2016年2月18日木曜日

「三千世界一度に開く梅の花」


「三千世界一度に開く梅の花」。このフレーズにすぐにピンときたら、 あなたはそうとうの物知りというべきでしょう。 気になる人は検索してみるとよろしいでしょう。スピリチュアル系のフレーズですよ。

わたしがこのフレースを知っているのは合気道をやっていたから。合気道開祖・植芝盛平の語録である『合気神髄』には「道歌」が収録されていますが、そのなかにこんな道歌があります。

三千世界一度に開く梅の花
二度の岩戸は開かれにけり

いきなり「三千世界一度に開く梅の花」ですね! 「岩戸」は『古事記』に登場する「天の岩戸神話」のこと。アマテラスが引きこもっていた岩戸をアマノウズメのストリップで開けさせたというエピソードですね。二度目に開けるとは合気道開眼のことをさしているのでしょう。

(千葉県市川市の白幡天神社にて)

「三千世界一度に開く梅の花」とは、ネット検索すれば、すぐに判明しますが、じつは大本教の開祖・出口なおの『お筆先』に登場するフレーズなのです。

『大本神諭』にある、「三千世界一度に開く梅の花、艮(うしとら)の金神(こんじん)の世になりたぞよ。神が表(おもて)に現れて 三千世界の立替え立直しを致すぞよ」との宣言のことです。ユートピア実現ということですね。これが、出口なおのクチを借りて語られたというわけです。

植芝盛平翁が父危篤の知らせを受けて、北海道から故郷の紀州田辺に引き上げる途上、京都府綾部にある大本教(おほもと)教主の出口王仁三郎(でぐち・おにさぶろう)聖師のウワサを聞きつけて訪れ、父親が亡くなったあとも当地にとどまって精神修行を行っていたのです。そして出口聖師のもとで「植芝塾」を開き、武道を教えていたのでありました。大正時代のことです。

というわけで、「三千世界一度に開く梅の花」というフレーズが道歌にでてくるのでしょう。知らず知らずのうちに、植芝翁の無意識レベルに浸透していたというべきかもしれません。


「三千世界」とはもともと仏教要語です。須弥山(しゅみせん)世界が 10億個(!)集まった空間、つまり「十万億土」を表すコトバで、広大な世界全体を意味しているといってもいいでしょう。スケール感がケタはずれですね。

「三千世界」といえば、幕末の志士・高杉晋作の有名な戯れ歌を想起しますね。

三千世界の鴉(からす)を殺し
ぬしと朝寝がしてみたい

意味はご想像いただきたく。


ところで、この記事に掲載した梅の花は、 「天神様」の境内で咲いていたものを、今週撮影したものです。

といっても、かの有名な大宰府天満宮でも京都の北野天満宮でも、東京の湯島天神でも亀戸天神ありません。千葉県市川市内の白幡天神社、という古社です。たまたま用事があって近くまでいくことがあった際に、梅の花の見事な咲きっぷりに「三千世界一度に開く梅の花」 を想起した次第。

天満宮は、日本全国に広く分布しています。  

日本人にとって「梅の花」といえば、なんといっても天神様こと菅原道真でしょう。左遷先の太宰府で詠んだ有名な和歌があります。


東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ 梅の花
主なしとて 春を忘るな  (拾遺和歌集)


遣唐使を廃止した菅原道真でありましたが、梅(うめ)そのものは大陸から渡来したもの。発音は「メー」ですね。日本人はそのままでは発音できないので「ウ」をつけて「ウ・メ」としたわけです。馬(ウ・マ)もまた同じです。

桜もいいが、梅もよし。2月というこの時期は、やはり梅の花を楽しみたいものですね。



<ブログ内関連記事>

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋

古事記と勾玉(まがたま)

お神楽(かぐら)を見に行ってきた(船橋市 高根神明社)(2009年10月15日)
・・お神楽のフィナーレは「天の岩戸舞」


かつては「花」といえば桜ではなく梅だった

「散る桜 残る桜も 散る桜」 (良寛)
・・もともと日本では「花」といえば「梅」だったが・・。


菅原道真の仇敵の藤原時平を祀った神社もある

下総国の二宮神社(千葉県船橋市)に初詣(2015年1月3日)-藤原時平を祀る全国でもめずらしい神社
・・「学問の神さまとなった菅原道真を太宰府に追いやった左大臣・藤原時平を主神として祀っているのは、この地域がもともと藤原氏の所領だったためらしい。藤原時平を祀った時平神社が隣接する八千代市にあるようだが、国民的には人気のない藤原時平を祀った神社は全国的に見てもめずらしい」

市川文学散歩 ①-葛飾八幡宮と千本いちょう、そして晩年の永井荷風
・・「白幡天神社は、12世紀までさかのぼることのできる古社のようだ。神さびていながら掃除が行き届いており、土地に根ざした産土神として大切にされてきたことがうかがわれる」


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