2017年5月12日金曜日

マンガ 『きのう何食べた?⑫』(講談社、2016)-まだまだ続くよこのマンガ


『きのう何食べた?』の最新刊は第12巻。すでに昨年(2016年)の10月に出版されているのだが、多忙のため、半年間も読まないままになっていた。

マンガだから、すぐにでも読もうと思えば読めなくはないのだが、なんとなく時間の余裕のあるときに読みたいという気持ちがある。それができるのは単行本であり、電子版であろう。連載中のマンガとはちがう楽しみ方を堪能したいのである。

さて、もうすでに12巻目である。料理と飲食というテーマは、人類に普遍的なものであって、その意味ではネタは尽きることはない。

人間は生まれたその瞬間から(・・いや、受胎したその瞬間からというべきか)、死ぬ直前まで生きるためにものを食べて飲む。料理をつくるのが誰であれ、一緒に食べる人がいようがいまいが、人は食べて飲む。TVのグルメ番組が定番ものであるのはそのためだ。マンガも同様である。

料理ものや飲食ものは、テーマじたいは普遍的であるとはいえ、キャラクターの設定と舞台設定がものをいう。その意味では、『きのう何食べた?』はじつに絶妙な設定である。作者本人もこれだけ長くつづくとは想定していなかったのではないかな。

このマンガが面白いのは、料理もさることながら、時間の推移をきちんと反映させている点。そもそも料理も飲食もプロセスであり時間を含むものだが、登場人物たちが永遠に年を取らない設定ではなく、主人公二人の男性の加齢と同時に、その人間関係も微妙に変化していく点にある。

第12巻では、美容師のケンジがあらたに始めた「出張カット」の話が登場する。自分を指名してくれるお得意さんもまた、年を取っていくのである。美容院まで行くのがおっくうになってきたお得意さんのカットのために自宅まで出向くサービス。時代の先端をいくサービスがナチュラルな形で開始されるのである。こういった時代の動きをさらっと取り入れたディテールが、このマンガの魅力の一つでもある。料理マンガであり、仕事マンガでもあるわけだ。

もちろん、料理とそのレシピも情報価値は高い。「スキヤキ」における牛肉としらたきの関係、「いかなっとうのアボガド丼」、「トマたま炒め」、「さつまいもご飯」など、食べてみたい、作ってみたいレシピが満載。

まだまだ連載はつづきます。






<関連サイト>

きのう何食べた?"なにたべ"公式ブログ

きのう何食べた? / よしながふみ - モーニング公式サイト

祝!画業20周年記念サイト よしながふみの漫画世界 (白泉社)
・・立ち読みできます!


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2015年の年末に「異種ジャンル」のマンガをまとめ読み

マンガ 『きのう何食べた ⑩』(よしながふみ、講談社、2015)-50歳台になっても自分で料理してスタイルを維持しつづける主人公

マンガ 『きのう何食べた? ⑨』(よしなが ふみ、講談社、2014)-平凡な(?)人生にも小さなトラブルはつきもの

マンガ 『きのう何食べた?⑧』(よしなが ふみ、講談社、2013)-一年に一回の楽しみはまだまだ続く!?

『きのう何食べた?⑦』(よしなが ふみ、講談社、2012)-主人公以外がつくる料理が増えてきてちょっと違った展開になってきた

『きのう何食べた?⑥』(よしなが ふみ、講談社、2012)-レシピは読んだあとに利用できます

『きのう何食べた? ⑤ 』(よしなが ふみ、講談社、2010)

『きのう何食べた? ④ 』(よしなが ふみ、講談社、2010)

『きのう何食べた?』(よしなが ふみ、講談社、2007~)


『檀流クッキング』(檀一雄、中公文庫、1975 単行本初版 1970 現在は文庫が改版で 2002) もまた明確な思想のある料理本だ

『こんな料理で男はまいる。』(大竹 まこと、角川書店、2001)は、「聡明な男は料理がうまい」の典型だ





(2017年5月18日発売の拙著です)



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