2010年2月1日月曜日

映画『海角七号 ー 君想う、国境の南』(台湾 2008年)をみてきた





 台湾で記録的大ヒットしたという映画『海角七号-君想う、国境の南-』を、先日東京・銀座のシネスイッチ銀座で見てきた。台湾では『タイタニック』に次いで歴代第2位、台湾映画としては史上最高の観客動員を達成した、という。

■製作:2008年台湾 130分
■監督・脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーション) 
■主演:范逸臣(ファン・イージャオ)、田中千絵、中孝介(あたり・こうすけ)他

 チラシからストーリーをそのまま引用しておこう。

過去と現代、日本と台湾を繋ぐのは
今はない住所"海角七号''宛での届かなかった七通の手紙・・・。


台北でミュージシャンとして成功する、という夢に破れ、台湾最南端に位置する故郷・恒春に戻った青年・阿嘉(アガ)。南国の陽気に包まれ無気力な日々を過ごしていたが、郵便配達の仕事をあてがわれた。阿嘉(アガ)は宛先不明の未配達の郵便物の中に、 "海角7号"宛ての小包を見つける。同封されていたのは、60年前、敗戦によって台湾から引き揚げる日本人教師が、愛しながらも別れなければならなかった台湾人女性を想って船上で綴った七通のラブレターだった。だが、今は存在しない日本統治時代の住所を知る者は誰もいなかった。
そんなある日、阿嘉(アガ)は日本人歌手・ 中孝介を招いて催される町興しライブの前座バンドに無理矢理駆り出された。オーディションで選ばれた他のメンバーは少女から老人まで。即席の寄せ集めで練習もままならず、やる気のない阿嘉(アガ)の曲作りも難航、監督役を務める日本人スタッフ・友子とも衝突してばかりだ。ライブの日は刻々と近づいていた。
バンドは無事ステージを務められるのか? 60年前の手紙は宛名の女性に届くのか? 南の空に虹がかかる時、小さな奇跡が起こる・・・。

 ◆日本版公式サイト
   【台湾映画】『海角七号/君想う、国境の南』日本上映(公開)予告PV
 ◆台湾版トレーラー 

 全国公開されているとはいえ、東京では単館のみの上映というのは、なんだか寂しい限りだが、確かに一般大衆向けの映画ではないかもしれない。

 前半はコメディとしての要素も多く、面白いことは面白いが、しかしなぜこの映画が台湾で大ヒットしたのかは、正直いってよくわからなかった。「60年前・友子にあてて書かれた手紙」の朗読は日本語、主役の一人である日本人・友子を演じる田中千絵のセリフは大半が北京語(普通話)で一部が日本語だが、セリフの大半は台湾語であるためだろうか。

 日本上映版では、台湾語のセリフは、字幕では、冒頭に・(ぽち)で表記されているが、圧倒的に台湾語のセリフが多い。台湾語が内輪のコトバだとすれば、北京語(普通話)は共通語であり、日本人を含めた外国人と話すときのコトバである。

 そして登場人物の一人は客家人。そしてまた先住民、こども、青年男子女子、中年男女、老人・・・。すべてが台湾人だ。

 ストーリーも俳優の演技も、なんだか"ぎこちない"ような感じがしていたからだ。自主製作映画のような雰囲気もだしていたからかもしれない。

 エンターテインメントだけを目的とした映画ではないが、かといって・・・


 基本的に、この映画は音楽映画なのである。主演のファン・イージャオは台湾の歌手、特別出演している中孝介(あたり・こうすけ)は奄美大島出身で、台湾でも人気の高い日本人歌手、そして映画自体、促成のバンドがなんとかコンサートに向けて、不協和音を奏でながらも、まとまっていく、という内容だ。

 コンサート当日、台湾人による前座のバンド自体が盛り上がってゆく。

 そしてエンディングに向けて「野ばら」の合唱をつうじて、なぜだか、じ~んとした気持ちになって、目頭が熱くなり、涙があふれてくるのを抑えることができなくなった。特別に涙もろい人間ではないはずなのだが・・・まさかこの映画で泣くとは思ってなかったから・・・


 何に感動したのかと問われても、コトバで表現するのは難しいのだ。60年の時を越えて甦る恋愛と惜別が、現代と交差し合い、心の奥底にふれるものがあるからなのだろうか。いやそんな難しい話ではないのかもしれない。アタマではなく、ココロで感じる映画なのだ。

 そしてわかった。すべての世代の台湾人にとって、そして日本人にとっても、心の琴線に触れるものがあるのだ、と。

 静かな感動がこみ上げてくる、そういう映画である。



P.S. 主演の一人を演じる、田中千絵は、単身台湾に渡って女優として活躍しているようだ。
 韓国で活躍したユミン(=笛木優子)もそうだが、日本女性は美しく、そしてたくましい! 今後も頑張ってほしいものだ。

 なお、田中千絵は、ブログやウェブサイトを複数書いているので紹介しておく。

田中千絵 「台湾・一人修行」 - 楽天ブログ(Blog)
田中千繪オフィシャルホームページ
中国大陸のブログ
台湾のブログ  

 中孝介(あたり・こうすけ)という歌手のことはいままで知らなかったが、素晴らしい歌唱力の持ち主で、日本だけでなく、台湾でも人気が高いという理由も十分にうなずける。
 オフィシャル・サイト


 挿入曲の「野ばら」については wiikipedia日本語版の説明が参考になる.

挿入歌の『野玫瑰』(野ばら)は、日本統治時代の小学校での代表的な唱歌であり、台湾が日本統治を離れた後も、中国国民党軍政権に排斥された日本文化の中で、ドイツのフランツ・シューベルトの作曲ということで、かろうじて日本統治世代に受け継がれてきたもので、日本と台湾を結び付ける象徴となっている。「映画の上映中には、台湾の日本統治時代を生きた高齢者の多くが、口ずさんだ」と台湾のメディアで報じられた。


<関連サイト>
 
海角七號終結篇(YouTube)
・・ラストシーンに向けての「野ばら」の台日合唱主唱は中孝介。セリフは日本語、中文字幕つき。泣けるシーン

中国・アジア新興国特集 [ 台湾 アジア一の親日国 ] 【第8回】 中国シフトへの反動か 強まる日本時代へのノスタルジー(渡辺千晶、2010年7月1日)
・・『海角七号』が取り上げられている

(2014年5月17日 項目新設)







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