(油ギチギギチのカレーはうまい。だが・・・)
ミャンマー料理はうまい、しかし食べすぎには注意! というのが、いきなりの結論である。
ミャンマー料理といっても、多民族国家ミャンマー連邦のことであるから、料理のバラエティは実は思ったよりも広い。
しかしなんといっても、ミャンマー料理を代表するものは、さまざまな種類のカレーだろう。
いわゆる「油ギチギチのカレー」である。やっと久々に本場のミャンマー料理を食べることができて本当に幸せだ(*ブログの5月13日の記述を参照)。
12年前にミャンマーに初めていった際は、ヤンゴンでクルマと運転手をチャーターして1週間かけて、ヤンゴンからマンダレーとの往復を行い、その間バゴー、ゴールデンロックで有名なチャイティーヨー、バガンなどを回ったのだが、ミャンマー人の運転手はなぜか外国人はミャンマー料理を食べないものと頭からきめてかかっていたようで、連れて行ってくれたのは中華料理だけだった。
せっかくミャンマーにきているのだから「ミャンマー料理を食べてみたい」というと、運転手は喜んでミャンマー料理店に連れて行ってくれるようになった。
その時初めて食べたのが、魚のカレーであった。そしてお茶の葉のラッペットウなどなど。
しかし毎日食べていては胃腸がくたびれてしまうものだ。
今回の投資ミッションのテーマが「食品産業」であったこともあり、また団長が無類の東南アジア好きでミャンマーには毎年必ず最低1回は行くという人であることもあずかってか、昼・夜二回の食事はほぼすべてがミャンマー料理という、参加者が日本人にしてはたいへん珍しい配慮を示してもらったのは本当に幸いだった。
おかげでかなりの種類のミャンマー料理を実際に食べてみることができた。そしてまた参加メンバーがみな健啖ぶりを示してくれたのもありがたいことだった。うまい料理は、うまい、うまいといいいながら食べるにしくはないからだ。そしてまた多くの種類を試してみることもできる。
各種の肉(チキン、ポーク、マトン)や魚、エビのカレー、モヒンガー(ミャンマー版にゅう麺)、シャン・カオスエ(シャン族の麺料理)、スープ、レモンの葉のサラダ・・・などなど。
こうやって書いているだけでまた食べたくなってくるなあ。
さてカレーに話をもどすが、一般にミャンマー・カレーといっているが、本当はカレーではないらしい。
タイ料理のカレーとは根本的に異なり、唐辛子などのスパイスは使っていないマイルドな味である。また、タイ・カレーのような「ぶっかけ飯」スタイルではなく、カレーは器に入れて、ご飯とは別々に給仕される。
ミャンマー・カレーの「調理手順は、まず肉や野菜、魚を鍋に入れて油と一緒に煮込み、調味料や香辛料を入れる。水分がなくなるまで煮詰めていくと、やがて油が煮物の表面を覆うように、浮きあがってくる。これを油戻し(シャービン)と邦訳している」(『ミャンマー情報事典』、アジアネットワーク編、ゑゐ文社、1997より引用)、という。
「油ギチギチ」には理由があったのだ。
なるほど、ミャンマー料理と油がきってもきれない関係にあることがわかる。ふつうのミャンマー人は、料理が油でギチギチしてないと食べた気がしないらしい。油に素材の味が滲み込んでいるのだから当然だろう。
国産の良質なゴマ油なら健康に問題がないというが、マレーシアなどから輸入するパーム油の摂りすぎはカラダにはよくないらしい。これはタイでも問題になっていることだ。油の使いまわしがとくによくない。
ミャンマー政府の輸出禁止リストに「ゴマ油」があることを今回はじめて知ったが、理由はここらへんにありそうだ。
コメと食用油はミャンマー人にとっての、いわば生命線(ライフライン)であり、これらが十分かつ安価に供給されなくなったとき、いつ暴動になってもおかしくないというわけなのだ。だから、国内需要を上回る生産量がある場合しか、輸出が許可されないらしい。
そしてまたコメの価格は、タイ米が形成する国際コメ相場価格よりも低く設定されていることも政権の安定に寄与しているという。どこの国でも「米騒動」だけは避けたいのが、政権担当者に一致したマインドセットであろう。
ミャンマー料理をネタに書いてみたが、ふつうの日本人にとってはミャンマー料理の食べすぎは、食べ慣れないだけにカラダに悪いのはいうまでもない。
実際、うまいから食べすぎているうちに案の定、私も旅の後半からお腹の調子が少し悪くなってきた。自分だけは例外だ、というのは思い上がりもはなはだしい、というわけだ。
過ぎたるは及ばざるが如し。どう考えてもカラダにいいわけがない、しかしうまい・・
う~ん、まさにハムレットの心境である。
ミャンマー再遊記 (4)につづく
<ブログ内関連記事>
「ミャンマー再遊記」(2009年6月) 総目次
「三度目のミャンマー、三度目の正直」 総目次 および ミャンマー関連の参考文献案内(2010年3月)
(2015年10月4日 項目新設)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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