ベルギーというと人によってさまざまな連想があると思うが、食品関係に限定すれば、その名を冠したベルギービールを筆頭に、高級チョコレートやワッフルといったスイーツなどがあげられることだろう。
だが忘れてはいけない。フランスやフレンチという名を冠していながら、じつはベルギーのものも多々ある。その最たるものはフレンチポテトである。
フレンチポテトは日本ではフライドポテトということが多いが、まずは米国のマクドナルドを思い浮かべることだろう。日本マクドナルドでは「マックフライポテト」という商品名だが、米国では French Fries と呼ばれている。
ポテトフライといえば袋入りお菓子だが、細長くスライスして油で揚げたフライドポテトは、じつはベルギーが発祥の地である。フランス語圏のベルギーのため、フレンチポテトといわれるようになったのであろうか。
(McDonald's "French Fries" 米海軍横須賀基地内のマクドナルドにて)
ポテトは英語の potate だろうが、フランス語では pomme(ポム)という。正式には pomme de terre(ポム・ドゥ・テール) というのは、pomme は日本の天然果汁ジュースの商品名「ポンジュース」の「ポン」にあるようにリンゴを意味するからだ。 pomme de terre で大地のリンゴ、すなわちポテトである。じっさいには pomme とだけでも文脈で理解されるだろう。
フレンチポテトは pomme fritte で油で揚げたポテトのこと。このフランス語がドイツではそのまま Pommefritte となっている。ドイツ語ではポテトのことを Kartoffel というので、 Pommefritte は明らかに外来語であることがわかる。フランスから来たのか、ベルギーから入ってきたのかはわからないが。
ちょっと遠回りしたが、ポテトの缶詰というものがあって、日本ではいなば食品から販売されている。ミニポテトの水煮を缶詰にしたもので、皮をむいたり茹でたりする必要がないのでひじょうに重宝している。サラダならそのまま供すればいいのでラクチンだ。
このポテトの缶詰をよくみると原産国ベルギーとある。缶に書かれたキャッチコピーには「ベルギーのじゃがいも産地で 100%作りました」、とある。もっとこの事実を強調したらいいのにと、思ってしまうのだが・・・。
ここで、ようやくポテトとベルギーが結びついたわけだ。人を説得するにはエビデンス(証拠)が必要だということ。しかも物証であることが重要だ。たとえ科学者ではなくても(笑)
水煮してあるのでそのままサラダにするもよし、加工して調理に使うのもよし。一缶あたり消費税込みで 170円以下だからお手頃価格だ。扱っていない食料品店もあるだろうが amazon なら1ダース(12個)単位で購入可能だ。
ベルギー産ポテト缶詰、使い勝手がいいですよ!
<補論>
■「じゃがいもを食べるとバカになる!?」と説いたルドルフ・シュタイナー
「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる というブログ記事でも触れておいたが、哲学者で人智学者のルドルフ・シュタナーはポテトを食べるのはカラダによくないと主張している。
『健康と食事』(シュタイナー、西川隆範訳、イザラ書房、1992)からその理由を述べた箇所を引用しておこう。1922年から1924年にかけてゲーテアヌム労働者にために行った講演のようだ。
ジャガイモは塊茎です。それは、完全には根にならなかったものです。ジャガイモを食べるということは、完全に根にならなかった植物を食べるということです。ジャガイモばかり食べていると、頭のなかになにも入ってきません。すべては消化器官のなかにとどまるのです。ジャガイモを食べることによって、ヨーロッパ人は頭脳をおろそかにしたのです。精神科学からは、このような関連が明らかになります。「ヨーロッパにジャガイモがもたらされて以来、人間の頭は無能になった」と、思われます。(出典:「蛋白質・脂肪・炭水化物・塩(1) P.37)
「精神科学」はさておき、「自然科学」の観点からいえばどうなのかな?と思うのだが、ひとたびこの記述を読んでしまうと、どうしてもアタマのなかに引っかかってしまうのである。『「蛋白質・脂肪・炭水化物・塩』は講演録だが、シュタイナーはいたるところでジャガイモの害について繰り返し語っている。
南米アンデスから伝来したジャガイモがヨーロッパの飢餓状態を救ったというエピソードばかりが繰り返し語られるが(・・日本の場合はサツマイモがそれに該当)、ジャガイモに対して否定的な見解があることも知っておいて損はないだろう。たしかに、ドイツ語圏ではポテトを食べすぎではないか、という気がしないでもない。日本の比ではないのだ。
といいながら、わたしはじゃがいも料理のコロッケが大好きではあるのだが(笑)
<関連サイト>
ジャガイモ専門誌 『ポテカル』(カルビー・ポテト)
・・「安全で安心できるおいしいジャガイモをお届けするために、カルビーポテトの契約生産者は、日々ジャガイモ栽培技術の向上に努めています。『ポテカル(Potato Culture)』はそんな生産者をサポートするために創刊(2004年9月)されたジャガイモ情報専門誌。 ジャガイモの食文化を広げることを目的に、ジャガイモの作り方だけでなく、新しいジャガイモの料理方法や品種の情報などみなさまにも身近な記事も掲載しています」
ベルギー版フライドポテト、日本上陸の衝撃世界遺産にも申請予定、その実力はいかに?(東洋経済オンライン、2014年12月24日)
・・ベルギーのフレンチポテトは米国のものとちがって肉厚
ポムケ POMMEKE ベルギー料理店 · 持ち帰り専門店 Facebookページ (本場ベルギーのフレンチポテト専門店)
ベルギーAVR社 ウェブサイト
・・ポテト・ハーベスター(ジャガイモ収穫機)の専門メーカー。さすがベルギーはポテト王国!
(2014年12月24日、2017年7月19日 情報追加)
<ブログ内関連記事>
『ベルギービール大全』(三輪一記 / 石黒謙吾、アートン、2006) を眺めて知る、ベルギービールの多様で豊穣な世界
書評 『ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?-』(ジェローム・シュシャン、高橋書店、2016)-日本との出会い、弓道からの学びをビジネスに活かしてきたフランス人社長が語る
ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について
「コンパニオン・プランツ」のすすめ-『Soil Mates』 という家庭園芸書の絵本を紹介
書評 『缶詰に愛をこめて』(小泉武夫、朝日新書、2013)-缶詰いっぱいに詰まった缶詰愛
・・おなじく「いなば食品」のヒット商品である「タイカレー缶詰」を紹介してある
むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (2) 宿泊施設としての山小屋 & 登山客としての軍隊の関係
むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (3) お客様からおカネをいただいて料理をつくっていた
・・「自衛隊員は先にも書いたが、自分たちのレーション(ration)を持参しているので基本的に山小屋に食事を頼むことはない。比較的大きな缶詰にはいった加工食品である。シールも何もはっていないので無味乾燥な缶詰だ」 陸上自衛隊の隊員たちからもらったレーションの缶詰を食べてみたが、どれもみな塩がきつくしょっぱかった。カレーなど種類はいろいろある
(2016年3月3日 情報追加)
(2022年12月23日発売の拙著です)
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