2013年7月20日土曜日

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行


「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加してきた。NHKの情報番組で取り上げられていたのを見て、はじめてそういうクルーズがあることを知った。これはぜひ参加したいと思って、さっそく実行に移すことにした次第だ。

横須賀にいくのは21世紀になってからは初めてだ。1980年後半に三浦半島でのダイビングのついでに三笠公園で船艦三笠を見て以来なので、すでに20数年も前のことである。

今回はJR横須賀線でいくことにし、横須賀駅で下車することにした。千葉県から横須賀にいくには、総武線快速と横須賀線が接続しているので直通列車があって便利だからだ。

ひさびさにきた横須賀はまさに軍港だ。とくにJR横須賀駅で下車すると、駅前がすぐ港になっているだけでなく、日本の軍艦が停泊しているのを間近で見ることになるのでその感をつよくする。ただし、今回はセーラー服の水兵の姿は見ることはなかった。

横須賀は日本の海上自衛隊だけではなくアメリカ海軍の軍港でもある。その点においては佐世保もそうなのだが、佐世保港には行ったことがないので実感をもって語ることができないのは残念なことだ。

京都府舞鶴市生まれのわたしは、もちろん舞鶴軍港にはなんども行っているし、広島の呉軍港もいったことはある。あとは佐世保軍港にいけば、日本の主要な軍港はすべて訪れたことになる。舞鶴は基本的に海上自衛隊と海上保安庁の軍港であるが、子どもの頃、寄港していたアメリカの軍艦に乗船したことがある。

(横須賀市内の米軍軍人むけ不動産屋 筆者撮影)

今回、ガイドの説明を聞きながら45分間の「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに乗船して感じたのは、横須賀はやはりアメリカの軍港なのだなということだ。もちろん、大日本帝国海軍以来の軍港であり現在も海上自衛隊とアメリカ海軍が共同で使用している軍港なのだが、圧倒的にアメリカの存在感が大きいのだ。

(米軍施設は立ち入り禁止 筆者撮影)

アメリカ海軍の基地とその周辺には、なんと海軍関係者が家族もふくめて2万人(!)も居住しているという。

なにごとも「現地」を踏んでみなければわからないことは多い。この数字も「現地」で聞いたからこそ実感がある。2万人というのはハンパな数ではない。横須賀市の総人口は41万人強であるから、ざっと5%ちかくがアメリカ人ということになるわけだ。

(クルーズは汐入埠頭から出発 筆者撮影)


「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズ乗船記

さて、本題の「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに戻るが、今回のクルーズ平日の13時に予約しておいた。

なお、2013年8月末日までは横須賀ドル祭りを開催中なので、クルーズのチケットも米ドルで購入することができる。US1.00=JPY100 の固定レートによる換算なので損することはないはずだ。

(パンフレットより 赤線がクルーズの航路)

クルーズの所要時間は45分間。日米のイージス艦、日本の潜水艦、米国の油槽艦などをじっくり観察することができる。

(アメリカ海軍のイージス艦 筆者撮影)

クルーズ前半の進行方向の向かって右側がアメリカ海軍の基地、左側が海上自衛隊の基地になるが、艦船の混雑状態やスペースの空き具合によっては、双方は融通しあっているようである。

今回の見ものは日本の潜水艦3隻が米軍側のドックに停泊していることであった。潜水艦の乗り組み員である海上自衛官たちがクルーズ船にむかって手を振ってくれたのもうれしいことである。たまにしか海面に浮上しない潜水艦乗りにとっては心安らぐひと時でもあるのだろう。

(米軍側のドックに停泊する日本の潜水艦3隻 筆者撮影)

残念ながら原子力空母のジョージワシントンは3週間前に出港したとこのことで見ることはできなかった。このように、「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズはそのとき軍港に停泊している艦船しか見ることができないだけでなく、どの艦船を見ることができると保証もできないのである。艦船の移動は基本的に軍事機密なので、当日になってみないと状況はわからない。

(ガイドがTVモニターの映像で説明してくれた空母ジョージワシントン)

クルーズでぐるっと回ってみて思うのは、波の荒い日本列島周辺においては天然の良港はどうしても入江になるという構造である。これは横須賀だけでなく舞鶴も同様である。

アメリカの軍港は必ずしも日本のような入り組んだ入江ではない。1991年にメリーランド州アナポリスのアメリカ海軍兵学校(Naval Academy)も訪問したがアナポリスも入江ではなかった。カリフォルニア南部の軍港サンディエゴも訪問したことがあるが、日本のような入江ではなかった。

(2013年3月に退役した日本の潜水艦 横須賀市街をバックに筆者撮影)

その意味では、横須賀はアメリカ海軍の軍港というイメージが大きい割には、形態的にはアメリカの軍港っぽくない。やはり、日本の軍港なのである。

クルーズから戻ったらチケット発券所に戻ってお土産を探してみるのもいい。おすすめは潜水艦型ボールペン450円である。

(お土産は横須賀海軍カレーだけではありません!)


