「LINE(ライン)は日本発のメッセンジャーアプリだ」みたいな言説があふれかえっているが、じっさいのところはどうなのか。
そんな疑問を感じていた、「週刊ダイヤモンド」出身の経済記者たちが徹底取材で解き明かしたのが。『韓流経営LINE』(NewsPicks取材班、扶桑社新書、2016)。面白い内容の本だ。
親会社の「NAVERまとめ」で知られる NAVER(ネイバー社)は、「純韓国製」のIT企業。その100%子会社だったのが LINE(ライン)。現在は日米同時上場を実現したので、親会社の持ち株比率は80%に下がっているとはいえ(・・その出身比率の謎も本書のテーマの一つ)、それでも経営支配権が韓国サイドにあることには変わりない。
ではタイトルにある「韓流経営」とは何か?
韓国は1997年のIMFショックで経済がガタガタになり、その後、逆転を図るために、国家主導で一気にネット化を進めた国。IT化にかんしては日本より先行しているからこそ生まれてきたのが、NAVER や LINE のような技術志向の強い会社だ。
少子高齢化とはいえ、日本のようにまだ人口が1億人以上もいる市場とは違って、韓国は人口がすでに5千万人を切って市場規模の小さな国。成長路線をとる以上、どうしても海外市場を視野に入れなければならないのは、韓国企業にとっては必然というか宿命だ。
そこで、文化的に近いと考えられる日本市場をあしがかりにして国際展開を進めようとしたのが、LINEというわけなのだ。2011年の「3・11」がキッカケになって普及が一気に進んだことは事実であるが、「純和製アプリ」ではないことも本書で明らかにされている。
韓国企業にとっては追い風であるはずだった「韓流ブーム」は、日本では一時期の流行のあと現在では消えてしまい、「嫌韓ムード」さえ強まるばかりの日本では、韓国企業であることを前面出したのではビジネス展開が難しい。
ではどうするか? その答えが、「ステルス戦法」となったわけなのだ。著者たちは「ステルス」とは表現していないが、ある意味では日本人ユーザーを「純和製」といったイメージを前面に出すことで目くらましをしてきたわけであり、「ステルス戦法」といっても間違いではないだろう。
韓国企業のグローバル戦略(国際戦略)のケーススタディとして興味深い事例でもある。関心のある人には一読を勧めたい。
目 次
プロローグ 上場前夜、韓国人トップが語った言葉
第1章 LINEを司る謎に満ちた男
第2章 海の向こうにあるもう一つの本社
第3章 開発秘話の「真」と「偽」
第4章 LINEに流れるライブドアの遺伝子
第5章 上場をめぐる、東証の本音
エピローグ なぜLINEは日本から生まれなかったのか?
あとがき
著者プロフィール
NewsPicks取材班
経済情報に特化したニュース共有サービス「NewsPicks」は、ニュースに対する専門家や業界人らのコメントを読むことができる。2016年4月に企業や産業に焦点を当てたオリジナルコンテンツを制作する調査報道チームを新設。後藤直義、池田光史、森川潤の3人が立ち上げメンバーとなり、独自のテーマで取材執筆活動を展開している。
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