冒頭に掲載したのはアメリカを代表する週刊誌 TIME(タイム) の今週号の表紙です。The Moment That Changed America とあります。「アメリカを変えた瞬間」、いや「世界を変えた瞬間」から、そうか、もう50年もたったのか・・・。
1963年11月22日、JFKことケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺されたのでした。スナイパーによる狙撃の瞬間、飛び散った脳漿をかき集めようとする動揺したジャクリーンの映像はいまみても衝撃的すぎます。このシーンは日本でも衛星中継をつうじて日本でも視聴した人が少なくなかったようです。
すでに生まれていたとはいえ、もちろんわたしの記憶にはありません。ですが、ケネディを尊敬していた父親からは、ケネディの話はよく聞かされたものです。たとえば、ケネディ家では食卓でいつも食事をしながら議論をしていたとか、ボウル一杯のサラダを食べていたそうだ、とか。
先日(11月15日)に着任した愛娘のキャロライン・ケネディ駐日大使は、この日本で「その日」を迎えることになるわけです。アメリカ国内はもとより、世界的にも注目度の高い「ケネディ神話」がまさにここ日本でも復活するのを感じるのはわたしだけではないでしょう。
なにより証拠に、アメリカ大統領からの信任状をたずさえて皇居に馬車で向かったキャロライン大使をみるために数千人が集まったというのですからすごいものです。
1960年の安保闘争前後、若き日にケネディに代表される理想主義にひかれた人が日本にも多かったであろうことは容易に想像できます。敗戦国のナショナリズムの発揚と理想主義が、当時は両立していたわけです。
JFK暗殺関連の情報は2039年に解禁されるようですが、「その日」をわたしは迎えることができるのかどうか? ぜひ「真相」を知りたいと思います。
■歴史的ディベイトとされるケネディ対ニクソンのTV選挙戦
ジョン・F・ケネディの就任演説もまた名言をのこしています。Ask not what your country do for you, ask what you can do for your country. (国があなたにしれくれることではなく、自分が国のために何ができるか尋ねてほしい)。これは1961年のものです。
この演説も音声できくと理想主義にあふれ格調高く、英語学習教材としても定番のものですが、大統領選挙戦におけるケネディ対ニクソンのTVディベートもまた、これ以上のものはないと言われるほど有名なものです(写真を参照)。これは1960年に行われたものです。
わたしはこの4回にわたっておこなわれたTVディベートで英語を勉強しました。通勤電車のなかでほとんど内容も覚えてしまうくらい何度も何度も繰り返し繰り返しウォークマンでテープを聞きこみました。大学を卒業して社会人になった1980年代後半のことです。テープから iPod などに媒体が変化しようとも、いまでも英語の勉強法はこれに尽きると考えています。
もちろん、その後のウォーターゲート事件で大統領を辞任することになったニクソンのことを知っているのでバイアスがかかっているのかもしれませんが・・・。
"I have a dream."(わたしには夢がある) のキング牧師とケネディは同時代のアメリカ人で、理想肌であったことも共通しています。もちろんケネディについては国家の最高のポジションに就いていた大統領でしたから、実際は汚い側面にも関与していたようですが、それはここでは問いません。
この二人がともに凶弾に倒れたことは、まさに「アメリカの悲劇」としかいいようがありません。
■愛娘のキャロラインもまたリベラル派
リベラルがネガティブに語られることが多い現在の日本ですが、そもそもアメリカという人工国家は、旧世界から自らを解放した人々がつくった国だということは忘れないほうがいいでしょう。
リベラルのもともとの意味は左派ではなく、自由派ということです。JFK自身もリベラルではありましたが同時に現実主義者でもありました。ベトナム戦争に本格介入したのは大きな問題ではありましたが。
もちろん1958年生まれの愛娘キャロラインも JFK の衣鉢を継ぐ存在でしょう。その点がオバマ大統領と価値観を同じくするところなのでしょう。オバマ大統領自身、チェンジ(変化)を訴えて大統領に選出された人です。
政治家経験も外交経験もないことを問題視する評論家も少なくありませんが、コロンビア大学のロースクール卒業で弁護士としてのキャリアをもつ人ですし、その点は心配する必要はあまりないと思います。
弁護士は短時間で膨大な資料を読み込み、訴訟戦略を策定して実行するのがその職業の根幹にあるからです。キャロラインもその能力をフルに発揮することでしょう。実務に精通した優秀な「ナンバー2」やスタッフたちに恵まれれば、予想を超えた働きをする可能性だって否定できません。すでに公式ツイッターでは日本語版まで発信されています。
