2024年4月9日火曜日

『逆・タイムマシン経営論 ー 近過去の歴史に学ぶ経営知』(楠木建/杉浦泰、日経BP、2020)を読んで、リアルタイムに進行する事象は認知バイアスを意識をして冷静に観察し、見極める力を養うために事物の本質を考えることが大事だとあらためて認識する

 

前々から気になっていたが、積ん読状態になっていった『逆・タイムマシン経営論 ー 近過去の歴史に学ぶ経営知』(楠木建/杉浦泰、日経BP、2020)を読む。  

内容的にはすでに日経ビジネスオンラインでその趣旨は読んでいたが、あらためて書籍として読んでみると、リアルタイムに進行する事象を、人間に特有の認知バイアスを意識して観察することの重要性を認識することになる。 

著者たちが強調しているのは「同時代性の罠」。人間が生きているのは「過去」でも「未来」でもなく、いまこの「現在」であるが、リアルタイムで進行している事象には無意識のうちに多大な影響を受けている。 

ことビジネスのようにカネがからむ活動においては、なおさら「同時代の罠」に捕らわれやすい。(ビジネス以外の非営利組織も同様だが、経済活動の観点からいえばタイムラグがある)

バズワードに踊らされ、流行り物の経営施策に飛びついてしまいがちなのだ。 

著者たちは、おおきくわけて3つのトラップ(罠)として整理している。「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」の3つである。 

これを採用すれば勝てるという「飛び道具」いまは激動期だという「激動期トラップ」隣の芝生は青く見えるという「遠近歪曲トラップ」である。 

具体的な事例は、いずれもリアルタイムの事象を紹介した経済記事であるが、これらを現時点から「すでに過去になった現在」として読み返すと、人間というものはなんと愚かなものだと思ってしまうのだ。いまから考えるとアホやねえ、と。 

ところが、リアルタイムではそうは思えないのである。これがさまざまな罠がもたらす認知の歪みであり、本質的な思考を深めることなく、販売サイドのプッシュ攻勢に巻き込まれてしまうのである。

そのあげくは、なんでこんなもの買ってしまったのだ、大枚はたいてなんとやらというわけだ。 もちろん、これは企業活動だけでなく、個人の消費行動についても当てはまる。

リアルタイムに進行する事象は、つねに一歩身を引いて見て考えることをマインドセットにしておきたいものだ。 


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目 次 
はじめに 「逆・タイムマシン経営論」とは何か
第1部 飛び道具トラップ
 第1章 「サブスク」に見る同時代性の罠
 第2章 秘密兵器と期待された「ERP」
 第3章 「SIS」の光と影
 第4章 「飛び道具サプライヤー」の心理と論理
 第5章 「飛び道具トラップ」のメカニズム
第2部 激動期トラップ
 第6章 「大きな変化」ほどゆっくり進む
 第7章 技術の非連続性と人間の連続性
 第8章 忘れられた「革新的製品」
 第9章 激動を錯覚させる「テンゼロ論」
 第10章 ビジネスに革命はない
第3部 遠近歪曲トラップ
 第11章 「シリコンバレー礼賛」に見る遠近歪曲
 第12章 半世紀にわたって「崩壊」を続ける「日本的経営」
 第13章 人口は増えても減っても「諸悪の根源」
 第14章 海外スターCEOの評価に見る遠近歪曲
 第15章 「日本企業」という幻想
おわりに


著者プロフィール
楠木建(くすのき・けん)
一橋ビジネススクール教授。1964年生まれ。1989年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から現職。専攻は競争戦略。

杉浦泰(すぎうら・ゆたか)
社史研究家。1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、ウェブエンジニアとして勤務。そのかたわら、2011年から社史研究を開始。個人でウェブサイト「The社史」を運営している。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの



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