一週間まえになるが、先週木曜日(2012年10月11日)、GRIPS(政策研究大学院大学)で開催された特別講演会 「インドネシア経済の展望」に参加してきた。
講演者は、アルミダ・アリシャバナ国務相(国家開発計画担当)・・インドネシア国家開発企画庁長官。ちょうど10月9日から14日まで、48年ぶりに日本で開催されたIMF世界銀行総会のため来日していた国務相によるプレゼンテーションであった。
開催概要は以下のとおり。
【開催概要】
■ 演題: “Indonesian Economic Outlook”(インドネシア経済の展望)
■ 日時: 10月11日(木) 10:00~12:00(受付:09:30-)
■ 場所: 政策研究大学院大学 想海楼ホール
■ 言語: 英語(日本語同時通訳あり)
■ 講演者: アルミダ・アリシャバナ国家開発計画担当国務相/インドネシア国家開発企画庁長官
1960年西ジャワ州バンドン生まれ。インドネシア大経済学部卒。米国ノースウェスタン大で経済学修士、ワシントン大で経済学博士。国立パジャジャラン大学経済学部教授を務めた。専門は財政、経済開発、教育経済、マイクロ計量経済。アジア開発銀行や世界銀行、豪州国際開発局、国際協力銀行(JBIC)などでコンサルタントを経て、2009年より国務相(国家開発計画担当)及び国家開発計画庁(バペナス)長官を兼任。
なんといってもインドネシアの国家経済開発の責任者による特別講演である。しかも経済学博士号をアメリカで取得した人である。博士号取得者が大臣にはほとんどいない日本とは違って、アジアでは高学歴の専門家が多い。例外は、小泉政権時代の竹中大臣(当時)くらいか。
講演はスライドを多用したプレゼンテーション形式で、すべて英語で行われた。インドネシア語のクセのある英語だが、聞き取るのにそれほど困難はない。
講演の内容は、基本的にいま注目のまとであるインドネシア経済の現在を中心に、過去を振り替り、未来を展望するといったものである。
項目は大きくわけて以下の3つであった。
1. 良好なマクロ経済ファンダメンタルズ(Good Macro Economic Fundamentals)
2. インドネシアの長期開発計画 2005~2025年(Indonesia's Long-Term Development Plan)
3. 機会と将来課題(Opportunities and Future Challenges)
政策当事者の発言であるだけに慎重なものであったと思うが、それでも、GDP規模で現在7,000億USドル、一人当たりGDPで3,000USドルのインドネシア経済が、2025年には、それぞれ GDP 4~4.5兆USドル、一人当たりGDP 14,250~15,500USドルと、約6倍近くに拡大し、世界第12位(!)の経済規模になるという予測がなされていることには驚かされる。
また、2045年には、2025年規模のさらに4~5倍に経済が拡大し、GDP規模で世界第8位(!)の経済になるというのだからスゴイものだ。
さきの9月に発表されたマッキンゼー・レポートでは、2030年には世界第7位の経済になると予測していることと比べると、やや保守的な数字かもしれないが、それでも驚異的である。詳しくは、The archipelago economy: Unleashing Indonesia's potential(McKinsey Global Institute)を参照。
インドネシア経済躍進の秘密は、人口動態と内需中心の経済構造にあることが、この特別講演会でも指摘されていた。 現在 2.4億人の総人口は、2050年には3億人に増加すると予測されており、しかも労働人口が減少に転じるのはまだまだ先のことである。いわゆる「人口ボーナス」の恩恵を今後もうけるわけだ。
あまり細かい話はしないが、経済規模ではすでに世界第2位の中国が、依然として内需中心の経済ではないことを考えると、インドネシアのポテンシャルの意味も理解されようというものだ。
1997年のIMFショック以降、経済だけでなく政治的にも混乱に陥ったインドネシアだが、すでに政治的には安定し、成長軌道に入っていることは十分に認識すべきだろう。
製造業にとっての生産拠点としてだけでなく、巨大なポテンシャルをもった成長市場としてインドネシアを考える必要があるのだ。
<関連サイト>
アルミダ・アリシャバナインドネシア国務相・国家開発企画庁長官: 特別シンポジウム“Indonesian Economic Outlook”
The archipelago economy: Unleashing Indonesia's potential (McKinsey Global Institute)
インドネシアの人口 (見事なまでに右肩上がり)
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