2016年1月23日土曜日

「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展」(パナソニック汐留ミュージアム(2016年1月22日)ー 現在の英国を英国たらしめている植物愛を体現している植物園とその世界を紹介した展示会


「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展」(パナソニック汐留ミュージアム)にいってきた(2016年1月22日)。美しいボタニカルアート(=植物画)を中心とした展示である。

キュー王立植物館(The Royal Botanical Gardens, Kew)はロンドン郊外にある植物園である。残念ながら、わたしはまだ訪れたことがないのだが、2003年にはユネスコ世界遺産にも登録されているのだそうだ。

大英帝国の最盛期に、海外植民地からプラントハンターたちによってもたらされたゴムなどの貴重な植物種がここで栽培され、改良され、ふたたび植民地に戻されていった。英国の産業政策において戦略的な意味をもった植物園であり、植物の研究機関であったわけだ。たとえば、現在では当たり前のように栽培されているゼラニウムだが、なんと南アフリカ出身であることは今回はじめて知った。

もちろん英国のことであるから、そこはいわゆる「イングリッシュ・ガーデン」となる。幾何学的なフランス式庭園や奇想に満ち満ちたイタリア式庭園とは違って、自然そのものを活かしたのが英国式庭園だ。ガーデニングといえば英国をモデルにしているのは、もともとの日本人の好みにフィットしているからであろう。日本は、江戸時代以来の園芸大国である。幕末から明治時代前半に来日した外国人はみな絶賛しているとおりだ。

今回の展示の中心は、初期近代の17世紀から19世紀に製作されたボタニカルアートにある。美しくかつ精密に描かれた植物画は、それじたいが美術作品として鑑賞できるものだ。植物の特徴を正確に表現できるのが写真との違いである。だから、キュー植物園では、現在でも植物画の製作は推奨しているのである。21世紀以降の新作も展示されていて興味深い。

ボタニカルアート以外では、プラントハンターで植物学の発展に大きな貢献のあったジョセフ・バンクスや進化論のチャールズ・ダーウィンらの研究者とのかかわり、植物をモチーフにしたデザインで有名なウィリアム・モリスなどのデザイナーの作品も展示されている。

現在の英国を英国たらしめている要素のひとつである植物愛を体現している植物園とその世界を紹介した展示会といえるだろう。

ボタニカルアートのファン、ガーデニングを趣味とする人は、ぜひ足を運んでほしい展示会だ。




<関連サイト>

「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展(公式サイト)

キュー王立植物館(The Royal Botanical Gardens, Kew) (公式サイト 英語)


PS この記事で1700本目の投稿となったことに気がついた(2016年1月25日)


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