三笠公園にて日本海海戦の船艦三笠を再訪

20数年ぶりに三笠公園まで船艦三笠を見にいった。クルーズの発着点から徒歩で15分くらいである炎天下に歩くのはややつらいものがあるが、横須賀という街を知るうえでは徒歩にまさるものはない

米軍施設への立ち入り禁止を明示した英語と日本語で書かれた看板、米軍関係者むけの不動産屋の看板、その他もろもろが基地の町というイメージに満ち満ちている。これは同じ軍港といっても舞鶴や呉にはないものだ。あえて言えば沖縄に近いという感じもする。

(United States Navy Fleet Activities: 米海軍艦隊行動施設 筆者撮影)

ひさびさに訪れた三笠公園は、すぐ直前までマンション建設が進行中で、むかしのイメージとはだいぶ違うものになっていた。変わっていなかったのは日本海海戦の勝利を導いた東郷平八郎元帥の旗艦であった船艦三笠の雄姿だけだ。

(戦艦三笠の雄姿 右から「みかさ」 筆者撮影)

今回はじめて戦艦三笠の内部に入ってみた。「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズの半券があれば入場料は100円値引きで400円になる。

船艦三笠はことしミシュランの「グリーンガイド・ジャポン」に掲載されたそうで、フランスはじめ各国からの観光客の来場も期待したいところである。

(戦艦三笠と東郷平八郎元帥の銅像 筆者撮影)

なお、たまたま応接してきださった三笠保存会の方によれば、三笠を製造した英国のヴィッカーズ造船所は現在は英国の軍事産業のBAEの傘下に入っているとのことで、現在でも潜水艦の製造を行っているということだ。

いかに第二次産業が衰退しようと軍事産業だけは国策として維持するという姿勢。船艦三笠から英国の軍事産業政策をしることもできたわけである。

戦艦三笠は英国で製造され、日本が使用し、ワシントン軍縮条約で解体が決定され、その後永久保存され、敗戦後もアメリカ海軍の尽力によって撤去の危機を免れ現在に至る。海洋国家である海軍先進国の英国、その後継者である米国と日本が密接にかかわる歴史的遺産が船艦三笠である。

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加される際は、ぜひ船艦三笠も一緒に見学していただきたいものである。なお売店ではかの「東郷ビール」も販売されているのでお好きな方はどうぞ。



横須賀という町を歩いてみてわかること

横須賀は海軍の町。そしてアメリカを感じる町。ひさびさにアメリカにいったような気分になった。

なるほど小泉純一郎やその息子の小泉進次郎という政治家は、こういう風土から生まれてくるものかということもよく実感できた。

還りは京浜急行の横須賀中央駅から品川方面に戻る。JR横須賀線の横須賀駅で下車し、京急の横須賀中央駅から戻るのが周遊散歩コースとして適当であることもじっさいに歩いてみてよくわかった。

日本のなかのアメリカ海洋国家の防衛拠点としての軍港、などさまざまなことがよく実感された今回の旅であった。

やはり「現地」にみずからおもむいて、「現場・現物・現実」の三現主義を実践しなくてはならないのである。

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズツアーに参加したあとはぜひ『海の友情-米国海軍と海上自衛隊-』(阿川尚之、中公新書、2001)という本を読むことを勧めたい。

太平洋の覇権をめぐって激突した日米両国の海軍は、いまや日米軍事同盟の要(かなめ)として政治家たち以上に密接な関係を築き上げているのである。

著者の阿川尚之氏は弁護士で、帝国海軍ものの作家・阿川弘之氏の長男であり、エッセイストでインタビュアーの阿川佐和子氏の兄である。



<関連サイト>

「YOKOSUKA軍港めぐり」(株式会社トライアングル)

記念艦三笠 公式ウェブサイ


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(2014年4月30日、7月23日 情報追加)




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