広島では、セミナーに出席してただいた呉市生まれの人と知り合いになった。当然のことながら、話は「舞鶴 vs 呉の肉じゃが論争」になる。なぜなら、わたしは京都府舞鶴市生まれだから(笑)。
明治時代、開国後の日本は海軍整備のため全国を踏査し「鎮守府」を設定した。東から横須賀(神奈川県)、舞鶴(京都府)、呉(広島県)、佐世保(長崎県)の4つの軍港である。敗戦後の海上自衛隊になってからは大湊(青森県)にも開港されたが、4つの軍港で海の護りを担ってきたわけである。
その舞鶴の初代鎮守府長官となったのが東郷平八郎元帥である。このあと日露戦争でバルチック艦隊を殲滅して世界の海戦史に名を残したことは誰もがしっていることだ。
肉じゃがにかんしては、ちらが発祥の地であるかは決着がつくことはなさそうだが、海軍という共通項で交流がつづくのは喜ばしいことだ。ただし、舞鶴が「シベリア引き揚げ者」というロシアを意識したやや暗いイメージ(?)があるのに対し、呉には「戦艦大和ミュージアム」があって世界に冠たるとうイメージはまぶしいものがる。
というわけで、前置きが長くなったが、海軍と料理にかんする文庫本を2冊紹介していきたい。
まずは、『帝国海軍料理物語-肉じゃがは海軍の料理であった』(高森直史、光人社NF文庫、2010)。この本の著者は、料理の専門学校と自衛隊幹部候補生学校を卒業して、舞鶴地方総幹部経理部長を歴任した元一等海佐。肉じゃがのルーツを旧海軍料理書から発掘した功労者である。
肉じゃがが海軍で生まれた料理であることは、舞鶴市民と呉市民にとっては常識だろうが、それ以外では必ずしも知られていないかもしれない。いまだに「肉じゃが」をつくれば男は喜ぶと思い込んでいる女性も少なくないようだが、さすがにそこまでは知らないだろう。
肉じゃがは、もともとは英国海軍のビーフシチューを日本化したものらしい。肉じゃがとビーフシチューでは似て非なるものという感じをぬぐえないが、洋食を和風に変換した才能は賞賛すべきだろう。詳しくは本を直接よんでいただきたい。
つぎに、『絶品!海軍グルメ物語-すぐに作れる40のレシピ-』(平間洋一/高森直史/齋藤義朗 、新人物文庫、2010)。上記の『帝国海軍料理物語』の著者・高森直史も執筆者の一人となっている本。こちらは、じっさいに海軍料理をつくってみたい人のためにレシピも掲載されているが、それよりも日本の食文化の近代化において海軍がいかに大きな役割を果たしたかをしることができる。
海軍というと、「民主的」であった陸軍とは違い、海軍士官はナイフとフォークで洋食を食べていたというイメージが大きいが、下士官と兵は日本料理としてのいわゆる「洋食」を食べていたのである。
肉じゃがについてはすでに書いたが、それ以外にもカレーライス、オムライス、コロッケなど「洋食屋さんのメニュー」は海軍で開発され、日本全国に広まったものが多いのだ。いわば「食の明治維新」を先導したわけである。この本には、舞鶴と呉以外の横須賀と佐世保についても「海軍グルメ町おこし」について触れられている。
レシピ集としては、以前このブログでも紹介したことのある『海自レシピ お艦の味-元気が出る!安くて美味しい力めし-』(海上自衛隊協力、小学館、2010)が全ページがカラーでいい。はじめには、戦場カメラマンの不肖・宮嶋が書いており、笑わせてながら読ませてくれる文章になっている。
舞鶴航空基地隊のレシピとして「洋風肉じゃが」が紹介されている(P.88)。「海自伝統の味を洋風にアレンジ」とあるが、ビーフシチューをヒントにつくられた肉じゃががさらび洋風化されてもビーフシチューとは似て非なるものとなっているのが面白い。
最近は「料理男子」という表現もあるそうだが、職業として料理をつくる人は圧倒的に男が多いのは、陸上の民間向けの飲食店だけでなく、海上や海中の海上自衛隊においても同じである。
5年前のことだが、呉にも江田島にも行ったことがある。江田島には海上自衛隊の幹部候補生学校があるが、いうまでもなく帝国海軍以来のものである。
江田島で海軍カレーを食べた。写真では何のへんてつもないカレーに見えるだろうが、これが「海軍カレー」である。違いについては、よくわからなかったのは、わたしの舌の問題であろう。
(江田島の海軍カレー)
海軍カレーというと横須賀も「よこすか海軍カレー」はレトルトパックでも売っているが、海軍の街どうしが、町おこしとして、競い合いつつ交流を深めていくことはたいへんよいことである。
まいづる肉じゃがまつり実行委員会
イギリス料理 肉じゃが Meat and Potato Stew | EIKOKU GO
・・この英国料理が日本の肉じゃがの元祖だという説がある。味は肉じゃがとそっくりだそうだ。
(2017年10月14日 情報追加)
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・・『海自レシピ お艦の味-元気が出る!安くて美味しい力めし-』(海上自衛隊協力、小学館、2010)について紹介。とくに潜水艦乗組員にとっては三度の飯が何よりも楽しみである。しかも時間感覚を狂わせないために三度の飯を定時にたべさせるのである、と。わたしも一週間以上つづくシベリア鉄道に乗ってみたことがり、その感覚は理解できる。
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「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行
(2014年6月11日 情報追加)
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