17日間にわたって熱戦が繰り広げられたロンドン・オリンピックも、ついに8月12日(日本時間13日)に閉会式を迎えて無事、すべての日程を終了しました。
1972年に開催された40年前のミュンヘン・オリンピックでは、パレスチナゲリラによってイスラエル選手団が射殺されるという惨事がありましたが、警戒されていたテロも発生することがなかったことに、ほっと胸をなで下ろしている関係者もすくなくいないと思います。
日本代表チームも、1996年のアトランタ・オリンピック以来というメダル38個(!)を獲得するという偉業を達成しました。金メダルが目標数値に達しなかったとはいえ、これは快挙というべきでしょう。
日本と日本人にとっては、なんといっても4年に一度のオリンピックが最大の目標であり、最大の関心事でありますが、スポーツ種目や国によってはかならずしもそうではありません。
もっとも知られているのはサッカーでしょう。
サッカー(=フットボール)は、言うまでもなくオリンピックよりもワールドカップのほうがはるかに重要です。もちろん、オリンピックでの勝利も賞賛されますが、サッカーファンや選手にとっては、FIFAワールドカップのほうがはるかに高い位置づけをもっています。
これはラグビーも同様ですね。
一方、特定の国や地域からみると、オリンピックよりも地域単位のスポーツ大会のほうが位置づけが重要だというケースもあります。
たとえば、アジア地域で開催されるアジア大会。日本や中国、韓国のようなアジアの先進スポーツ大国はオリンピックでも好成績を残してきましたが、それ以外のアジア諸国は残念ながらスポーツの分野においては世界レベルの強豪分野はあまり多くありません。
そのため、アジア大会での勝利に目標をしぼっている国も多々あるというわけです。韓国も、じつはむかしはオリンピックよりも、確実に勝てるアジア大会を最重要視していた時期があったことは、あまり知られていないかもしれません。
また、英国を中心とした英連邦(コモンウェルス)で開催されるコモンウェルス・ゲームというものがあります。
よく知られているとおり、近代オリンピックはフランスのクーベルタン男爵がスポーツ王国である英国での体験をもとに提唱したものでした。したがって、オリンピックは現在でもフランス語が第一言語で英語は第二言語という扱いです。
英国にとって政治的に重要なのはコモンウェルス・ゲームのほうなのです。
その理由はあきらかでしょう。英連邦は、大英帝国が終焉したあとも「見えざるネットワーク」として機能しているのであり、その「きずな」や「つながり」を維持するうえで大きな役割を果たしているのがコモンウェルス・ゲームであるわけです。
コモンウェルスとは英語で書けば Commonwealth、分解すれば common wealth ですから、日本語に直訳すれば「共通の富」ということになります。政治的経済的な共通利害によって結ばれた連邦という性格をもっています。
この件については、『「近代スポーツ」からみたイギリスとイギリス連邦』と題して、オリンピック開始前の 2012年6月13日にインターネットTV「原麻里子のグローバルビレッジ」でしゃべりました。
フランス生まれの「近代オリンピック」とイギリスの関係は? 英連邦でもっとも愛好されているスポーツは? など、スポーツにかんする「引き出し」がいっぱい増えるような、面白くてためになる内容になっていると思います。
スポーツを立体的に楽しみたい方、英国についてもっと知りたい方、インドや東南アジアについてしりたい方は、ぜひオンデマンドで無料ですので、ご試聴いただければ幸いです。
YouTubeに録画がアップされてます。オンデマンドで無料(フリー)ですので、お好きな時間にご試聴ください。
http://www.ustream.tv/recorded/23284174#utm_campaign=t.co&utm_source=23284174&utm_medium=social
当日使用したスライドを下記サイトにアップしてありますので、ご関心のあるかたはご参照ください。 https://docs.google.com/file/d/0BwLpyF-Aru_kX2ZmZFdnMC1lejQ/edit
「引き出し」を増やす方法として、スポーツを勝敗や感動といった要素だけではなく、ひろいコンテクスト(=文脈)のなかにおいてみるということも重要でしょう。
そのための一助となれば幸いです。
<ブログ内関連記事>
書評 『人種とスポーツ-黒人は本当に「速く」「強い」のか-』(川島浩平、中公新書、2012)-近代スポーツが誕生以来たどってきた歴史的・文化的なコンテクストを知ることの重要性
書評 『コリアンスポーツ<克日>戦争』(大島裕史、新潮社、2008)-韓国のナショナリズムと国策としてのスポーツ立国
書評 『大英帝国という経験 (興亡の世界史 ⑯)』(井野瀬久美惠、講談社、2007)-知的刺激に満ちた、読ませる「大英帝国史」である
ボリウッドのクリケット映画 Dil Bole Hadippa ! (2009年、インド)-クリケットを知らずして英国も英連邦も理解できない!
書評 『ポロ-その歴史と精神-』(森 美香、朝日新聞社、1997)-エピソード満載で、埋もれさせてしまうには惜しい本
(2012年7月3日発売の拙著です)
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ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
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