2013年4月2日火曜日

書評『学問の春 ー <知と遊び>の10講義』(山口昌男、平凡社新書、2009)ー 最後の著作は若い学生たちに直接語りかけた名講義


学びは遊びであり、遊びもまた学び。 自分で関心をもったことを、深く掘り下げるだけでなく、どんどん拡げていくのが学びの楽しみ。それは雑学の楽しみでもある。

出版されて4年、読まないまま放置しているうちに著者の山口昌男が亡くなってしまった。つい先日、40年以上前に書かれた『道化の民俗学』を再読したことをきっかけに、最後の著作を読んでみた。

なんとわかりやすい内容であることか。こんな講義を若いとき受けたかった、そんな気持ちにさせてくれる名講義である。1997年から翌年にかけて学長をつとめる札幌大学で行われた講義録である。 

テキストとしてつかわれたのはホイジンガの名著である『ホモ・ルーデンス』。直訳すれば「遊ぶ人」(Homo ludens)というラテン語がタイトルのこの本は、まさに山口昌男が取り上げるのにふさわしい本。


1920年代から1930年代にかけて全盛期を迎えたオランダのライデン学派という知的サークルのなかから生まれてきたのが『ホモ・ルーデンス』という比較文化論の傑作。山口昌男がフィールドワークの地として選んだインドネシアの島々は、かつてオランダの植民地であり、戦時中は日本に占領されていたことも語られる。

その意味では、中心であるジャワではない、辺境のインドネシアについて知ることもできる内容である。ブル島、アンボン島、フローレス島・・・。さきに独立した東チモール以外はほとんどだれも知ることない島ばかりだ。

民族学の色彩もつよいフランス社会学の影響を受けたライデン学派。二項対立、トーテム、ポトラッチやクラ交易など、人類学において重要なタームが、『ホモ・ルーデンス』の一節を取り上げて、豊富な脱線も含めて詳細に語られる。

そうその脱線部分こそ面白いのだ。第4講は「雑学とイリュージョン」と題されているが、「雑学」をこれほどポジティブに評価した学者もそう多くはないのではないだろうか。購入してすぐに読んでおけば、拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)に引用できたのに・・・。あとの祭りであるが。

学びは遊びであり、遊びもまた学び。これを一生 実践しつづけたのが山口昌男という人だった。

新たに学問の扉を叩く若者たちだけでなく、学問いや学びのすばらしさとは何であるのか具体的に語りかけてくれる名講義。

ぜひかつて若者であった人も読むことをすすめたい本。山口昌男入門として、格好の一冊になっている。




目 次

第1講  「ホモ・ルーデンス」に出会う旅
第2講  まなびあそび
第3講  比較文化の芽―交換とコミュニケーション
第4講  雑学とイリュージョン―ホイジンガの学問的青年期
第5講  トーテムから原始的二元論へ
第6講  季節の祭―二つに分かれて競う
第7講  文化は危機に直面する技術
第8講  ポトラッチ1-二つに分かれて、繋がる世界
第9講  ポトラッチ2-破壊と名誉
第10講  クラ-神話的航海
読書案内を兼ねた参考文献一覧
編集後記

著者プロフィール

山口昌男(やまぐち・まさお)
1931年北海道生まれ。2013年没。文化人類学者。元札幌大学学長、東京外国語大学名誉教授。道化・トリックスターの分析や「中心と周縁」理論などを通じて、学問のみならず、文学や演劇、美術などさまざまな領域に刺激を与え続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)。



PS あらたに『ホモ・ルーデンス』(中公文庫)のカバー画像を加えた。オランダにとってのインドネシアについて知るためにも、かならず手にとってほしい本だ。 (2014年5月22日 記す)



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・・起業家の藤田田(ふじた・でん)は「雑学」の効用を声を大にして説いた人でもあった

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(2014年2月21日、5月22日 情報追加)


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