『水木しげるの古代出雲』を先週やっとゲットしました。アマゾンでは品切れが続いていて、なかなか入手できなかったので、別のネット書店で購入。正直にウレシイ。到着したその日に一気に読了。
水木しげるの夢枕に現れては、古代出雲のことを、「早く描け、早く描け」とけしかけてきたという古代出雲の青年。この話はTVのインタビューで語っているのを聞いたことがありましたが、マンガを完成したことによって、夢には現れなくなったのだ、とか。このことはこのマンガのなかにも書き込まれています。
出雲大社の勢力圏のにある島根県境港市出身の水木しげる先生。もともと武良家(・・水木しげるの本名は武良茂)は、隠岐の島から島根に移住したらしい。
隠岐の島は、本州からみれば「離島」という位置づけになります、大陸との海路の中継点にあって、大陸からの影響が強いようです。現在は連絡船で結ばれている荒海の玄界灘にくらべて、隠岐の島の日本海のほうが波が穏やかだから、ということなわけです。
東京都調布市で島根県境港市を思い、境港からは隠岐の島、そして大陸を思う。まさに、母(なる故郷)を思って「哭きいさちる神=スサノヲ」そのものではないですか。
マンガの内容は、言うまでもなく、文字どおり出雲神話をマンガにしたもの。
ただし、『古事記』や『日本書紀』といった、公式な神話だけではなく、現存する数少ない風土記の一つである『出雲風土記』やその他異本にも基づきながら、独自の出雲世界をマンガとして水木ワールドの一冊本に描き上げたわけですね。
古代出雲族が天孫族に「国譲り」したという美談が公式な神話ですが、そんなキレイ事ではなく、戦った末に敗れ去ったが実態に近かろう、と。
古代出雲族はすごかったのがというのが、水木しげるなど出雲派の世界観です。オオクニヌシは地下世界(=根の国)の主となるのと引き替えに、出雲大社が造られたわけですね。。
いわばオルタナティブ史観というか、神話観といっていいでしょう。出雲系神話は、明治維新の際にも大きな衝突となった事件でもあります。これは、政治学者の原武司の『<出雲>という思想』(講談社学術文庫、2001)で、詳細に解説されています。ただし、マンガにでてくるのは、哲学者の梅原猛です。
じっさいに考古学的な発見によって、古代の出雲大社が机上で復元されていますが、現在のものよりもはるかに大きな高層建築であったことが明らかです。
このテーマは、水木しげるにとっては、子どもの頃からですから、なんと80年(!)という長年の懸案事項であったとのこと。ようやっと、ここに解決したということであったようです。一件落着。
オオクニヌシの支配の及んだ日本海側の京都府舞鶴市生まれのわたしにとっても、今回のマンガ完成は、うれしい快挙であります。
増刷されてもすぐに売り切れになってしまうこのマンガ、みなさんもぜひ!
目 次
プロローグ
第1章 天地創世
第2章 アマテラスとスサノオ
第3章 出雲神話
第4章 オオクニヌシの試練
第5章 スクナビコナとオオモノヌシ
第6章 アメノヒボコ襲来
第7章 国譲り
第8章 謎の出雲青年
第9章 出雲大社造営
エピローグ
参考文献
水木先生と出雲(岡宏三 古代出雲歴史博物館専門学芸員)
著者プロフィール
水木しげる(みずき・しげる)
漫画家・妖怪研究家。1922(大正11)年、鳥取県境港市出身。南方戦線での従軍経験の後、紙芝居、貸本漫画などを執筆。1965年、「週刊少年マガジン」に連載した「墓場の鬼太郎」(のちに『ゲゲゲの鬼太郎』と改題)は代表作となり5度TVアニメ化。2007年、『のんのんばあとオレ』によりフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞。2010年、文化功労者に選出される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
PS 2015年6月に角川文庫より文庫版が出版 (2015年7月19日 記す)
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水木しげるの「戦記物マンガ」を読む(2010年8月15日)
・・妖怪モノ以外の戦記物は、水木しげるマンガの真骨頂である
マンガ 『ビビビの貧乏時代-いつもお腹をすかせてた!』(水木しげる、ホーム社漫画文庫、2010)-働けど働けど・・・
(2014年5月27日 情報追加)
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