『頭山満講話 立雲先生 大西郷遺訓(全)』(雑賀博愛編、土曜文庫、2019)を読む。100ページに満たない、文庫本サイズの小冊子である。
西郷隆盛を慕って、鹿児島で私淑した庄内藩士たちが聞き取った談話を1冊にまとめたのが『西郷南洲遺訓』。それを頭山満が評した講話の記録である。
初版は1925年(大正14年)。いまから100年近く前のものだ。西郷隆盛死してすでに150年に近い。
『西郷南洲遺訓』といえば、「幾たびか辛酸を経て志始めて堅し」である。座右の銘と言うべきか、この文言は心に刻みつけている。
大学時代に夢野久作にはまって、その作品のほぼすべてを読み尽くしたこともあって、久作の父であった杉山茂丸、そしてその盟友であった頭山満のこともよく知るにいたった。いずれも福岡の人たちである。もともと個人的には中道ではあるが、高校時代から右派的心情の持ち主であるからだ。
頭山満翁の人となりとエピソードの数々については、わが愛読書の1冊である夢野久作の『近世怪人伝』を繰り返し読んでよく知っていた。何をした人かではなく、その存在そのものが意味をもっていた人物だ。
とはいえ、講話というかたちで、頭山満のまとまった発言や談話を読むのは今回がはじめてのことだ。維新史を研究していた記者が、頭山満から一対一で聴き取ったものである。
維新の動乱のなか、西郷隆盛を慕っていたが、獄中にあったために西南戦争にはせ参じることのできなかった頭山満。その悔しい思いが、すべての原点にある。
その講評は、西郷隆盛の「敬天愛人」に代表される遺訓を踏まえ、人の道を説きながら、同時代の政治と社会のていたらくを批判したものだ。
その長い人生のなかで出会った人物たちの発言やエピソード、その豊富な体験から抽出された感懐は、真っ当であるのみならず、ときにそのユーモアに満ちた語り口には笑わされもし、大いに読ませるものがある。
西郷隆盛の遺訓に劣らず、じつに味わい深く、大いに納得させられるものがあるのだ。これからなんども折に触れ、繰り返し味読したいものと思う。
評論家の松本健一氏には頭山満の評伝がある。『雲に立つ ー 頭山満の「場所」』(文藝春秋、1996)がそれである。タイトルは頭山満の号であった「立雲」からとったものだ。残念ながら文庫化されることなく、埋もれてしまって現在に至る。
頭山満はつねづね若い人たちに「一人で居ても寂しくない男になれ」と語っていたという。それは、孤独に強いという意味以上のものであるようだ。わたくしもかくありたしと、自らに言い聞かせて今日に至っている。
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