2015年12月2日水曜日

「春画展」(永青文庫)にいってきた(2015年12月2日)-公共スペースでの展示に風穴をあけた意義は大きいのだが・・・

(「春画展」ポスター この思わせぶりな表現方法はさすが!)

東京・目白で開催中の「春画展」にいってきた(2015年12月2日)。浮世絵春画の一大展示会である。18歳以下入場禁止の「R18」指定となっている。会期は、9月19日から12月23日まで。

平日の午前中にいってみたが、思ったとおり来場者が多かった。話題先行のためもあろう、来場者は時間的に余裕があると思われる中高年男女が多かった。

大英博物館で日英交流400年を記念して2013年に開催された SHUNGA の里帰り巡回展である。大英博物館ででは4ヶ月の会期中に来場者が9万人あったという。このニュースは日本でもリアルタイムで報じられていた。

だが、日本での開催には紆余曲折があり、実現までなんと3年もかかったという、いわくつきの美術展だ。最終的に開催を受け入れたのが、今回の会場となった「永青文庫」である。細川家に伝来する歴史資料や美術品を所蔵している。

日本の美術館は軒並み会場提供を断ったという。ワイセツ図画として警察に摘発されるのを恐れたのか、世間からの批判を恐れたのか、その臆病ぶりがじつに情けない。その意味でも「永青文庫」の英断が光っているわけだが、さすがに芸術眼に富んだ元首相で細川家当主の細川護煕(ほそかわ・もりひろ)氏が責任者であることの意味合いは大きいだろう。その心意気やよし、といったところである。

(「春画展」の売店=ミュージアムショップ 筆者撮影)

「春画展」の感想を一言でいってしまえば、正直いって人が多すぎるのでウンザリという点につきる。浮世絵はサイズが小さいので、美術展での鑑賞には適していない。テーマがテーマであるが、よっぽどそばに寄って見ないとディテールがわからない。人が多いとじっくり見ることができないのだ。会場には拡大図の展示はなく、その点での配慮がなかった。

国内の美術館でも、むかしから「春画」が展示されている。いまから30年以上前のことだが、わたしは、とある西日本の地方美術館で展示品の一角として見たことがある。展示品は、局部と結合部が紙で隠されていたが、隠し方が下手で浮いているのでディテールまで全部見ることができた。来館者はわたし一人しかいない状態だったので思う存分鑑賞できたわけである。

たしかに、「春画」だけを展示した企画展というのは日本では初めての試みだろう。その意味では画期的なものである。

とはいえ、「春画」はそもそも「枕絵」だし、「あぶな絵」なのだから、たとえ性に対しておおらかだった江戸時代とはいえ、あくまでもプライベートユースを目的として製作・販売されていたものだ。「秘画」という表現もある。だから、美術館で見るのは、なんだかなあという気がしなくもない。かの宮沢賢治が密かに「春画」をコレクションして楽しんでいたことが遺品からわかった、というのは有名なエピソードである。

可能であれば古美術商などでホンモノを見るのがよいのだろうが、なかなかそうもいかないであろうから、「春画」をテーマとした出版物などで見るのがいいのではないか。「春画」はすでに出版物でも全面的に解禁されているのである。黒塗り箇所など存在しない。インターネット上にも画像はいくらでも「流出」している。「春画」なり、「shunga」で検索してみたらいい。

ホンモノを公共スペースで展示した今回の「春画展」は、風穴をあけたという点においては意義あるものであったと評価するべきといえるだろう。世の中に存在する見えない「空気」の流れを変えるキッカケとなったという点において。

だが、それ以上の意味があったかといえば、微妙なところである。これが正直な感想だ。







<関連サイト>

春画展特別サイト(永青文庫)

銀座「春画」展(銀座・永井画廊)
・・会期は、2015年9月20日~12月23日。こちらのほうが内容的にみて、よさそうだ。会場のアクセスもあるのだろうが、若い女性の来場者が圧倒的だという報道記事がある。




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