2010年2月2日火曜日

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる

 久々に宋文洲(そう・ぶんしゅう)さんの話をライブで聞いてきた。先週木曜日、1月28日のことだ。会場は、東京・品川のプリンスホテル。講演タイトルは、「「NO.2経済大国」なんか捨てろ!」

 宋文洲さんは、『やっぱり変だよ日本の営業』(日経BP社、2002)『ここが変だよ日本の管理職』(東洋経済新報社、2005)など「ここが変だよ日本人」シリーズで有名になった経営者、本人は出版社がつけたタイトルなので自分は好きではないといっているが、本が売れて会社も儲かったのだから、まあそれはそれでいいではないか。本を出すというのは、究極のトップ営業である。

 自ら創業したソフトブレーンの経営者向けセミナーで、ゲストスピーカーとして呼ばれるのも何か変な感じもする、と自ら述べていたが。
 宋文洲さんは、大株主としてオーナーではあるが、すでに経営者は引退してマネジメント・アドバイザーとしての肩書きのみ残し、現在は北京に拠点を移して、月に一回日本と往復しているようだ。

 主催者であるソフトブレーンによる内容紹介にはこうある。

「大」には個性も理念もない。「経済大国NO.2」にこだわることは「副社長」や「業界No.2」にこだわるようなもので、日本人(社員)の幸せと関係が無い。 不況を克服したいならば、まず「大」へのこだわりを捨て去ることだ。 日本人に宋文洲が敢えていう。「NO.2経済大国」なんか捨てろ!

 宋文洲さんの話をライブで聞くのは何年ぶりだろうか。

 非常に「元気のでる」内容の講演会であった。

 講演内容は、だいたい以下のとおりである。私の聞きたいことだけメモ書きしたものを再現してみよう。


 為替レート一つでGDPはすぐに数値が変わってしまう、こんな数値目標だけを目標に人生を生きていくのはバカバカしいじゃないか。(・・といきなりジャブを打ってきた。いいねー、もっとガンガン打ち込んできてくれー)。
 
 そもそも中国人は個人主義だから、国全体がどうのこうのなど、日頃は意識することなどない。中国自体が道州制みたいなものだから、一つの国として考えるのは意味がないのだ。

 まさにいま現在、高度成長期にある中国は、みなが起業して社長になりたがる国である。様々な問題を抱えているから、いずれ中国も成長は鈍化するだろう。しかし、成長が鈍化して久しい現在の日本のように、人をねたんだり、うらやましがたりしない。

 また、みなが社長になりたがるような国だ。そんななかに、いま頃日本人がのこのこ出ていって成功するのは難しいというものだ。簡単に儲かるところではないのだ。

 高級品と価値ある低価格品の二つに完全に二極分化しているのがいまの中国市場の実態、「日本製品」というコトバ自体に大きなブランド力があるが、高級品だけでは市場が限定される。

 資生堂は、中国では高級品としてのブランド力が大きいが、最初から富裕層相手の商売から始まったのではない。まだ所得水準も低かった頃から、下から勝ち上がってきたのである。

 日本国内だけを相手にしていては、もはや高収益は望めないだろう。ユニチャームもそうだが、国際的に展開している日本企業の業績が良い。

 日本はモノづくりでしか生きられない、なんていう思い込みは捨てることだ

 たとえばユニクロは、(宋文洲さんが現在居住する)北京でも売れているが、けっしてモノづくり企業ではない。製造は中国企業、ユニクロがやっているのは企画とコーディネート機能である。

 情報はつねに現場にしかない。思い込みはダメだ、中国市場を知りたければ中国に行け、というのは当然のことだろう。

 日本にいては何も見えてこないのだ。現場に身を置いて、現場を見よ。固定観念を捨てよ。


 まあ、ざっとこんな内容だったろうか。
 
 キーワードは「個人主義」である。国がどうとかこうとかは関係ない、個人こそ重要である。一人一人が個人を中心に生きていくこと。
 個人で考えて、個人で行動し、個人で意志決定する、これこそ日本人に必要なのである。

