"Stay hungry, Stay foolish"(ハングリーであり続けろ、バカであり続けろ)というと、スティーブ・ジョブズのコトバだと思い込んでいる人が多いようだが、じつはそうではない。
ジョブズ自身がカリフォルニアの名門私立大学スタンフォードのの卒業式のゲストとして招かれておこなったスピーチのなかで述べているように、このフレーズはもともとは、"Whole Earth Caltalog" の創始者スチュアート・ブランドによるものだ。スピーチの最後の1分間はこの話にあてられている。
Whole Earth Caltalog (ホールアース・カタログ)の存在は、スティーブ・ジョブズの死によって、はじめて耳にした人がいるかもしれない。「全球カタログ」とでも訳すべきだろうか。1960年代から70年代にかけての伝説のライフスタイル・カタログのことだが、いかにもニューエージ的な、カリフォルニア的な内容である。
写真からはわからないだろうが、このミレニアム版(1994年発行)は、大判で383ページと分厚く、手で持つとじつに重量感がある。アメリカ滞在中にこのカタログの存在を知って1990年版を入手していたが、ミレニアム版は帰国後に注文して取り寄せたものだ。じっさいに手にしてページをめくった人は、そう多くはないのではないか。
(Millenium Whole Earth Catalog 1994)
どんな内容については、1990年版の副題をみるとなんとなく想像がつくのではないだろうか。
The Best of Environmental Tools & Ideas とある。エコ(=環境)を意識したライフスタイルなのである。そのライフスタイルを実践するためのツール(=道具)とアイデアがカタログとして紹介されている。さまざまなガジェットや書籍などである。
(Whole Earth Ecolog 1990)
大陸国アメリカは通信販売の発祥の地で、同時代には流通業者シアーズのカタログという、電話帳のような商品カタログがあった。形態としては似たようなものがある。ライフスタイルのカタログは IKEA のものをはじめとして、いまでは珍しくもなんともないが、商品カタログという形でライフスタイルを「見える化」する発想はアメリカならではだろう。
Front Matter (はじめに)
Whole Systems (全体システム)
Biodiversity (生物多様性)
Sustainability (サステイナビリティ:持続性)
Community (コミュニティ)
Household (世帯)
Health (健康)
Sex (性)
Family (家族)
Taming Technology (テクノロジーを飼い馴らす)
Communications (通信)
Political Tools (政治のツール)
Livelihood (生計)
Nomadics (ノマド)
Learning (ラーニング:学び)
それぞれの項目がさらに細分化され、小さな活字と図版で情報がぎっしりと詰まっている。そんなカタログである。
「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」もまたジョブズの有名なフレーズだが、このカタログもまた創始者のスチュアート・ブランド自身がそうであったように、「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」そのものといえるかもしれない。Taming Technology (テクノロジーを飼い馴らす)という発想にみられるように、反テクノロジーではなく、親テクノロジーあることがそれを示している。
わたし的には、AIKIDO が取り上げられていることが興味深い。アメリカの大学で学生に AIKIDO を指導したこともあるからだ。BUDO は ZEN などと同じく、ニューエージ的なスピリチュアリティとあわさってアメリカでは受容されていったのである。
(「学び」の「武道」の項目にある合気道)
カタログといいうものは、そもそも情報の集積であるから、現在ではカタログはすっかりウェブ上に移行してしまったのが当然といえばあ当然だ。検索性のことを考えたら、それはウェルカムでもある。
だが、"Whole Earth Catalog" はカタログというミクロコスモス(=小宇宙)ともいうべき存在で、「部分」という情報を検索するよりも、「全体」をそのものとして受け取るべき存在である。
その意味でも、機会があれば実物を手に取って,、ズッシリとした重量を感じながら、中身を眺めてほしいと思う次第だ。
スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版 (YouTube)
・・12分56秒から "Whole Earth Catalog" の話になる
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合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋
・・合気道開祖の植芝盛平翁は、大本教の出口王仁三郎のもとでスピリチュアル修行を積んだ人である
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