2014年10月7日火曜日

朗報! 2014年度のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード開発の中村博士ほか日本人3人に決定!(2014年10月7日)

(カリフォルニア大学サンタバーバラ校 オフィシャルサイトより)

朗報! 2014年度のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード開発の中村博士ほか日本人3人に決定した。名城大修身教授の赤崎勇博士名古屋大学教授の天野浩博士、そしてカリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二博士の3人である。

中村修二氏は、徳島県の民間企業の日亜化学工業で、高輝度青色発光ダイオードや青紫色半導体レーザーの製造方法などの発明と量産技術開発に成功した人である。特許の帰属をめぐって所属先の企業との訴訟や、2000年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校に移籍するなど、当時は大きな話題の中心にあった人だ。ノーベル賞間違いなしといわれていたが、14年以上たってようやく実現したことになる。

赤崎氏と天野氏の一般的な知名度は高くないが、窒化ガリウムを使った半導体結晶の加工技術を確立し、長年不可能だった青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザーなどの開発に成功した研究者で、中村氏の発明と開発もその技術蓄積のうえに成立している。

ノーベル物理学賞の授賞理由は、「明るく、省エネの白色光源を可能にした、効率的な青色LEDの発明」(Efficient blue light-emitting diodes leading to bright and energy-saving white light sources)受賞理由の科学的バックグラウンドについては、スウェーデンの科学アカデミーによる文書を参照。

今回の発光ダイオード関連は、環境エネルギー問題の解決にも貢献するところの大きい、きわめて実用性の高い、世のため人のためになる研究であるといえる。それは受賞理由そのものに表現されている。

現在では、日常生活にも LEDライト は欠かせない存在になっている。その意味では、iPS細胞よりもはるかに多くの人のために役に立っている技術だといえるだろう。

京都の島津製作所に勤務するサラリーマン研究者の田中耕一博士がノーベル化学賞を受賞したのは2002年であったが、原理そのものの発見もさることながら、より実用性の高い開発分野での受賞が増えている。

2000年前後、中村博士が日本で大いに話題になっていた頃、つぎからつぎへと著作が出版されていた。そのなかでわたしが読んだのが『考える力、やり抜く力 私の方法』(中村修二、三笠書房、2001)である。


「人の思惑、"非常識"を恐れるな!」という副題にもあるように、万難を排して開発に専念し、ついには開発に成功した研究者による過激な自己啓発書といった内容である。

いまから13年前の 2001年当時、bk1(・・現在は hontoに統合)に書いた書評を再録しておこう。

書評タイトル: ノーベル賞よりも、アメリカンドリーム(=カネを儲けてデカイ家に住むという単純明快な夢)を実現したい!という中村氏の言いきりが痛快

投稿者:サトケン(2001年3月28日)

「天才とは持続する意思である」というコトバを思い出す。独創とは何か、を身をもって示した本。中村氏による青色発光ダイオードの開発物語は、素材分野では共通するものの、ノーベル賞をすでに受賞した白川博士よりも面白い。ノーベル賞よりも、アメリカンドリーム(つまりカネを儲けてデカイ家に住むという単純明快な夢)を実現したい!という中村氏の言いきりが痛快である。なせばなる、夢を捨てるな!という強烈なメッセージで勇気を奮い立たせてくれる。超おすすめ。


「ノーベル賞よりも、アメリカンドリーム(つまりカネを儲けてデカイ家に住むという単純明快な夢)を実現したい!という中村氏の言いきり」と書いている。この本自体はすでに処分して手元にないので確かめようがないが、中村氏がそう書いているのである。

「ノーベル賞級の大発明を可能にした世界のナカムラ・マジック」と本の表紙にキャッチコピーが書かれているが、2014年にようやくノーベル賞受賞が実現したわけである。「この国を出る」ことで成功した、日本社会の前近代性に復讐できたといえるわけだ。

中村氏の著書は多数あるが、「旬の話題」という性格のためか、その大半は現在では入手不可能である。おそらく今回のノーベル賞受賞でそのうちのいくつかは新装版あるいは文庫版として復刊されるであろうし、またあらたな本がノンフィクションを含めて出版されることになるだろう。






