ノラネコの生態に学ぶことは実に多い。
すでにこのブログでは、「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」-ノラネコ母子に学ぶ「学び」の本質について において、「学び」(ラーニング)の本質について考えてみた。
今回は、ノラネコの「テリトリー感覚」について考えてみよう。
ノラネコ一匹の行動範囲は、半径 500m程度の広さをもっているといわれる。このエリアになかに寝ぐらやエサ場が確保されているのだと。
なぜかノラネコは自分の居場所を決めて、かならず一日に一回はそこを訪れることがスケジュールに組み込まれているようだ。もちろん毎日でない場合もあるが、そのネコ、そのネコごとに固有の favorite place が決まっており、ほかのネコがそこに入り込んできたり、また自分が来る前にほかのネコが居座っていたりするのが極度にイヤがる。
そもそもネコは、子ネコ時代は母ネコと一緒に行動しているが、成長して乳離れを強いられたあとは、基本的に繁殖期を除いては、一匹で生活するようになる。平常時においては、ネコは他のネコが側に寄ってくるのがキライなのだ。孤高な生き物なのである。
ただし、いわゆる「ノラネコの集会」とよばれるものがあって、夜中に一定の距離をたもちながらノラネコが一カ所に集まっていることがある。その理由はいまだに解明されていないとか。
では、ノラネコのテリトリー感覚について、具体的な事例でみてみよう。
■事例(1) マンホールのふたという居場所をめぐるキジトラどうしの攻防
傍若無人にシマ(=テリトリー)に侵入してきたシロ胸ネコを威嚇するキジトラ。
実効支配している自分のシマを守るのは当たり前。
クロキジネコがマンホールのうえを確保。なぜか気持ちがよさそうだ。
こちらに気がそれているあいだに、シロ胸ネコが接近中。背後からの進入にクロキジネコは気づかず。スキあり!
シロ胸ネコが、仁義も切らずに侵入、マンホールに上陸完了。傍若無人な態度にクロキジネコが怒り心頭。2ちゃんねる風にいえば、「ごるらあ」と威嚇。
自分の居場所に不法侵入してきたことに対する怒りと、距離感のわからないヤツに対する不快感であろう。
クロキジネコの怒りの表情を凝視していただきたい。
■事例(2) クロネコどうしの「間合い」の取り方
クロネコどうしがにらみ合っている状況。
上空から撮影したが、「間合い」をとって、接近しないようにしている。この写真では、だいたい 5~6m の「間合い」だろうか。
写真からはわからないかもしれないが、写真上部のクロネコの目は写真下部のクロネコを見据えている。
クロネコどうしの「間合い」に注目。近寄りすぎるとこういうことになることもある。お互いガンを飛ばしあって威嚇している。意図せざる遭遇か?
■ノラネコのテリトリー感覚から思うこと
ノラネコですら自分のシマを守っているのに、なぜ日本は自分のシマの一つも守ることができないのか?
これは、本年2010年9月に発生した、中国漁船(を装った工作船)による海上保安庁巡視艇に対する故意の衝突行為に端を発した事件についての感想である。
日本政府は、固有の領土である尖閣諸島の周辺海域に不法侵入してきた中国漁船の対応を完全に誤った。
国民の大多数の意見に反して中国政府におもねり、逆に中国政府のつけ上がりを招くという無様な失態を重ねながらも、自らのメンツを守るため、国民を愚弄し続けている日本政府についてである。
ところで日本語のシマというコトバは、島という漢字をあてて island の意味で使うこともあるが、もともとはテリトリーをあらわすコトバのようで、縄張りという意味もある。スラングでは「オレのシマを荒らすな!」といったりもする。
沖縄では、シマとは島のことであり村のことでもあるようだ。
また、会社勤めをした人は知っているだろうが、オフィスの机の並びのことをシマという。この場合は島という意味かもしれないが、「うちのシマは・・」などという会話が OL(・・これは死語か)のあいだで交わされていたものである。シマとは、ある種の対抗意識を生み出す存在であるようだ。
ちょっと話がそれたが、ノラネコもまた自分のシマが荒らされるのを極度にいやがる。その場所を所有しているわけでなく、いわゆる実効支配しているのに過ぎないのだが、よそのネコに侵犯されることには、むき出しの怒りを表すのである。
それに比べて、ノラネコの気概を忘れた日本人。最近の事件によって、ようやく目が覚めてきたようだが、本能を忘れた人間、本能が麻痺してしまった日本人はいったいなんなのだ。飼い慣らされた飼いネコか!
果たして日本人が本来もつ気概という DNA にスイッチが入るのかどうか・・・
ネコ可愛がりされて甘やかされた飼いネコではなく、一匹で生きるノラネコとしての気概にこそ倣いたいものである。
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賢者が語るのを聴け!-歴史小説家・塩野七生の『マキアヴェッリ語録』より
・・「自らの安全を自らの力によって守る意思をもたない場合、いかなる国家といえども、独立と平和を期待することはできない。なぜなら、自ら守るという力量(ヴィルトゥ)によらずに運(フォルトゥーナ)にのみ頼るということになるからである」(ニッコロ・マキャヴェッリ 『君主論』より)
(2016年12月1日 情報追加)
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