ」は無事故だという。ロシアの底力を見せられる思いである。

 また、「ソユーズ」搭乗のため、野口さんはロシア語を特訓したというのもすごい。目的遂行のためには、人間はなんでもできるものなのだ!必要がなければロシア語をやる人間はあまりいないだろう。 

 しかし、あの風貌でロシア語をしゃべったら、打ち上げ基地バイコヌールのあるカザフスタンなら、キルギス人と間違われるだろう。モスクワにいたらブリヤート・モンゴル人と間違われるだろうなあ。


 「地球は青かった」という名言をのこしたガガーリン少佐
 「私はかもめ」(ヤー・チャイカ)というコトバを残した女性宇宙飛行士テレシコワ

 月面着陸に成功し、月の石を持ち帰ったアポロ計画と併走していたソ連の宇宙開発。

 高校生になってからは、米ソによる宇宙開発は実は軍拡競争だったのだと知ったが、小学生時代はそんなことはつゆ知らず興奮して少年たちは語り合っていたものだ。

 そんな時代の少年であった私は、出張で1998年極東ロシアのコムソモリスク=ナ=アムーレという、ソ連時代に開発された都市にいったとき、案内してくれたロシア人の説明で、ガガーリン少佐の巨大銅像があることを知り、実際に見てさわることができてうれしかった。

 写真はそのとき撮影したものである。日本風に銅像にまたがって写真を撮ってもらおうとしたら、ロシア人からはえらくたしなめられた。ソ連崩壊から何年もたっても、ガガーリン少佐はソ連の英雄だったためなのだろうか。それとも単なるマナー違反だったのか。

 コムソモリスクはコムソモール(共産主義青年団)からきたコトバだからだろうか、戦闘機スホーイの工場のあるその都市は、ソ連時代の生きた化石のような町であった。


 ひさびさに少年時代の夢と興奮を思い出させた、日本人・野口飛行士の「ソユーズ」による、国際宇宙ステーション行きであった。

 日本人が「ソユーズ」で何人も宇宙にゆくようになる時代、これは米国べったりの時代が続いてきたこの30年間、まったく想像することさえできないことであった。
              





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