2010年6月18日金曜日

書評 『日本は、サッカーの国になれたか。電通の格闘。』(濱口博行、朝日新聞出版、2010)




世界のサッカー・ビジネスを支えてきた電通の当事者による人物中心の回想録

 日本の、そして世界のサッカー・ビジネスを支えてきた電通の当事者が回想し、今後の展望を語る裏面史。本書のタイトル自体が、いかにも電通らしいコピーになっている。

 FIFAワールドカップに代表されるサッカービジネスは、ベースボールとは違って、サッカーが世界中で親しまれているスポーツであるだけに、スポーツビジネスのなかでは別格の存在であり、オリンピックと並んできわめつけに注目度の高いイベントである。
 世界的なイベントをプロデュースし、広告代理店業を越えた権利ビジネスとしての側面も強いコンテンツビジネスをマネージする電通は、まさにサッカー・ビジネスの誕生期から現在に至るまでの、バックヤードのメイン・プレイヤーであるといえるだろう。
 こうしたサッカー・ビジネス形成史の生き証人である著者による本書は、関わった人たちを実名で紹介する回想を記すことによって、ビジネスマンたちやサッカー関係者が、日本のサッカーを国際水準にするために、いかに奔走してきたかを当事者感覚で知ることができる。
 『W杯に群がる男たち-巨大サッカービジネスの闇-』(田崎健太、新潮文庫、2010)とあわせて読むと、サッカービジネスの舞台裏をよりよく知ることができるだろう。

 また、ビジネスマンの仕事というものがどういうものかを伝えてくれる本として、広く若い人にも読むことを薦めたい。
 「虎穴に入らずんば虎児を得ず」、グローバルビジネスにおいては現状維持は衰亡への道であり、リスクを取らなければ未来はないということも。






<初出情報>

■amazon書評「世界のサッカー・ビジネスを支えてきた電通の当事者による人物中心の回想録」投稿掲載(2010年6月17日)
■bk1書評「世界のサッカー・ビジネスを支えてきた電通の当事者による人物中心の回想録」投稿掲載(2010年6月17日)

*再録にあたって、文章に手を入れた。


<ブログ内参考記事>

書評 『W杯に群がる男たち-巨大サッカービジネスの闇-』(田崎健太、(新潮文庫、2010 単行本初版 2006)