2013年3月16日土曜日

書評『飛雄馬、インドの星になれ! ― インド版アニメ 『巨人の星』 誕生秘話-』(古賀義章、講談社、2013)― リメイクによって名作アニメを現代インドで再生!



『巨人の星』がインドでリメイクされるらしい、という情報を知ったのは昨年のことである。

『巨人の星』というアニメ(・・当時は「テレビまんが」といっていたと思う)をリアルタイムで見ていた世代なら、違和感なく受け止めたのではないだろうか。『巨人の星』は、あまりにも熱い、熱すぎるほど熱いドラマだからだ。

主人公の星飛雄馬(ほし・ひゅうま)は、貧しい三人暮らし。母親は亡くなり、日雇労働者である一徹という名の頑固者の父親と明子という姉がいる。父親の星一徹はジャイアンツの元選手で息子をスパルタ教育で徹底的にしごいて一流の野球選手として育成するというストーリー。まさに高度成長期のスポ根ドラマである。スポ根とはスポーツ根性の略だ。

生徒会長もつとめる中小企業経営者の息子・伴宙太という盟友。宿命のライバルとなるのは、おなじく中小企業の金持ち坊ちゃんの花形満。多くの弟妹をかかえ主人公以上に貧しい家庭の左門大作。そこにあるのは、まさに格差社会そのものである。

だから、『巨人の星』がインドでリメイクされるという話を聞いて、日本以上に壮絶なまでの格差社会である現在のインドでも十分に可能だろうなと思ったわけなのだ。

『飛雄馬、インドの星になれ!-インド版アニメ 『巨人の星』 誕生秘話-』(古賀義章、講談社、2013)は、『巨人の星』をインドで放映するという夢を実現させたビジネスパーソン自身の手になる手記である。ビジネス・クリエーションの物語でもある。

2012年12月23日より、『巨人の星』のリメイク版 『SURAJ The Rising Star』(スーラジ、ライジング・スター)がインドで放映開始された。毎週日曜ゴールデンタイムの放送だという。

アジアで圧倒的な人気を誇る 『ドラえもん』などは、セリフを現地語に吹き替えるだけで、主題歌は日本語のまま(!)で放映されている。だが、残念ながら『巨人の星』で中心テーマとなる野球はアメリカや中米諸国、日本を中心とした東アジアでしか行われていない。

インドではなんといってもクリケットなのだ。だから、インド人に受け入れられるために主人公をクリケット選手にすることであった。文化マーケティングは、ローカライズは避けられないのである。そして人口規模の規模の大きなインドをメインターゲットにすることによって、クリケットがさかんな英連邦諸国での展開も視野に入ってくる。




著者は、講談社の雑誌 『クーリエ・ジャポン』の初代編集長。2009年2月号の特集「"日本人化"するインド人の暮らし」(上掲写真)はわたしはいまでも保存しているが、著者にとっては「編集者生活にとってのピリオド」となるものだったらしい。なぜなら、著者は大学時代にインドに長期滞在して以来のインドびいきなのであった。インド好きをなんとかビジネスに結び付けたいという夢があったのだという。

『巨人の星』の版権は勤務先の講談社がもっているので実現しやすい環境にあったことはあるだろう。だが、この一大プロジェクトを発想し、構想し、実現までもっていくのがいかにたいへんなことであったか、その発端と前史から実現にいたるまでをつづった本書を読むとそれが実感される。

日本サイドのプロジェクト推進体制構築、日本とは異なるインド現地のアニメ製作現場との激しい議論、困難を極めたスポンサー獲得交渉など、なんども挫折しかけながらの難産であったのだ。最終的には、自動車メーカーのスズキや全日空などをはじめとして現地に進出している日本の大企業がスポンサーとなった。

願わくば、インド版『巨人の星』が成功することを! これが日本企業によるインドビジネス成功の試金石にもなるからだ。まずは、本書によって現在進行形のビジネスストーリーの前史を知っておきたいものだ。


(画像をクリック!)


目 次

はじめに
第1章 見切り発車で始まったプロジェクト
第2章 いつかこの地で―インドでの誓い
第3章 飛雄馬をクリケット選手に
第4章 崖っぷちからの逆転
第5章 大リーグボールと、ちゃぶ台返し
終章 今始まる『ライジングスター』による挑戦
おわりに

著者プロフィール    

古賀義章(こが・よしあき)1964年、佐賀県生まれ。1989年、明治大学卒業後、講談社入社。『週刊現代』編集部、『フライデー』編集部を経て、2001年渡仏。2004年、『クーリエ・ジャポン』創刊編集長に就任。現在、国際事業局担当部長としてインド事業を担当。インド版アニメ『スーラジ ザ・ライジングスター』のチーフ・プロデューサーを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

「巨人の星、インドで人気の理由講談社の仕掛け人、古賀義章氏に聞く」(東洋経済オンライン 2013年2月26日)

日本クリケット協会(公式サイト)


SNEAK-PEEK: EPISODE-1 #SURAJ - THE RISING STAR(インドでの放映先 Colors のサイト。なお Colors はアメリカのViacom傘下)

『巨人の星』オープニング(Dailymotion)



<ブログ内関連記事>

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・・このブログ記事は、この放送でしゃべったものベースに加筆修正したものです。

⇒ YouTubeに録画がアップされてます。オンデマンドで無料(フリー)ですので、お好きな時間にご試聴ください。放送を視聴していただくと、情報量も多いので、よりいっそう理解しやすいかと思います。
http://www.ustream.tv/recorded/23284174#utm_campaign=t.co&utm_source=23284174&utm_medium=social 

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