 しかし、経営者向け講演会でこんな内容の話をしなければならないというのも、宋文洲さんの心の中は複雑なものがあるのではないかな、とも思う。

 個人主義が当たり前の中国人からみれば、日本人は歯がゆいに違いない。経営者ですら個人で動けない現実・・・関西人なら、こらあかんわ、とため息つきたくなるとこだろう。

 集団思考(Groupthink)が問題の根源であることは、HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)のケーススタディで、ケネディ大統領時代の「ピッグス湾事件」を取り上げて議論の材料としているので、知っている人もいるだろう。意志決定は最終的に個人が行わねばならないのである。

 もちろん、自分が個人主義で生きるということは、相手も同じく個人主義であるということを前提にしなくてはならない。だから五分五分なのだ、という指摘も、が宋文洲さんは付け加えていた。
 日本人はすぐ誤解するが、個人主義は利己主義ではないのだ。

 私は、この講演会のメッセージは、ずばり「NO.2」なんか捨てろ!と受け取った。個人中心に生きることは、すでに当たり前だと思っているからだ。
 どんな狭い範囲の世界であってもどんな小さな会社であっても、 「NO.1」になるべし! 強くそう思ったのである。

 英語でいえば my own boss、日本語でうまい表現がないものかなあ。
 「あんたが大将」、ということかな??








P.S. 中国人の個人主義などなど 

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           宋 文洲

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 宋文洲さんは1963年生まれで山東省出身。山東省出身者の気質は、どんなものか。孔子が生まれた曲阜をもつ山東省は、学問志向の高い気質をもっているが、その点は北海道大学に国費留学した宋文洲さんにも当てはまるだろう。

 それぞれの出身地による気質については、ジャーナリストによる 『出身地でわかる中国人』(宮崎正弘、PHP新書、2006)のほか、上海出身のジャーナリスト莫邦富(もー・ばんふ)氏による『中国全省を読む地図-22省・4直轄市・5自治区・香港・マカオ・台湾-』(莫邦富、新潮文庫、2001)など。

 中国革命の立役者であった孫文は、その主著である『三民主義』(安藤彦太郎訳、岩波文庫、1957)のなかで、「中国人はひとにぎりのバラバラな砂だ」(下巻 p.170)と嘆いている。"個人"主義の最たるものであるが、これはおそらく、孫文が非常に深い関係をもっていた日本人と対比しての発言だろう。
 
 中国人の個人主義の本質に知りたければ、『小室直樹の中国原論』(小室直樹、徳間書房、1996)が必読書である。中国人の人間集団は、個人を中心に幇(パン)情誼(チンイー)関係(グワンシ)、知り合い(友人)という「同心円構造」の「多重世界」である。

 幇(パン)から順番に、関係の度合いが薄くなってゆく。幇の内側は絶対の世界、幇の外側は相対の世界。

 そして地縁を越えた血縁集団としての「宗族」(そうぞく)が存在する。

 この幇と宗族の二つが、中国人の人間関係を理解するカギである、と小室直樹は結論している。幇の外、宗族の外の人間は、中国人であってもソト側の人、日本人のいう外人といっても構わないような存在であるが、宗族でなくても情誼(チンイー)、関係(グワンシ)、知り合いとなれば、ウチ側の人間となる。



 この点に関しては、友をえらばば中国人!?』(篠原 令、阿部出版、2002)が非常に参考になる。中国人の人間関係は、義侠心が大きな意味をもつ「三国志」の世界そのものである、と。ついでに篠原氏による妻をめとらば韓国人!?』(文春文庫、2004)も面白い。

 しかし、『小室直樹の中国原論』も『中国人!?』も『韓国人!?』も、ともに品切れで在庫なし、というのは残念だ。

 本当に読んで意味のある本が売れずに、どうでもいいような本ばかり粗製濫造されて忘れ去られてゆく現状は、なんとかできないものだろうか・・・











<ブログ内関連記事>

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない

NHKスペシャル 「“中国人ボス”がやってきた-密着 レナウンの400日」(2011年10月23日) を見ましたか?

「個人と組織」の関係-「西欧型個人主義」 ではない 「アジア型個人主義」 をまずは理解することが重要!



PS 政治と経済の関係

宋文洲さんの経済やビジネスにかんする話はいいが、政治にかんする話には鼻白むものがある。『二枚舌の隣人』宋文洲と尖閣諸島の踏み絵(やまもと いちろう BLOG 2013年12月2日)を読んで、宋文洲さんには、はなはだ失望した。しかし、これまた中国人研究の一材料とすべきであろう。好き嫌いは別にして外科医のように冷静に。

 (2013年12月13日 記す)





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