2018年2月18日日曜日

映画 『苦い銭』(2016年、フランス・香港合作)をイメージフォーラムで見てきた(2018年2月12日)-生きるために飯を食う、そのためにカネを稼ぐのが人生


映画 『苦い銭』(2016年、フランス・香港合作)をシアター・イメージフォーラムで見てきた。オリジナルのタイトルは『苦銭』なので、日本語のニュアンスに近いものがあるのだろう。

浙江省の湖州という町に出稼ぎに来ている中国人たちを描いたドキュメンタリー映画だ。生きるとは飯を食うこと、そのためにカネを稼ぐこと。それに尽きる。といっても出稼ぎの雇われ労働者の労賃は低く、彼らを雇用する零細企業の経営者とて富裕層とはほど遠い。まさに「働けど、働けど・・・」である。

映画の撮影された湖州は杭州のとなり、地理的には上海にも近い。中小零細の繊維産業の集積地帯のようだ。出稼ぎに来る中国人の出身地は遠く離れた雲南省や、それほど遠くはない安徽省、そして黄河の南に位置する河南省などの内陸地域。出稼ぎ先では、血縁だけでなく地縁がものをいう相互扶助の世界でもある。

上映時間は164分と長いが、そのほぼすべてが会話で成り立っている。効果音はなし。テーマ曲もなし。音楽は、零細の縫製工場で働いている際にかけられているBGMのみ。ナチュラルな会話のスピードが早く、日本語字幕がなければまったく理解できない。


『苦い銭』というタイトルから、いわゆる「絶望工場もの」かなと思っていたのだが、全編から悲壮感といったものがまったく漂ってこないのは不思議な感じもした。

生きるとは飯を食うこと、そのためにカネを稼ぐこと。その現実は、中国だろうと、それ以外の世界であろうと、変わりはないためだろうか。生きていくためには、厳しい現実であろうと、事実は事実として受け止めていかなくてはならない。そこにあるのは、逆境であろうと笑い飛ばすしかない精神的な強さだ。

2014年から2016年にかけて撮影されたドキュメンタリー映画だが、人民元の札束というキャッシュが登場する世界だ。ここ数年、急速に電子マネー化が進んでいると言われている中国だが、底辺に近い中小零細工場の世界は、いまだ現金の世界なのだろうか?

中国の現実を描いた映画であり、しかも人生という普遍的なテーマを描いた映画でもある。日本語字幕をとおしての理解に過ぎないが、なんだか異なる世界を描いた映画ではないような印象をもった。





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