(千葉県八千代市の飯綱神社の本殿 筆者撮影)
2017年あけましておめでとうございます。
今年の初詣は実家の近くの飯綱神社(いいづなじんじゃ)にお参りした。とくに考えがあったわけではないが、飯綱神社という名称が関東地方では、それほどメジャーではないと感じていることもその理由の一つである。
さすがによく晴れた元旦の午後だけあって、参拝の列は意外と長い。並ぶのが面倒くさいので、わきから本殿を拝礼して、柏手を打った。
「飯綱神社」をネット検索してみると、「飯縄神社」というものがでてくる。「飯縄」と書いて「いいづな」と読ませている。おそらく飯綱と飯縄は同じものをさしているのだろう。綱(つな)と縄(なわ)は似たようなものだ。
(高尾山薬王院の飯縄権現銅像 wikipediaより)
その飯縄神社の惣社は長野県長野市にあるのだそうだ。飯縄山に祀られているのが飯縄大権現。東京西郊の高尾山の薬王院(真言宗智山派)に祀られているのも飯縄大権現。高尾山は修験道のメッカであり、天狗の姿で知られる飯縄大権現は、中世以来、民間で信仰されてきた神仏習合の神である。
とくに戦勝の神として室町時代の足利義満や細川政元、戦国時代の上杉謙信、武田信玄などに進行されたとのことで、僧形の上杉謙信の兜の前立が飯縄権現像だったという。伊賀忍者の源流になったとか。
千葉県八千代市の飯綱神社も、もともとは飯縄権現だったそうだ。ということは、長野の飯縄神社の末社ということになると考えてよいのだろう。
(飯綱神社が建つ高台から見下ろす 筆者撮影
八千代市の飯綱神社は、萱田新田をみおろす高台のうえに建っている。戦国時代には、太田道潅が米本城や臼井城を攻撃する際に兵站基地と したとある。いかなる経緯でこの地に勧請されたのかは知らないが、境内には樹齢450年の大銀杏があり、1429年の創建とされる神社そのものもそれ年数がたっていると考えるのが自然だろう。
(樹齢450年の大銀杏 筆者撮影)
八千代市の飯綱神社には不思議なことに鐘楼がある。大晦日には除夜の鐘が撞かれるのだそうだが、神社に鐘とはなんとなく不釣り合いな印象も受ける。だが、飯縄神社がもともと飯縄大権現であり、神仏習合であったことを知れば、不思議でも何でもない。
(「神仏分離令」以前から残るお寺の鐘楼 筆者撮影)
明治維新が「宗教革命」でもあったことは、神仏分離令や廃仏毀釈の嵐が吹きまくったことに明らかだ。飯縄大権現もまた神仏習合の修験道が禁止され、神社とお寺に分離された後、飯綱神社として残ったのである。いわゆる「純化」が断行されたのである。これは全国各地の修験道についても同様だ。
境内にはまた「羽黒山・月山・湯殿山 参拝記念」の石碑が複数建っている。いずれに昭和と平成のもので比較的新しい。八千代市もまた船橋市と同様に、出羽三山信仰圏であるることを示すとともに、飯縄権現がそもそも修験道のものでったこととも関係があるのだろうか。
それはさておき、飯縄権現は羽の生えた天狗の姿形であらわされることも多い。いわゆるカラス天狗というものもある。ということになれば、同じく羽でもって空中を飛翔する鳥とは、まったく縁のないものでもなかろう。
というわけで、酉年(=鳥年)の本年の初詣先としては、飯綱神社は意外とふさわしいものであったかもしれないと、後付けながら考えてみる。
では、ことしもよろしくお願いします。
<関連サイト>
飯縄神社(長野市の惣社) 公式サイト
高尾山薬王院 公式サイト
萱田 飯綱神社(神社散歩)
・・ブログ記事
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