2015年5月2日土曜日

ウィステリアとは日本の藤(ふじ)のこと-アメリカでは繁殖力の強い「外来種」として警戒されているとは・・・


紫色の藤(ふじ)の花が咲いている。早いもので、もうこんな季節になっていたか。もう5月なんだねえ。

藤棚の下から見上げるのがふつうだが、この写真の藤の花は壁の外に出ているので、道を歩く散歩者にもお裾分けしてくれているわけだ。

新緑と紫が「和」の雰囲気を醸し出している。新緑の緑が目に優しく、禁色であった紫色の花は、しだれ柳のようでもある。秋に咲く葛の花にも似ている。葛も藤も、ともに日本に自生してきた固有種で、繁殖力の強いマメ科の植物である。

藤の学名は、Wisteria floribunda(ウィステリア・フロリブンダ)という。ウィステリアというのは響きがいい。

なぜ藤がウィステリアなのか調べてみたら、ウィステリアというのはアメリカ人の名前から来ていることがわかった。解剖学者であったキャスパー・ウィスター(Casper Wister 1761~1818)の名にちなんで命名されたという。キャスパー・ウィスターは、第3代大統領トマス・ジェファーソンの友人であった。

このキャスパー・ウィスターの grand-nephew(=きょうだいの孫息子)もまた.ジョン・キャスパー・ウィスター(John Caspar Wister 1887~1982)であり、アメリカの園芸家だった。ウィスターはランドスケープ・アーキテクト(=景観設計)の分野で活躍した人でもある。ウィスターは、米国アイリス協会(American Iris Society)を1920年に設立して14年間会長の職にあったという。

日本の藤(ふじ)は1830年代にアメリカに導入されたという。アメリカではひじょうに普及したようで Japanese wisteria として園芸植物として知られている。現在でも種苗場で取引される植物のようだ。ニューヨークのメトロポリタン美術館には、ティファニー(Tiffany)によるステンドグラスのシリーズとして「ウィステリア」が所蔵されている。

(ティファニーのステンドグラス「ウィステリア」 1905年)

アメリカではワシントンの桜が有名だが、それ以外の日本産の植物や動物も広く普及している。秋田犬もまたその一つだ。

だが一方では、日本の藤(ふじ)は、繁殖力の強い外来種として警戒もされているのが興味深い。外来種が脅威になっているのは、日本だけの問題ではないわけだ。こういうことは意外と知られていない事実である。わたしも今回はじめて知った。

佐藤の「藤」は、藤原の「藤」から来ているということは、いわゆる雑学的知識として多くの日本人は知っているのではないかと思う。加藤も伊藤も後藤もみな同じである。

原産地の日本でも、移植された米国でも、ともに人名にちなむ植物であるというのが面白い。

身近な草木も調べてみると、いろいろなことがわかってくる。そういう雑学的知識は、ものごとを見る視点をふくらませてくれる。

もちろん、季節を感じさせてくれる花木として鑑賞するのがまず第一ではあるが・・・。



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