2015年6月23日火曜日

書評 『沖縄戦いまだ終わらず』(佐野眞一、集英社文庫、2015)-「沖縄戦終結」から70年。だが、沖縄にとって「戦後70年」といえるのか?


本日(2015年6月23日)は、沖縄戦終結から70年。太平洋戦争において、もっとも激しく、かつ唯一の地上戦となったのが沖縄戦である。
    
先日も、NHKスペシャルで「沖縄戦 総記録」という特集が放送(2015年6月14日)されたが、軍人ではない非戦闘員の一般人も大量に巻き込まれた地上戦の実態は、いまだに完全に解明されているとは言い難いという。アメリカとの戦いは6月23日に終結したが、そのまま1972年の本土復帰まで占領状態がつづいたのである。
   
『沖縄戦いまだ終わらず』(佐野眞一、集英社文庫、2015)という本を読んだ。「戦後70年」という年に、あえて「沖縄戦いまだ終わらず」というタイトルをぶつけてきたのは強烈である。挑発的というべきか。刺激的なタイトルである。もともとは、『僕の島は戦場だった-封印された沖縄戦の記憶-』として2013年に出版されたが、文庫版出版にあたってタイトルを変更したのだという。
   
この本を読んで、いかに自分が沖縄戦について表面的にしか知らなかったか、あらためて深い反省をしている。沖縄戦は、「ひめゆり」だけではない。

とくに、「第5章「集団自決」の真実」は必読だろう。この本に描かれている事実があまりにも悲惨すぎる。

「自決」とはあるが、じっさいには追い詰められた末の「強いられた集団自殺」ではないのか? 「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓は大戦中の日本軍人に課されたものであったが、一般人に求められたわけではなかったはずなのだが・・・。日本の軍人が強いたものであったのか、それとも自発的に「自決」したのか。

それにしても思うのは、なぜ追い詰められた日本軍人は、沖縄の一般人に対してあれほど過酷な態度がとれたのか、ということだ。植民地の満洲でも、壊滅して敗走する日本軍は、民間人を見捨てて逃げたことが現在でも非難されているが、沖縄ではもっと酷いことをしたというべきではないのか?

もし本土でも沖縄と同様に地上戦が行われていたなら、沖縄の悲劇が拡大されて繰り返されたかもしれもしれない。いや間違いなくそうなっていたであろう。その意味では、戦艦大和が無謀な「沖縄特攻作戦」で花と散り、海の藻屑と消えていったのは、その意味では、せめてもの日本軍人の罪滅ぼしとなったといえるのかもしれない。


8月15日の終戦記念日(・・・ただしくは「敗戦記念日」)、8月6日の広島の原爆記念日8月9日の長崎の原爆記念日だけでなく、そして3月10日の東京大空襲などだけでなく、6月23日の沖縄慰霊の日も祈りの日としなければならない。天皇皇后両陛下も、この日をことのほか重要とお考えになっているときく。

『沖縄戦いまだ終わらず』は、読むと重い気分にさせられる内容で、けっして読んで楽しい本というわけではないが、「戦後70年」のいま読むべき本として強くすすめたいと思う。





目 次

文庫版のための短いまえがき

第1章 「援護法」という欺瞞
第2章 孤児たちの沖縄戦
第3章 「幽霊は私の友だち」
第4章 那覇市長の怒り
第5章 「集団自決」の真実
第6章 沖縄の民意はなぜ日本に届かないのか
主要参考文献
解説 大田昌秀

著者プロフィール

佐野眞一(さの・しんいち)
1947年、東京生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。1997年、『旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三』で、第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦―乱心の曠野』で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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(2012年7月3日発売の拙著です)










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