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2010年7月30日金曜日

書評 『独学の精神』(前田英樹、ちくま新書、2009)-「日本人」として生まれた者が「人」として生きるとはどういうことか




日本人として生まれた者が人として生きるとはどういうことか、身にしみて考えるために

 自分の身ひとつを通じて、自らの意思によって、自分の身ひとつに身につけたものこそ、本当に生きるために必要なものである。

 それこそが本当の学問であり、職人の手技であり、コメ作りに代表される農業である。そして、これを可能とするのはただひとつ、著者のいう「独学の精神」のみだ。

 著者は最初の二章で、二宮尊徳、本居宣長、僧契沖、伊藤人斎、中江藤樹、内村鑑三、パスカル(・・ここはフランス文学者らしい)などを引き合いに出し、論理や理屈をもてあそぶ「からごころ」ではなく、人間として必要なものは二宮尊徳のいう「中庸」の道であり、本居宣長のいう「まごころ」あるいは「やまとごころ」であることについて考える。

 この最初の二章は引用が多く読みにくいかもしれないが、腰を据えてじっくりと、これら古人のいうところを味わってみたいものである。

 つづく第3章で、昔ながらの職人の手技を重んじる大工の手仕事、第4章で、江戸時代の代表的な農書である『農業全書』を書いた宮崎安貞を取り上げ、コメ作りを代表とする日本の農業のもつ意味について考える。この二章は、経験のもつ意味について考える文章であり、比較的読みやすいはずだ。

 しかし思うに、著者の説くことを実践するためには、「学校という近代制度」ほど馴染まないものもあるまい。「ほんとうに大事なことは何ひとつ教えることなどできない」からだ。

 もし可能であるとすれば、第1章と第2章に登場する古人たちのように「私塾」という形で師と門人の関係として、あるいは「職人」として師と弟子の関係になるしか方法はないのだろう。

 自分が生きるために必要なものを、真似び、盗み、そして生きた手本にしたがって繰り返し、繰り返し鍛錬するよりほかに方法はない。芭蕉のいうように、「古人の求めたる所を求める」ことを通じて「独学」するのみである。

 著者の説くところをさらに敷衍(ふえん)すれば、私見だが、現代人であるわれわれに可能な方法は、コメを中心とした和食を、日々の料理として自ら作り、食べることではないかと思っている。料理もまた素材から味を引き出すための手技であるから。

 本書にあと一章欲しかったとすれば、それは著者が鍛錬してきたという新陰流剣術などの武術についてだ。本書ではまったく語られていないが、著者が本書に述べた見解を持つように至ったのは、剣術の鍛錬が基礎にあるからだろう。武術の鍛錬もまた、日本人の「独学の精神」を作り上げてきたものだ。著者は言外にそう語っているのだと私は思う。無駄をそぎ落とした、まさに抑制の美学である。

 新書本にはあるまじき内容の濃い一冊である。現代という時代に疑問をもち、本来あるべき姿に一歩でも立ち戻るためには、どこから手をつけたらいいのか、模索している人にはぜひ手にとってみてほしい本である。

 日本人」として生まれた者が、「人」として生きるとはどういうことか、身にしみて考えるために。


<初出情報>

■bk1書評「日本人として生まれた者が人として生きるとはどういうことか、身にしみて考えるために」投稿掲載(2010年7月25日)
■amazon書評「日本人として生まれた者が人として生きるとはどういうことか、身にしみて考えるために」投稿掲載(2010年7月25日)

*再録にあたって、加筆修正を行った。






<書評への付記>

 私が読んだのは、2010年4月の第3刷。2009年2月の初版第1刷から1年強で3刷というのは、この手の本にしては売れている。
 ホンモノを求める欲求が、日本人のなかに再び生まれつつあることの現れではないだろうか。

 著者はフランス文学者、言語学者のソシュールの思想や映画や絵画などの造詣が深い。本書では横文字はいっさい使わず、もっぱら日本の江戸時代の思索者と現代の職人に焦点を絞って、「独学の精神」について深い思索を行っている。 

