玉川大学教育博物館で開催されている 「石に描かれた鳥たち-ジョン・グールドの鳥類図譜」にいってきました。
東京とその周辺をマヒさせた1月14日の大雪の日に天皇皇后両陛下の行幸啓、そしてそのあと1月22日には秋篠宮殿下ご夫妻もご覧になったという展覧会。しかも、ともにご説明をされたのが「ジョン・グールドの鳥類図譜」の研究をされている黒田清子さま。みなさま生物学の研究者でもいらっしゃいますね。
マスコミでも取り上げられて大好評のため、3月24日まで会期延長されたのでぜひ足を延ばしてみるといいいでしょう。わたしは、玉川学園の諮問委員をつとめているので、学芸員の方にご案内していただきました。
以下に主催者による概要を掲載しておきましょう。
●会期(前期): 2012年11月5日(月)~12月7日(金) 3月1日(金)~24日(日)に再公開
●会期(後期): 2012年12月10日(月)~2013年2月28日(会期はそのまま延長)
●休館日: 土・日・祝日
●臨時開館日:2月16日(土)、23日(土)、24日(日)、3月2日(土)、9日(土)、16日(土)、23日(土)、24日(日)
●開館時間: 9:00~17:00(入館は16:30まで)
●会場: 玉川大学教育博物館 第1展示室
*小田急線玉川学園前駅下車徒歩15分
*構内は教育活動が行われておりますので、車での来館はご遠慮ください。
*入校時に詰所で入校手続を行ってください。
教育博物館までのアクセス(←クリック)
●入場料: 無料
●主催: 玉川大学教育博物館
●協力: カンザス大学ケネス・スペンサー・リサーチ・ライブラリー
●内容 : イギリス人ジョン・グールドが19世紀に製作した鳥類図譜全40巻とその関連資料を展示します。また、グールドの資料を多く所蔵するアメリカのカンザス大学スペンサー・リサーチ・ライブラリーの全面協力を得て、図譜の製作方法のコーナーを設け、工程を複製で再現します。
その他:図譜への負担を軽減するため、定期的に展示するページを変更いたします。ご了承ください。(毎週金曜日の閉館後に、図譜のページを変更します。なお、1月11日(金)と25日(金)のページ変更は行いません。)
黒田清子さまが勤務されている山階鳥類研究所(・・秋篠宮様が総裁)には、ジョン・グールドの鳥類図譜は完全にそろっていないそうです。そのため全40巻を蒐集した玉川大学教育博物館の外来研究員として、全巻の調査研究を行われたそうです。
その研究成果は、『ジョン・グールド鳥類図譜総覧 Catalogue of the birds in John Gould's folio bird books』(紀宮清子編、玉川大学出版部、2005年)として出版されています。ですから、今回の展覧会を行幸啓された天皇皇后両陛下も、ことさらお喜びだったのではと推察されます。
ジョン・グールドと「鳥類図譜」については、「鳥人ジョン・グールドの世界」 をご覧になっていただくのがよろしいでしょう。簡単に要約しておきます。
剥製師として名をなしたジョン・グールド(1804~1881)は、博物学(natural history)全盛時代の大英帝国で、当時発明されて間がない石版画(リトグラフ)の技法をいち早く取り入れ、絵師や版画師による工房をつくり、「鳥類図譜」を1832年から予約販売を開始しました。
展覧会の会場で実物をみるとわかりますが、どんな鳥も実物大(リアルサイズ)で描かれており、版画はインペリアル・フォリオ判(約56×39cm)というサイズであり、本としてはきわめて大判です。一冊が10kg以上もあるので、持ち運びも大変なようです。
貴族など上流階級を顧客にした、発行部数は200部程度の完全予約販売。つまり贅沢品の版画として製作頒布されたわけですね。
コレクターとしての購入者は、その版画を製本師に持ちこんで好みの形で一冊の本として製本し、装丁させたわけです。ですから一冊一冊が異なるものとなったわけですね。世界中で一冊しかない自分の本として。コレクター冥利に尽きるというものでしょう。
展示されている図譜は以下のとおりです。なおジョン・グールド自身は、英国以外の鳥は実見はしていないようです。
前期(3月1日~24日に再公開)は、『ヒマラヤ山脈百鳥類図譜』、『ヨーロッパ鳥類図譜』、『オオハシ科鳥類図譜』、『キヌバネ科鳥類図譜』、『オーストラリア鳥類図譜』、『アメリカ産ウズラ類鳥類図譜』、『ハチドリ科鳥類図譜』。
後期(~2013年2月28日)は、『ハチドリ科鳥類図譜』、『アジア鳥類図譜』、『イギリス鳥類図譜』、『ニューギニア及びパプア諸島鳥類図譜』。グールドは、ことにハチドリを好んでいたそうです。
わたしが見たのは後期の図譜の一部ですが、石版画(リトグラフ)ならではの繊細な描線と、それに手書きで彩色された美しい図版は、鳥類や生物学への関心が高くなくても、ボタニカルアートとしてすばらしい美術品だといえるでしょう。19世紀当時の英国の上流貴族たちを満足させたことは間違いありません。
やはり複製やデジタル画像ではなく、アナログのリアルな画像は最高です。
「石に描かれた鳥たち-ジョン・グールドの鳥類図譜」の会期中に「新教育運動の展開と玉川学園」という展示が行われています。大正時代の新教育運動と玉川学園の教育をたどる展示構成で、教育史に関心のある人にとって意義ある展示といえるでしょう。
また、第2展示室にある常設コーナーの展示も見逃せません。とくに国内最大級のイコンのコレクション。ロシアを中心にギリシアのものも集めた木の板に描かれた美しいイコンは、所蔵されている71点のうち41点が公開されているので必見です。
わたしもロシア以外では、これだけまとまったコレクションは見たことがありません。イコンとは、本来は正教徒の信仰の対象であった聖画ですが、もちろん美術品としての価値の高いものであることは言うまでもないでしょう。
*なお、2013年2月4日(月)~17日(日)までは博物館実習の授業のため第2展示室の見学はできないということです。
(玉川大学教育博物館)
<関連サイト>
「鳥人ジョン・グールドの世界」(玉川大学教育博物館)
・・ジョン・グールド鳥類図譜の全ての図版(2946図)をデジタル化し、教育博物館のホームページ上で公開
山階鳥類研究所(千葉県我孫子)
天皇皇后両陛下、黒田清子さんらの案内で玉川大学の展示をご覧に
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