2021年3月19日金曜日

レニ・リーフェンシュタールは100歳で48年ぶりとなる「最後の映画」を完成した

 
レニ・リーフェンシュタールの48年ぶりで最後の映画となったのが、『原色の海 ワンダー・アンダー・ウォーター』(2002年)である。なんと100歳で完成させた作品だ。原題は、Impressionen  unter Wasser(水面下のインプレッション)。

71歳で(!)ダイビングのライセンスを取得し、世界各地で撮りためてきた水中写真と水中映像を90歳のときに映画化したいと強く思い、100歳で完成させて、その翌年2003年に101歳で大往生を遂げたレニ・リーフェンシュタール。まさに「意志の勝利」というべき人生であったといえよう。 

45分間に編集された映像はとにかく美しい。最初に本人がイントロで語っている以外、ナレーションはいっさいなし。珊瑚礁の海の水中の映像とBGMだけが流れる。人間がつくった「文明」に汚されていない自然界そのものを、映像として見て欲しいという強い意欲の表れの結晶である。 

私自分も20歳台後半から30歳台半ばにかけて、カリブ海や伊豆や沖縄でダイビングした経験があるので、美しい映像を見ながら潜っていた日々を思い出しながら、水中世界に没入してしまう。 

『オリンピア2部作』(1938年)の次に完成した映画に『低地』(1954年)があるが(*この作品は見ていない)、興行的に成功せず、しかもナチスへの関与が疑われていたため不遇の時代を長く過ごすことを余儀なくされたために、48年ぶりの新作となったわけだ。 

『原色の海 ワンダー・アンダー・ウォーター』を完成させたことで、後世の評価は大いに変わることになったわけである。自分で人生を完成させたわけである。繰り返すが、まさに「意志の勝利」というべき人生であったのだ。 



『アフリカへの想い』(2000年)は、なんと98歳でスーダンのヌバを再訪して再会を喜ぶレニを追ったドキュメンタリー映画。60分。原題は、Leni Riefenstahl - Ihr Traum von Afrika(レニ・リーフェンシュタール アフリカの夢)。  

とにかく、その強靱な意志のチカラと旺盛な好奇心には驚かされるばかりだ。内戦下のスーダン。イスラーム化されて原始の美を喪失してしまったヌバたちの現在。 

帰還する際にヘリコプターの墜落事故で負傷したものの、回復してからすぐにモルディブに潜りにいったというのもすごい。 ヘリコプター事故で入院中のセリフがまた説得力がある。

「どんなことがあっても人生にイエスということ」
「どんな不運に見舞われても人生を愛し、肯定するのよ」

98歳の発言である。

「人生100年時代」などというフレーズが安直に使われるようになっているが、さすがに100歳まで現役を貫いた人は、そう多くあるまい。今後もそうだろう。 参考になるかどうかは別にして、こんな人が実際にいたのだと、記憶しておきたいものである。
 







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