 著者はまた、新陰流剣術の遣い手でもあるという。「新陰流・武術探求会」を主宰、尾張柳生家伝来の新陰流を稽古しているという。この面にかんする著者の活躍は存じ上げていないが、私自身、合気道をやっていたこともあり、武道家で、しかも知性派の人物には共感を感じる。
 著者の武術にかんする思索は、『宮本武蔵 剣と思想』(前田英樹、ちくま文庫、2009)を読まねばならないだろう。これはぜひそのうちに読んでみたい。

 「私塾」について。本書で取り上げられた、二宮尊徳、本居宣長、僧契沖、伊藤人斎、中江藤樹、内村鑑三いった「独学の精神」の持ち主たちはみな、「私塾」という形で、師と弟子の関係で教えを説いた。アカデミックな官学の世界で身を立てようなどとはいっさいしていない。のちにお上から声がかかることがあっても、基本は「私塾」であり、「独学の精神」をもった門人たちによって経済的にも支えられていた。

 『私塾のすすめ-ここから創造が生まれる-』(斎藤孝/梅田望夫、ちくま新書、2008)という対談本でもでている。インターネット時代の現在、私塾という形が、「独学の精神」を涵養するうえで、もっとも有効なメソッドであるとこの本の著者たちは熱く論じあっている。

 二宮尊徳については、このブログでも先日とりあげたばかりである。成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日) (4) 間奏曲-過去の断食参籠修行体験者たちの記述を参照されたい。二宮尊徳は、成田山新勝寺で21日間の断食参籠修行を成就している。

目 次

第1章 身ひとつで学ぶ
 金次郎の独立心  学校嫌いこそ正しい  なぜ勉強するのか  
 「思考力」という悪い冗談  「読解力」のおかしさ  
 読むことはどんな技なのか  「基本」はどこにある
第2章 身ひとつで生きる
 葦のように考えよ  知らざるを知らずと為せ  独学者であること
 「国際性」に独立などない  身を立てるとは  死んだ人のありがたさ
第3章 手技に学ぶ
 大工仕事は貴い  教える愚かさ  師匠の必要、不必要
 職人は何でも知っている  「独創」は無意味である  
 何が<努力>なのか
第4章 農を讃える
 狩猟の悲しみ  農の喜び  稲と生きる  植物的であれ
 米を食べよう  真理の単純さ


著者プロフィール

前田英樹(まえだ・ひでき)
1951年大阪生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。現在、立教大学現代心理学部教授。専攻はフランス思想、言語論。言語、身体、記憶、時間などをテーマとして映画、絵画、文学、思想などを扱う。新陰流剣術の筋金入りの遣い手でもある。新陰流・武術探求会主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<ブログ内関連サイト>

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日) (4) 間奏曲-過去の断食参籠修行体験者たち
・・二宮尊徳についてやや詳しく取り上げた

『農業全書』に代表される江戸時代の「農書」は、実用書をこえた思想書でもある

カラダで覚えるということ-「型」の習得は創造プロセスの第一フェーズである
・・合気道を中心に

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋

書評 『狂言サイボーグ』(野村萬斎、文春文庫、2013 単行本初版 2001)-「型」が人をつくる。「型」こそ日本人にとっての「教養」だ!

「三日・三月・三年」(みっか・みつき・さんねん)
・・何ごとも「継続はチカラなり」。3日、100日(≒3ヶ月)、1,000日(≒3年)。
「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とする」(宮本武蔵)

書評 『大使が書いた 日本人とユダヤ人』(エリ・コーヘン、青木偉作訳、中経出版、2006)
・・イスラエルでは人口比では日本以上に日本武道が普及していること
 
「特攻」について書いているうちに、話はフランスの otaku へと流れゆく・・・
・・フランス人は日本武道に親近感をもっていること

書評 『プーチンと柔道の心』

(2013年12月20日、2016年1月3日 情報追加)







(2012年7月3日発売の拙著です)








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