2014年5月6日火曜日

「雛罌粟(コクリコ)の花の咲く季節」に世を去った渡辺淳一氏のご冥福を祈ります(2014年5月)


作家の渡辺淳一氏がお亡くなりになっていたそうですね。昨日(2014年5月5日)のTVニュースで知りました。お亡くなりになったのは4月30日。享年80歳。前立腺ガンで闘病中だったとのこと。

ほとんど小説を読まないわたくしも、さすがに渡辺淳一氏の作品は読んでおります。というのも、ビジネスマンにとっての必読紙であった「日経新聞」に、ほぼ10年おきに、なんと3回も渡辺淳一氏の作品が連載小説として掲載されていたことがあったからです。

代表作の『失楽園』(連載は1995~1996年)については、TVニュースで何度も言及されていますが、わたしとしては『化身』(連載は1984~1985年)もあげておきたい。というのも、ちょうど就職活動中のことでありましたので。

ともに映画版は宝塚出身の黒木瞳が主演で、ご多分にもれず、このわたくしも黒木瞳ファンでありました(・・いまはそれほどでもないですが)。

日経連載の最後は『愛の流刑地』でした。連載は2004年から2006年。もちろんこの小説も連載中に読んでいます。ビジネスマンですからね。当時は日経も購読してましたし。

わたしが買って読んだほぼ唯一の渡辺淳一の作品が『君も雛罌粟(コクリコ) われも雛罌粟(コクリコ)』(文春文庫、1999年)。副題にあるように、与謝野鉄幹・晶子夫妻の生涯を描いた作品。これはいい作品です。文庫化されてすぐに読みました。

タイトルは、鉄幹を追ってパリに渡った晶子が現地で詠んだ歌から。

ああ皐月(さつき)
仏蘭西(ふらんす)の野は
火の色す
君も雛罌粟(コクリコ)
われも雛罌粟(コクリコ)

雛罌粟(コクリコ)とはヒナゲシのこと。ちょうどいまがその季節ですね!


この作品がすばらしいのは、あまりにも有名な与謝野晶子もさることながら、歌人としての与謝野鉄幹をしっかりと描いた作品であること。与謝野鉄幹といえば、「人を恋ふる歌」が有名。男性的な作風の歌人です。

二人の和歌を中心に据えた作品であること。これは文春文庫版の解説を書いている歌人・俵万智氏の指摘のとおりですね(・・ちなみにわたしは俵万智氏とは同年生まれです)。

基本的に「男女の愛」がテーマではありますが、こんな作品もあるということを紹介することが、故人の供養になるのではないかな、と。

雛罌粟(コクリコ)の花の咲く時期に世を去った渡辺淳一氏。故人の追悼は「雛罌粟忌」となるかもしれませんね。太宰治の「桜桃忌」のように。

ご冥福を祈ります。合掌。





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・・夫の鉄幹をフランス遊学させた晶子は、後を追ってフランスに渡る。そのとき利用したのがシベリア鉄道であった

芥子坊主(けし・ぼうず)-ヒナゲシは合法です(笑)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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