ヴィーガン(Vegan)とは、完全なる菜食主義者のこと。ベジタリアンの極地である。タイトルの副題にあるとおりだが、段階に応じて4種類くらいに分類されるらしい。
わたしもできるだけ肉は食べないようにしており(・・とはいっても、まったく食べないわけではない)、魚と野菜を中心の食事は心がけている。まあ、ベジタリアンになりきれないベジタリアン志望者くらいの位置づけか。
ときどきヴィーガンも心がけるが、そばやそうめんもめんつゆは鰹だしなので、完全なヴィーガンではない。それほどヴィーガンはむずかしいのだ。
著者によれば、ヴィーガンになった人たちの動機は、動物虐待がイヤだからという理由が多いらしい。家畜とはいえ、動物を殺すのはイヤだ。動物を殺して、その肉を食べるなんて耐えられないのだ、と。
そこで、ジャーナリストの著者は、ヴィーガン取材以前からつづけていた「アニマル・ウェルフェア」についての取材を深めている。 「アニマル・ウェルフェア」とは、動物の福祉、つまり動物の立場にたって、適切に飼育されているかについての問題意識である。
鶏卵の飼育と養豚の現状、とくに日本の現状と「アニマル・ウェルフェア」との大きなギャップについては、読んでいて気が遠くなってくるのを覚える。日本は先進諸国のなかでも、大いに後れているからだ。
とはいえ、著者の立場はヴィーガン推進派のものではなく、あくまでも公平な立場から取材者としてヴィーガンをどう考えるかという点にある。したがって、その利害得失というか、メリットとデメリットの両面についても考察の対象とするのである。
著者は最終章で、栄養学の観点からのヴィーガンの評価を、栄養学者たちへの取材をつうじてまとめている。 その結論は、ヴィーガンだけでは栄養不足だということだ。とくに「ビタミンB12」と「ビタミンD」不足が問題。
というわけで、つまるところ和食がベストということになるのだが、和食においてもアニマル・ウェルフェアを十分に意識した食事が望ましいというというのは、きわめて穏当であり、しかも真っ当な結論である。
この本は、ヴィーガンのすすめではない。だが日本でもヴィーガンが意識されるようになっており、その現状をきちんと把握することは重要だ。
「アニマル・ウェルフェア」にかんする議論が本書の半分を占めているので、読む価値は大いにあるといえよう。 これこそが、現在の日本の問題なのだから。
目 次はじめに第1章 ヴィーガンとは?第2章 ヴィーガン食の開発で世界を狙え第3章 なぜヴィーガンになったのか第4章 産業として扱われる動物(1)― 卵を産む鶏たち第5章 産業として扱われる動物(2)― 豚たち第6章 鶏卵汚職事件 ― 日本がアニマルウェルフェアに後ろ向きな理由第7章 ヴィーガンは健康的なのかおわりに参考文献
著者プロフィール森映子(もり・えいこ)1966年、京都市生まれ。時事通信社記者。上智大学卒業後、1991年時事通信社入社。社会部、名古屋支社などを経て、1998年より文化特信部。2021年からデスク、編集委員。エシカル消費、動物福祉などをメインに取材している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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