意外とタフニゴーシエーターかもしれませんよ。たんなるお飾りの "プリンセス" だと思ったら大間違いではないでしょうか。
「ケネディ次期駐日米国大使から日本の皆さんへ」 というビデオメッセージが着任前に公開されています。着任前にビデオメッセージを作成し公表するのは初めてだそうです。わかりやすい英語で(*日本語字幕つき)、好感度の高いビデオメッセージです。
なお、画面中央ではなく画面の右寄りで、しかもすこし斜めにすわっているのは、威圧感を与えないとの配慮だそうです。
着任前から話題になっていたキャロライン駐日大使。「ケネディ神話」は現在でもやはり生きていたわけですね。ここのところあまりしっくりとはいっていない日米関係ですが、キャロラインを駐日大使に選んだ作戦は、まずは初戦でオバマの勝ちといったところでしょうか。
キャロライン自身、日本には多大の関心をもっているということですが、JFK自身も太平洋戦争では帝国海軍の駆逐艦と衝突して大破した米海軍魚雷艇の艦長として危機を乗り切ったリーダーシップを発揮した人です。ブッシュの父もまた海軍パイロットとして日本軍に撃墜された人であったことを思い出させます。そもそもケネディ家はボストン出身ですから、日本との縁はきわめて深いファミリーなわけです。
日米関係がよりよい方向に発展することは、日米双方にとって重要なことですね。おおいに期待したいと思います。「ケネディ神話」復活によって、わたしもアメリカへの関心がふたたびよみがえってきたのを感じています。
SHOCKING: Video unreleased JFK assassination
・・ビデオがはじまってから6分前後で狙撃の瞬間がカラー映像で見れます。ショッキングな映像です。
The 1st Kennedy/Nixon Presidential Debate - Part 1/4 (1960)
・・ケネディ対ニクソンのTVディベート映像
ケネディ次期駐日米国大使から日本の皆さんへ
・・ビデオ・メッセージ(YouTube)
キャロライン・ケネディ駐日米国大使 キャロライン・ケネディ駐日米国大使
認証済み twitter アカウント @CarolineKennedy
対中国外交でも生かすべき米「リベラル・ホーク」人脈執筆者(「フォーサイト」、青柳尚志 2013年11月28日)
・・キャロライン・ケネディもまた「リベラル・ホーク」(リベラル・タカ派)であることが書かれている
PS ブログ記事執筆から3ヶ月後に記す(2014年2月19日)
なぜオバマ政権の大使は「無知」なのか-米国の外交に暗雲をもたらす選挙功労人事 (古森義久、JBPress、2014年2月19日)
・・「2009年から現在までの、オバマ政権における大使の政治任用は全体の53%という高い水準を記録した。ブッシュ政権では30%、クリントン政権では29%、先代ブッシュ政権では30%、レーガン政権は38%である。これらの数字で明らかなように、オバマ政権がキャリア外交官を大使に選ばず、外部からの政治任用者を登用する比率は異様に高い」
このブログ記事を書いてから3カ月、最初の三カ月は蜜月(ハネムーン)として見守るものだが、さすがにキャロライン・ケネディ大使の資質に疑問符がつくようになってきいた。 和歌山県太地町のイルカ漁反対、その他もろもろ。上記の古森義久氏執筆の記事を読むと、オバマ政権の突出した異常(?)ぶりが明らかになる。古森氏は「大使人事が“カネ”の額で左右されている」と書いている。恩賞人事の最たるものである。 (2014年2月19日 記す)。
(追加)
「JFK-その生涯と遺産」展(国立公文書館)に行ってきた(2015年3月25日)-すでに「歴史」となった「熱い時代」を機密解除された公文書などでたどる
(2015年3月26日 情報追加)
<ブログ内関連記事>
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・・映画には直接でてこないが、イスラエルでアイヒマン裁判が行われたときアメリカではまさにケネディ大統領時代であった
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「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」(東京国立博物館 平成館)にいってきた
Two in One, Three in One ・・・ All in One ! -英語本は耳で聴くのが一石二鳥の勉強法
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書評 『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)-アメリカの本質を知りたいという人には、私はこの一冊をイチオシとして推薦したい
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