2016年5月22日日曜日

「縄文多空間 船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(船橋市海神)にはじめていってみた(2016年5月21日)-海辺の小高い丘に居住していた縄文人たちの痕跡。7000年前の「縄文早期」に思いをめぐらす



「船橋市飛ノ台史跡公園博物館」(船橋市海神)にはじめていってみた(2016年5月21日)。船橋市に住んでいながら、縄文遺跡があることに最近まで知らなかったのだが、なんと7000年前(!)の居住跡と出土品の展示があるというなら、そりゃあ見に行かねばなるまい。

縄文遺跡というものは、縄文人は日本列島の先住民であったわけだから、考えてみれば北は北海道から南は沖縄まで、日本全国いたるところにあるものだが、そうはいっても自分の居住する地域の近くにも縄文遺跡があるというのはうれしいことではないか! 歴史のロマンとかなんとかというやつでなく、痕跡がすこししか残っていないからこそ、想像力をいたく刺激されるのだ。

さて、「船橋市飛ノ台史跡」とは、千葉県船橋市海神にある縄文時代早期の縄文遺跡のことだ。最初に発見されたのは1932年(昭和7年)、日本で初めて炉穴(ろあな)が見つかったことで注目されたらしい。

(住居跡と炉穴群 公園内の遺跡 筆者撮影)

炉穴(ろあな)とは、住居の外に近接して設けられた煮炊きを行う窯(かま)のようなものである。縄文中期以降は住居の中に移動するが、縄文早期には住居の外にあったのだ。飛ノ台遺跡の発見以降、このタイプのものは「炉穴式」とされるようになった。

この遺跡があるのは船橋市海神。海神(かいじん)という地名からわかるように、船橋は現在でも東京湾では有数の漁港で、海とはきわめて縁の深い土地柄である。

博物館に展示されている「縄文海進」を示した地形図によれば、地球温暖期の縄文早期には、この遺跡のすぐそばまで海があったようだ。この遺跡は海抜15mの小高い丘の上にあるから、海進の影響を受けなかったわけだ。

(貝塚はこんな形で出土 公園内に保存された遺跡 筆者撮影)

この遺跡の目玉は、先にも触れた炉穴(ろあな)を除けば、なんといっても貝塚(かいづか)だろう。

貝塚には貝殻以外にも魚の骨や獣の骨が捨てられて堆積しており、当時の縄文人の食生活を知ることができる。赤貝の一種のハイガイ、ハマグリ、マガキなどの貝類のほか、スズキやクロダイなどの魚類、ウサギやシカやイノシシなどの獣肉、そして木の実や木の芽などの植物。

(博物館のパンフレットより)


じつに豊富な海の幸と山の幸である! しかも、炉穴では縄文土器で火を使った煮炊きもされていたわけで、現代人からみても、素材にかんしては、かなりぜいたくな食生活を送っていたと想像されるのだ。

海辺の小高い丘という地の利を考えれば当然といえば当然だが、いまもむかしも東京湾は豊富な水産資源に恵まれており、現在でも船橋はアサリのほか、外来種のホンビノス貝などが有名である。スズキにかんしては水揚げ高日本一である。

(遺跡からみた博物館 筆者撮影)

このほか、縄文土器や装身具などについては、この遺跡以外でもよく知られたことなので省略するが、縄文犬について触れておきたい。

縄文犬は日本犬の原型であるが、この遺跡の発掘からわかったのは、縄文人たちはイヌを大事に扱っていたという事実だ。脚の骨を折った老犬を丁重に葬っていることから明らかになった。

ほんと縄文時代というのは、知的好奇心を刺激される存在だ。なんといっても日本列島の先住民というだけでなく、現代に生きる日本人の DNA にも、程度の違いはあるにせよ、かれらの DNA が間違いなく継承されているからだ。現代の日本人は先住民の縄文人と、渡来人の弥生人の混血である。

博物館の入場料は大人が100円(子どもは50円 月曜定休)。来場者は学習目的の児童が多いのだろうが、近くに住んでいる人なら大人でも訪れるべきだろう。

縄文時代は現在1億5千年までさかのぼるとされているが、7000年前でも「縄文早期」なのだ。そんな時代から人が住んでいたという事実を確かめるために。





<関連サイト>

飛ノ台史跡公園博物館(船橋市ホームページ内)

千葉県博物館協会「船橋市飛ノ台史跡公園博物館」
・・「飛ノ台貝塚は、約7千年前の縄文時代早期の遺跡として古くから知られていた。また、飛ノ台貝塚は海と山の両方の幸に恵まれた最高の環境に立地しており、 当時は、周辺の遺跡に先駆けて定住生活を始めていたことが過去の発掘調査において確かめられている。 その後数回にわたり大規模な発掘調査が行われ、平成5年には合葬人骨も発見され、全国的にも注目された。
現在までに住居跡25軒(竪穴住居跡21軒、小竪穴4軒)、 炉穴およそ430基、貝塚約40ヶ所が発見されている。」


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