2016年9月25日日曜日

9月になると紫色の実をつけるムラサキシキブの学名(Callicarpa japonica)はツンベルクの命名


九月も後半になると、紫色のつぶつぶが目に入ってくるようになる。そしてはじめてそれがムラサキシキブであることがわかる。紫色に染まる前は、つぶつぶはできれいるが真っ白なので気がつかない。

ムラサキシキブはシソ科の落葉低木だそうだ。つぶつぶの果実が紫色で美しいので観賞用に栽培されている。一般家庭だけでなく公園などでもまとめて植わっているのをめにすることもある。

もともと日本の山野に自生する植物のようなので、ムラサキシキブという名称も十分に納得のいくものがある。ムラサキシキブとは、紫式部のことだろう。


ラテン語の学名は Callicarpa japonica と日本産であることが明記されている。wikipediaによれば、スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名したという。

ツンベルク(Carl Peter Thunberg 1743~1828)は、「分類学の父」であるカール・フォン・リンネ(1707~1778)の弟子18世紀後半にオランダ東インド会社の商館に医師として来日することに成功し、日本滞在はわずか一年半であったが、精力的に日本の植物を調査した。帰国後の1784年には 『日本植物誌』(Flora Japonica)を出版している。

医師としては日本人に蔓延していた梅毒の治療法を伝授し、大いに名声を博した。来日前には南アフリカで3年間の調査を行っている。この間にオランダ語を習得している。

(カール・ツンベルク 1808年 wikipediaより)

日本では19世紀になってから来日したドイツ人のシーボルトの方が有名だが、学問世界、とくに分類学への貢献という点ではツンベルクはきわめて大きな存在である。ツンベルクについては、『リンネとその使徒たち-探検博物学の夜明け-』(西村三郎、朝日選書、1997)に1章をさいて描かれているが、ツンベルクはリンネによって海外各地に派遣された「使徒」の一人であった。

ツンベルクは日本滞在中に蘭学者たちと広く交遊し、その関係は帰国後もオランダ語の手紙のやりとりで続いていたという。ツンベルクの著書『日本紀行』によって、桂川甫周(かつらがわ・ほしゅう)や中川淳庵(なかがわ・じゅんあん)の名は、西欧だけでなくロシアでも知られていたことが、漂流先のロシアから帰国後の大黒屋光太夫によって日本に知らされることになる。

しかも10代将軍家治の謁見の際の書記役が、将軍の侍医を務めていた桂川甫周その人であり、光太夫の発言は示し合わせたものではなかったため、桂川甫周は将軍の面前で大いに面目を施したというエピソードが残っている。18世紀末には、日本にとっても地球はすでに狭くなっていたのである。

桂川甫周は将軍の命により、大黒屋光太夫の聞き書きをまとめて『北槎聞略』という当時は一級のロシア関連情報の百科全書ともいうべき書を編纂している。残念ながら一般公開されなかったので、ロシア情報は活かされなかったようだ。


19世紀になってからは、学問研究という観点よりも、産業振興の観点から、大英帝国を中心に精力的に有用な植物採集が行われるようになる。その拠点となったのがロンドンのキュー王立植物園であり、植民地現地には熱帯植物園(ボタニカル・ガーデン)である。


ムラサキシキブの果実はベリーだが人間にとって食用にはならない。そのため有用性の観点からは漏れ落ちるだろう。観賞用としては日本では愛好されているが、海外の状況は、はたしてどうだろうか?







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