2010年2月6日土曜日

本の紹介 『建築家 安藤忠雄』(安藤忠雄、新潮社、2008)-独学で自らの道を切り開いてきた男の人生




自らの道を切り開いてきた男の人生は、泥臭く、しかしすがすがしい

 大阪が生んだ世界的建築家による初の自伝。

 読んでいて、ほんとうに勇気づけられる本だ。

 プロボクサーとしての道を断念して、独学で建築家への道を目指した高卒の若者は、世界を放浪してホンモノを目に焼き付けて、自分の事務所を開業する。

 後に、東京大学教授として行った講義録のタイトルではないが、まさに連戦連敗』(東京大学出版会、2001)の建築家人生であり、発注者の存在する建築の世界が生やさしいものではないことを語ってやまない。これは現在でも同じらしい。日々が闘いと挑戦の日々なのだ。

 ビジネス界でいえば、ユニクロ会長の柳井 正『一勝九敗』(新潮文庫、)と同様といえるだろう。

 自らの道を切り開いてきた男の人生は、泥臭く、しかしすがすがしい。
 建築で世界と闘う男の生き様を描いたこの自伝は、とくに若い人にはすすめたい本だ。


<初出情報>

■bk1書評「自らの道を切り開いてきた男の人生は、泥臭く、しかしすがすがしい」投稿掲載(2010年2月5日)

(*再録にあたって一部字句を修正した)


<補足情報>

 安藤忠雄(1941~)、大阪市港区生まれ。コンクリート打ちっ放し建築を得意とし、世界を代表する建築家。東京大学特別栄誉教授。公式サイト「TADAO ANDO」(日本語)、作品集は「安藤忠雄建築研究所のページ」を参照。






PS 2015年7月に「炎上」した国立競技場改築問題における安藤忠雄氏の「残念」な振るまい

建築の専門家である安藤忠雄氏が審査委員長として決定した東京・代々木の国立競技場改築問題。ザハ・ハディド氏の斬新な新国立競技場プランの施行費が、当初予定の1,300億円から2520億円に肥大化した件について国民から大批判が起こっている。

にもかかわらず審査委員長であった安藤忠雄氏は説明責任を回避し逃げ回った。まさに「敵前逃亡」である。この件によって、安藤氏の評判も地に落ちたというべきだろう。

もちろん、それによって建築分野における安藤氏の功績がすべて否定されるわけではないし、本書『連戦連敗』の価値もなくなるわけではないが、日本の建築家としては一般での知名度も高かった安藤氏の評価が回復することは期待しにくいのではないだろうか。

「戦後70年」の節目となる2015年、撤退戦のできない無責任体制の事例がまた加えられることとなってしまった「国立競技場改築問題」。安藤忠雄氏は、「無責任体制・日本」の象徴として、すっかり「残念な人」になってしまったのである。

(2015年7月17日 記す)


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「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」


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Where there's a Will, there's a Way. 意思あるところ道あり

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ

(2014年8月21日 項目新設)


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