ノーベル物理学賞の受賞者が日本人3人というのもウレシイことだが、中村修二氏のような日本人離れした発想の持ち主でありながら、かつ昔の日本人的な我慢と忍耐の持ち主であった人が受賞したことは、なによりもよろこばしいことだ。

中村博士は現在はアメリカ国籍を取得しているので、英語放送では American researcher と紹介されているが、国籍はアメリカでもエスニシティでは日本人であることには変わらない。2008年に物理学賞を受賞した南部陽一郎博士と同じである。国籍で人を差別するのはバカげたことだ。「日本人」として誇りに思うべきである。

2014年の日本でふたたび「ナカムラ・フィーバー」の旋風が巻き起こることを期待したい。ノーベル物理学賞の受賞式は、2014年12月10日である。






<関連サイト>

UCSB Materials Professor Shuji Nakamura Wins Nobel Prize in Physics (By Andrea Estrada,  October 6, 2014)

カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UC Santa Barbara) 公式サイト(英語)

カリフォルニア大学サンタバーバラ校 工学部材料・電子・コンピュータ工学研究室 中村修二教授プロフィール(英語)

Scientific Background on the Nobel Prize in Physics 2014 EFFICIENT BLUE LIGHT-EMITTING DIODES LEADING TO BRIGHT AND ENERGY-SAVING WHITE LIGHT SOURCES compiled by the Class for Physics of the Royal Swedish Academy of Sciences
・・受賞理由の科学的バックグラウンドについてスウェーデンの科学アカデミー作成の文書

ノーベル賞、「3人同時受賞」の深い意義 閉塞感の出口を目指すための"松明"に (東洋経済オンライン、2014年10月8日)

ノーベル賞受賞、「青色LED」の産官学モデルがうまくいった理由 (日経ビジネスオンライン、2014年10月7日)

ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか (日経ビジネスオンライン、2014年10月7日)
・・発明の対価にかんする訴訟で「敗軍の将」となった中村修二氏

今年のノーベル物理学賞で最も重要なこと 20年後同じように日本の基礎研究は輝いているか (伊東 乾、JBPress、2014年10月10日)

ノーベル賞、4人に1人が「移民」 中村修二教授の受賞が示した米国の磁力(日経ビジネスオンライン、2014年10月10日)

高輝度青色発色ダイオードの開発 第1回:装置は自作で部材は再利用、語るも涙の開発課員時代 (日経ビジネスオンライン、2014年10月8日)
・・「中村氏が窒化ガリウム(GaN)系青色LEDの研究に着手し製品化にこぎ着けるまでの開発ストーリーを紹介した1995年1~3月当時の日経エレクトロニクスの記事を基に、2009年「日経テクノロジーオンライン」に掲載した記事を再掲載)

中村修二氏、並外れた集中力を持つ「研究の鬼」 (日経ビジネスオンライン、2014年10月14日)
・・「地方の中小企業の研究者がノーベル賞級の研究成果を達成した。青色発光ダイオード(LED)と紫色半導体レーザーの実用化だ。その産業界に与えるインパクトは計り知れない。大手企業の研究者を出し抜いた原動力は集中力と実証精神。大企業のエリート研究者ではなかったからこそ偉業を達成できたのだ。(「日経ビジネス」1999年7月19日号の「フォーカスひと」を再掲載したもの)

日本を捨てた「青色の職人」 中村修二-知られざる日本の“異脳”たち(3) (「週刊ダイヤモンド」2001年6月23日号連載) (ダイヤモンドオンライン、2014年10月23日)
ノーベル物理学賞も予想される二人だけに表現も過激になるのだろうが、両者の言い分はそれぞれに正しい。むしろ、こうした自尊心、功名心がぶつかり合うところに画期的な発明が生まれ、技術革新が進むのである。


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エスニシティからアメリカ社会を読み解く-フェイスブック創業者ザッカーバーグというユダヤ系米国人と中国系米国人のカップルが写った一枚の結婚写真から

(2015年1月5日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)









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