2010年5月26日水曜日

書評 『日本力』(松岡正剛、エバレット・ブラウン、PARCO出版、2010)-自らの内なる「複数形の日本」(JAPANs)を知ること




自らの内なる「複数形の日本」を知ることで、未来への展望が開けてくるはずだ

 迷走する現代日本、この状態はまだまだ続くだろう。しかしまだ日本は可能性をまったく喪失したわけではない。

 廃れかかっていたと見えた「日本力」(にほん・りょく)は、いったいどこに、どのような形で存在するのか、それに気がつかせてくれるのが、「異人」の存在である。

 「異人」の観察によって拾い上げられた何気ない指摘は、日本人がすっかり忘れかけてしまっていた「内なる日本」を見つめ直すことを可能にする。そしてそれは一つだけではないのだ。多様な、複数形の日本(JAPANs)なのである。

 この本は、在日20年の "現代のフェノロサ" である「異人」写真家と、"知の巨人" である「日本人」編集工学の泰斗が、「複数形の日本」について交わした対話の記録である。というよりも、写真家エバレット・ブラウンが、写真として切り取って見せてくれた現代日本と現代の日本人を、どう読み解いたらいいのかについて交わされた対話記録、といってもいいだろう。

 カラーで収録された複数の写真と、それに付された、松岡正剛がこれまで書いてきた日本についた書かれた文章の抜粋。そして、対談をあわせて読み進めていくうちに、日本人の「内なる複数形の日本」が、自ずから読者のなかに目覚めてくる内容の本になっている。

 たとえばこんな対話がある(P.258)。

松岡:(前略)・・日本とほかの地域の文化や民族と比べると、一番の違いは何だと思いますか?
ブラウン:すぐに思い浮かぶのは、日本人は温泉のようにポカポカしているということです(笑)。

 んっ、さて、その心は?? それは、読んでのお楽しみ。 
 
 現代日本が抱える問題に苦言を呈するだけでなく、可能性をみつけだそうというポジティブな精神のあり方が全編を貫いている。

 涸れたかにみえた「日本力」は、いまは地下水として流れているのだと思えばいいのだ。写真家は、あとがきで、「日本の若い人たちは、いま、地上に出てくる湧き水を求めているように思います」といっているが、その「湧き水」のありかと中身について知りたければ、この本を一読してみるといいだろう。

 もちろん、若い人たちだけでなく、すでに若くない人たちも、読めば自己発見できる本だといえる。
 
 過去を深く知れば、おのずから未来の展望は開けてくるはずなのだから。



■amazon書評「自らの内なる「複数形の日本」を知ることで、未来への展望が開けてくるはずだ」投稿掲載(2010年2月26日)
■bk1書評「自らの内なる「複数形の日本」を知ることで、未来への展望が開けてくるはずだ」投稿掲載(2010年2月26日)





<書評への付記>

 松岡正剛についてはあらてめて説明するまでもない。「編集工学」(editorial engineering)の提唱者で、その大家である。

 「千夜千冊」をご覧になっていただきたい。その博覧強記ぶりは、ほとんど知の巨人、いや超人の域にあるといっても過言ではないだろう。

 あたらしいシリーズ「連環篇」では、現在はリスクやマネーなど資本主義の問題を連環して、本の紹介をつづけているので、ビジネスパーソンも見る価値はある。

 それ以上のことは、あえて書くのはやめておこう。キリがないので。
 

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