「きょうは何の日?」なんていうと、TV番組のコーナーのタイトルみたいですね。
答えは先に行っておきましょう。はい、きょうは「ユダヤ新年」のはじまりです。ユダヤ暦のお正月ですね。
正確にいうと、昨日(西暦2011年9月28日)の「日没」から、ユダヤ新年ローシュ・ハ・シャナ(Rosh Ha Shana)が始まりました。
したがって、本日(2011年9月29日)と明日(9月30日)は、日本国内のイスラエル大使館など政府機関などはみなお休みになります。イスラエル国内は当然のことながらお休みです。
ちなみに、日本でも古代では、一日は「日没」から始まっていました。一日は夜明けとともに始まるという時間意識がいつごろ定着したのか知りませんが、日没から夜明けまでの「夜」を大切にするのは、古代世界には共通していたようですね。
以前、このブログに 皇紀2670年の「紀元節」に、暦(カレンダー)について考えてみる と題して、日本を含めた各民族や宗教のカレンダー(暦)について、やや詳しく書いてみました。「ユダヤ暦」についても触れています。
しかしなんといっても、天地創造から数える「ユダヤ暦」では 5772年(!)というのはスゴイですね。日本は皇紀 2671年、仏暦 2554年、西暦だと2011年、イスラーム世界のヒジュラ暦では 1432年になります。いかにイスラームが若い宗教であるかがわかります。
ついでにいうと、イスラームの「ヒジュラ暦」は純粋太陰暦なので、太陽暦である西暦とは毎年ズレが生じますが、いっさい調整をしません。ですから、断食月であるラマダーンが今年のように真夏に重なると、なかなかやり過ごすのがたいへんなわけですね。
ヒジュラ暦など純粋太陰暦は、365日を単位として循環している農事暦として使うには問題があるようですね。書評 『新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒-』(菅瀬晶子、NIHUプログラムイスラーム地域研究=監修、山川出版社、2010)
で、「中東のキリスト教徒が、イスラーム世界で使われる太陰暦ではなく、太陽暦に基づく農耕暦にしたがって古代から祝祭を行ってきたということが実に興味深く思われた」という文章を書いてますが、西暦が太陽暦であることのメリットは、農事暦という観点から捉えることもできるようです。
ユダヤ暦は太陰太陽暦で、農事暦のようです。ユダヤ教の聖典である『タルムード』の「ミシュナ」第一部「ゼライーム」(種子)は「農耕にかんする書」で全部で11章からなっています。
『タルムード』とは、「聖書」成立以降にラビたちによって口伝で伝承されてきた記録を文字にして体系化したもの。「聖書」冒頭の「モーセ五書」(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)に規定された成文法の施行細則のようなものと考えたらよいでしょう。
参考のために「ゼライーム」(種子-農耕にかんする書)の11書の細目を紹介しておきましょう。
1. ベラホート: 祈祷
2. ペアー: 畑の刈り残し・落ち穂
3. デマイ: 十分の一の献げ物を納めたか否か疑わしい作物
4. キルアイム: 禁忌異種
5. シュヴィイート: 安息年
6. テルモート: 祭司への献納物
7. マアセロート: 十分の一の献げ物
8. マアセル・シェニー:第2の十分の一の献げ物
9. ハッラー: 献納練り粉
10. オルラー: 植樹3年間の禁忌果実
11. ビックリーム: 初物、初穂
新年の「ローシュ・ハ・シャナ」については、「ミシュナ」第二部の「モエード」(祭日)に規定があります。
参考までに「モエード」(祭日-祭りにかんする書) 12書の細目を紹介しておきましょう。
1. シャバット: 安息日
2. エルヴィーン: 安息日規定の補遺
3. ペサヒーム: 過越祭
4. シェカリーム: シェケルの献納
5. ヨーマ: 贖罪の日
6. スッカー: 仮庵祭
7. ベーツァー: 祝祭日にかんする規定
8. ローシュ・ハ・シャナー: 新年祭
9. タアニート: 断食
10. メギラー: 巻物(プリム祭における「エステル記」の扱い方
11. モエード・カタン: 祝祭日中間の規定
12. ハギガー: 祝祭日の捧げ物
「ローシュ・ハ・シャナー」にの典拠となる「聖書」の文言は、9つあがってますが、冒頭の「出エジプト記」と「レビ記」の文言を引用しておきましょう。
エジプトの国で、主はモーセとアロンに言われた。「この月をあなたたちの正月とし、年の初めの月としなさい。イスラエルの共同体全体に次のように告げなさい....」(「出エジプト記」 12・1~2)
主はモーセに仰せになった。イスラエルの人々に告げなさい。第七の月の一日は安息の日として守り、角笛を吹き鳴らして記念し、聖なる集会の日としなさい。あなたたちはいかなる仕事もさいてはならない。燃やして主にささげる捧げ物を携えなさい」(「レビ記」 23・23~25)
(出典:『ミシュナ Ⅱ モエード(ユダヤ古典叢書)』(石川耕一郎/長窪専三訳、教文館、2005)P.324~3325)
「ローシュ・ハ・シャナー」の本文は以下のようなものです。読んでもとくに面白いものではないですが、『タルムード』の「ミシュナ」とはこんなものだと知るくらいの意味はあるでしょう。
「ローシュ・ハ・シャナー」第一章
新年には4つある。ニサン[の月]の朔日(ついたち)には王のためと祭日のための新年。エルル[の月]の朔日には家畜の十分の一の捧げもののための新年。ラビ・エリアザルとラビ・シモンは言う。[それは]ティシュレ[の月]の朔日[である]。ティシュレ[の月]の朔日には、年のための、ヨベルの年のための、[樹木を]植えるための、および野菜のための新年。シェヴァト[の月]の朔日には樹木のための新年。[これは]シャンマイ派の言葉に従っている。[しかし]ヒレル派は言う。その[シェヴァトの月の]15日に。・・(以下略)・・
(出典:同上 P.329~330)
ここまでいろいろ引用しましたが、ユダヤ教徒でなければ、正直いって面白くもなんともない記述が続きます。
まあ、これが「律法」(The Law)というものの本質でしょうか。イスラームの『ハディース』も同様ですね。
その規定を守る立場にいれば主体的な読みも求められるでしょうが、ユダヤ教徒でもムスリムでも、そのどちらでもないわたしのような人間は「縁なき衆生」、やはり「縁なき知識」にすぎないのかもしれません。
<参考書籍>
『ミシュナ Ⅰ ゼライーム(ユダヤ古典叢書)』(石川耕一郎/三好 迪訳、教文館、2003)
『ミシュナ Ⅱ モエード(ユダヤ古典叢書)』(石川耕一郎/長窪専三訳、教文館、2005)
<ブログ内関連記事>
本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)
『ユダヤ教の本質』(レオ・ベック、南満州鉄道株式会社調査部特別調査班、大連、1943)-25年前に卒論を書いた際に発見した本から・・・
皇紀2670年の「紀元節」に、暦(カレンダー)について考えてみる
本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り
・・『ハディース』からラマダーンにかんする記述を抜き書き
書評 『新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒-』(菅瀬晶子、NIHUプログラムイスラーム地域研究=監修、山川出版社、2010)
・・キリスト教の暦は太陽暦であり農事暦である
「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・ 「バイオダイナミック農法」(ビオデュナミ農法)としても知られている「シュタイナー農法」についても触れている。月や太陽の運行に従った自然農法である。
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