国立科学博物館で開催中の「ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」にいってきた(2015年12月2日)。日本でもワインが日常化したいま、ワインの全体像を知るためには格好の企画展といえるだろう。
会場構成は三部構成である。「Zone 01 ワイナリーに行ってみよう」、「Zone 02 ワインをもっと楽しむ」、「Zone 03 ワインの歴史」である。
まずは、原料としてのブドウとその栽培から始まる。博物館の内部でワイナリーを体験してみるコーナーでは、ワインづくりの各プロセスを知る。ブドウを破砕するブドウ踏みの体験コーナー(・・ただしゴム製のブドウ)、ブドウ果汁を発酵させるための酵母についてなど、ワイン醸造にかかわる自然科学的なアプローチが興味深い。
(ブドウ踏みの体験コーナーにて 足は筆者)
ワインの歴史コーナーでは、コーカサス地方で誕生したワインが、西は地中海世界を中心に拡がり、東へはシルクロードをつうじて拡がったことが示される。
古代ギリシアの壷絵やオリエントの酒盃、シルクロードを経由しての東洋への普及などに関する展示は興味深いが、ワインを飲んでいるシーンが描かれている絵画作品の展示などがあってもよかったのではないかな、と思う。美術館とのコラボである。
ワインを楽しむコーナーでは、ワインの香りを構成するさまざまな香りを成分ごとに嗅ぐことのできるコーナーなど五感をつうじた体験ができるようになっている。
(ポスター裏面の会場案内図)
ただ、じっさいにワイナリーを訪問し、醸造プロセスを見学した経験のある人にとっては物足りないのではないかな、と思う。五感をつうじた体験を目指しているのだが、子どもも入場可能な博物館である以上、アルコール臭があってはまずいだろうし、ワイナリー内にあわせた室内気温設定も難しいだろうから。
さらにいえば、「パンとぶどう酒」を重視するキリスト教についてのくわしい解説がほしかったところだ。キリスト教とワイン、とくに赤ワインは、切っても切り離せない関係にあるからだ。
企画展としてなかなか工夫されていると思うが、こういう展示は企業博物館の常設展示のほうがふさわしいのではないかな、という気もする。
とはいえ、会場で販売している「ワイン展公式ガイドブック」は、展示内容を縦長のおしゃれな装丁のガイドブックにまとめたものでよくできている。このガイドブック(1500円)は、「ワインの博物誌」として購入しておくとよいと思う。
■わたしとワイン(つけたし)
生まれていちばん最初に飲んだのは、「ワイン展」にポスターが展示されていたが、かつての日本人の多くがそうであったように、子どもの頃クリスマスの日に家族で飲んだ「赤玉ポートワイン」である。
それからしばらくは飲んでいなかったが、社会人になってから、1980年代後半から本格的に飲むようになった。
社会人になってから入った会社で販売実習があったとき、百貨店の地下食品売り場(・・いまっではデパ地下という)のワイン売り場に配属となったわたしは、1週間の研修が終わる際にベテラン販売員さんにワイン入門として1ダース分のワインをセレクトしてもらった。それからわたしのワイン人生が始まる。
その後は、世界各地で生活のなかに溶け込んでいるワインを味わってきたし、ワイナリーもいくつか見学し、試飲も楽しんできた。日本の甲府や小諸だけでなく、カリフォルニアのナパバレー、オーストラリアはシドニー郊外など。とくに、欧州のスロヴェニアでは日本の輸入業者の方と一緒にワイナリーめぐりをしている。
ワインといえば赤と決めている。もともと赤ワインばかり飲んできたのだが、あるとき健康診断結果の説明をする医者から、「善玉コレステロール不足なので、赤ワインを飲んだらよい」と薦められた。ワインは飲み物であり、クスリでもあるわけだ。まさに、「酒は百薬の長」でありますね。
プリン体を気にしなくてはならないビールよりも、ポリフェノールが豊富な赤ワインのほうがよいのだ。「ワイン展」でも「フレンチ・パラドックス」の説明がボードで掲載されていたが、濃厚な食事を好むフランス人に健康な人が多いのは赤ワインのおかげだというのは、実証されていないとはいえ説得力がある。
最近では、コストパフォーマンスを考えれば、ビールよりも南米のチリ産を中心とした、いわゆる「新世界ワイン」のほうがよい。円安であるのにもかかわらず、つまり安くてうまいワインが日本でもおおいに普及している。家飲みワインは格好つける必要はないので、「ハウスワイン」とすればよい。
もちろん、ワイン以外の酒も飲みますよ。かつてに比べたら、飲む量は減っているとはいえ。
<関連サイト>
ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」(国立科学博物館)開催概要
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・・ラテン語の vino は酒のこと。もちろんワインをさしている
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